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ここはどこ?家はどっち?
しおりを挟む「んっ……んん。ふあぁ……また寝すぎてしまった。何でこうよく眠れるんだろう。僕の身体がおかしいのか?……いや、僕を眠らせる木陰が悪いんだ!そうに違いない。」
お前が100%悪いに決まっている。木陰はそこにただあるだけだ。お前が好き好んで、そこで寝始めただけだろう。
「さてとッ!ちょっと散歩でもして、飼育小屋へと帰るかな。」
馬鹿が戯言を口にしながら、『よっこいしょ』と腰を上げて辺りを見回すとーーー
「……ん?おかしいな。僕の知っている街並みじゃない。こんなところ見覚えないぞ?」
おかしいのはお前の頭である。見ず知らずの土地で、悠々と昼寝を決め込めるその図太い神経を、もっと他の分野で活かしたらどうだ。
と、言いつつも与太が居るところは、いつもと様子が違っていた。
与太の後ろには、人1人が手を目一杯広げても抱え込めないほど太い幹をした巨木があり、その周囲を青々とした草木が鬱蒼と生い茂っていた。
いつもなら、1人で抱え込めるほどの細さをした木が一本だけ生えているはずの丘に居るはずである。
与太自身、自分がどこに居るのか分からなかった。
なにせ、ここで寝る前は普段通りこの丘に登ったはずなのだから……。
「なんだか、後ろの木も寝る前に見た時より大きくなってるようだし……。もしかして、何十年も寝ちゃってた!?ど、どどどどうしよう……僕の家、ちゃんと残ってるかな?」
お前が狼狽えるなど初めて見たわ。
ボケーッと口をぽっかり開けて、日中外を歩いているお前が狼狽えるなんて。
世の中、何が起こるか分からないものだ。
……ついでに与太、お前は変な勘違いをしてるようなので、1つだけ言っておく。
あの家は、お前の家ではない。お前が、ご両親に住まわせて頂いているだけだ。
一切働こうとしない馬鹿を無償で住まわせているんだ。舐めた事を言ってると、そのうち罰が当たるぞ。
「と、とととりあえず、家へ向かおう。家にさえ着ければこっちの勝ちだ!………さて、どうやって帰ろうかな。」
何が勝ちで何が負けなのか、全くもって基準が分からない。
ーーーそれにしても、やはりコイツは馬鹿だ。見知らぬ土地からどうやって帰るつもりなんだ。
来た道さえ不明確になる奴が、知らぬ土地から真っ直ぐ帰れるはずがないだろう。
分かっていることは、こういう馬鹿はどこか自信に満ち溢れている節がある。
自分の感が100%正しいと思い込む節だ。
例え、その感がハズレたとしても自分の過ちは認めない。何か他のものに罪をなすりつけるのだ。
ほら見ろ、馬鹿が何も考えず、感だけで進み始めようとしている。
「う~ん……。闇雲に歩くと迷子になる可能性があるから、この棒切れが倒れた方向に歩いて行こう!そしたら家に着くはず!!!」
根拠っ!そうなる根拠を教えてくれ!!
なんだ、そのスーパー神頼みな所業は!青い狸のアニメーションに登場する、何とかステッキみたいなことをただの棒切れでやって。
そんなんで家へ帰れるのなら、この世から迷子なんてものは消えてるわ!
お、おぉ!?…………まさか、本気でその棒切れが倒れた方向に歩みを進めるのか?
ーーーやはり馬鹿は馬鹿だった。
馬鹿=馬鹿……じゃなかった。与太=馬鹿だ。与太と書いてバカと読む。
与太っていうのは馬鹿。はっきりわかんだね。
棒切れが倒れた方向に歩き始めた馬k……与太は、鬱蒼と生い茂る木々の中を何も考えず、ただの棒切れが指し示した方向だけを信じて突き進んでいく。
ーーー木々や草花の隙間を歩いていく訳ではない。
そこに何があろうと、ただ前に進んでいくのだ。草花は踏み潰し、木々は押し倒しながら。道がなければ作ればいい。
馬鹿は馬鹿でも、とんでもない馬鹿。それが与太と呼ばれる男の生き様である。
そんな、もの凄い馬鹿の与太は現在どうしようもない問題にぶち当たっていたーーー
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