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谷って深いね!

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「ハァ……ハァ……いや~随分と歩いたな。まだ家に着かないのか。普通なら家に着いても良い頃なのに……」



………………バカか?

あんな棒切れが倒れた先に家があるなんて、誰が決めたんだ。勝手に思い込んで、勝手に突き進んできたんだろ。


「…………おっ!開けたところに出たぞ!!家の近くか!?」



お前の家の周囲はどんな風景なんだよ!

『開けた場所=家の近く』ってどうゆう思考回路だ?

前を見ろ、前を!ただただ深い谷じゃないか!そこから一歩でも前に進んでみろ。谷底まで真っ逆さまだぞ。


「なんだ。家の近くじゃないのか……。それにしても、うわぁ~……深い谷だなぁ。これ、降りられるかな?」



お前の頭は、どういう思考をしているんだ?

深い谷を覗き込んで『降りられるかな?』って、どこのサバイバー!?サバイバーでも真っ先に降りようとは考えないだろ

こういう場合はな、谷沿いに歩いていくんだよ。そうすれば、迷わないで進めるだろ?

……そういや、お前さん、すでに迷子だったな。


あまりにも自信のある歩みだったせいで、迷子になってること忘れてたわ。


「よし、いっちょ降りてみるか!足場になりそうな岩場もあるし、滑らなければ大丈夫でしょ。」



ちょっと待てぇええええ!!!!!!

なぜそうなる!?さっき、自分で言ってたじゃん!って!!

諦めない!?普通、目の当たりにしたら諦めない!?



コイツ、馬鹿を通り越して気でも触れたんじゃないか?

頭のネジを2、3本無くしてるじゃ済まないね。むしろ2、3本しか残ってないよね!?


……頼む。誰か、この馬鹿を止めてくれ。


よく、こんなに物を考えずに行動できるよな。頭の中にある脳みそは、いったい何に使ってるの?



「おぉっ!行ける行ける!このままの調子で降りれば問題ないな。早く家へ帰りたいな~」



問題しかないわ。

お前のとってる行動の全てが問題だわ。

谷を降っている最中なのに、余裕がありそうな発言までするのか。ある意味尊敬できるわ。


「っ!うわぁああああああ!!!!!だ、誰か……助けてくれぇええええ!!!!!」



ほら見ろ。言わんこっちゃない。

慢心するからそうなるんだ。調子に乗って危ないことするから……。


与太、お前の運命はそれまでだったって事だよ。恨むなら自分自身を恨みな。

日頃の行いってのはな、確実に未来へ影響を与えるんだ。


善行を行えば報われるし、悪行を行えば破滅を迎える。


要は、因果応報ってやつだな。

谷底へ落ちたのも自業自得だ。馬鹿っ!!

もし、生まれ変わることが出来たなら、今度こそは真っ当に生きろよ。

…………南無三。




「イテテッ!!……あぁ~ちくしょう!あと少しだったのに!なんで滑るんだよ、あの石ころ!!!ふざけんじゃねーや。べらぼうめ!」




……………う、嘘だろ……野郎、生きてるやがる。



あん畜生、生きてやがった!なんてしぶとい奴なんだ。

あの高さから落ちて生きてるって、どういう生命力だよ。ついに人間、辞めちゃった?


ま、生きていても骨折とかしてるはずだ。こんな人気のないところで大怪我なんて、ただ死を待つのみだな。

一発で逝っていれば苦しまずに済んだものを。ざまぁみやがれってんだ!



「あぁ~……しかし、驚いたなぁ。足を滑らせて真っ逆さまに落ちた瞬間、『死んだ』って思ったもん。でも、ボク生きてる。手足も動くし、五体満足で生きてる!」



おいおいおい!五体満足か畜生め!!

……待てよ。あやつ、五体満足じゃないぞ。

与太の奴、手足は動かせても頭は回ってないからな!なにせ馬鹿の代名詞、与太なのだから。

転落の影響で、頭のネジが無くなってたら面白いんだが……。


「それにしても、谷底にクッションが敷いてあって良かったよ。コイツがなきゃ、今頃天国に行ってたな。」



そんな都合よくクッションが敷かれてる谷って、どうよ。

ていうか与太、お前の言うクッションってのは、そのゴツゴツして黒光りしている羽の生えたトカゲのことか?

見た感じ、硬そうだが…………。それに、そいつの目が怒っているように見受けられるが、どうなんだ?



「ふぅ~、それにしてもコイツはやけにゴツゴツしてるな?軽く押せばちょっと沈むし……なんなんだ、これ?」


『…………人の子よ。いつまで我の上に居座るつもりだ?』


「えっ!?ちょ、誰が喋ってるの!?なんか凄く低い声が聞こえるんだけど……。」


『其方が腰掛けているのは、我の身体である!今すぐそこから退け!さもなくば消し去るぞ。』


「ん?ボクの座っているのが身体?どうゆうこと?」


『ーーーこう言うことだ!!!!』



どこからともなく現れた頭が、与太の襟元を口でくわえ、勢いよく谷壁へ投げつけた。



「うわっ!?ボ、ボク、飛んでる?やったー!空を飛んでr…………グハッ」



羽の生えたトカゲに投げ捨てられた与太は、勢いよく谷壁へと身体を打ち付けられた。

よくバトル漫画で見るように、身体を中心にクレーターが出来ていた。


さすがの与太も、ダイレクトにダメージを受けたわけだから死んでいるはずーーー



「イッタイなぁ~!もう!!!何も投げることないじゃないか!どういう教育を受けたんだ?」



なぜ、お前は生きとるんじゃああああ!!!!

ドーンッてなったよね!?谷壁にドーンッって!クレーターも出来てるじゃん。なぜ、生きてるの?


この馬鹿、生命力強すぎない?ゴキブリよりしぶとくない?


てか、お前さん少し待て。どのていで教育がどうのって言えるの?

与太さーん、ブーメランですよ~


しっかり働くなりして、人の役に立つようになってから、ものは言いましょうね~


ったく、これだからゴキブr……馬k……ゲフンゲフン。与太は成長しないんだよ。

いっぺん死んで、やり直して欲しいわ。


『馬鹿に付ける薬はない』って言うだろ?

あれ、マジだから。あれこそ、この世の真理だから。数少ない真理の1つです。覚えておいてください。



さて、次週のドラゴンボ○ルはーーー

……あっ、間違った。


次回、《 与太、死亡確定!?!?》


是非お楽しみに。私もビール片手に楽しみたいと思います!


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