165 / 765
紫藤 蓮(シトウ レン)
side・ロロシュ
しおりを挟む
やったぞ!!
ヨルムガンドを手に入れた!!
これであいつを喜ばせてやれる!!
まぁ、所有権は第2騎士団になるが、面倒を見るのはオレとマークってことになったから、実質オレ達のものと言っていいんじゃねぇか?
求愛行動の最初の貢物だ、マークが喜ぶ物を贈ってやらないとな!
魔法契約の解除は、オレの養母って事になっているドルフの奴が、最後まで契約解除を拒んでいたが、アルケリスの一味が捕縛され、罪の重さから処刑が確実となった途端、手の平を返して来やがった。
可愛い息子の命を助けてくれ、だとさ。
馬鹿なんじゃねぇか?
アルケリスに弄ばれた、子供達がどうなったと思ってんだ。
オレを孕んだ母さんの事を追い出したのもドルフだ。
母さんが死んだ後、侯爵家に引き取られたオレは、影に放り込まれるまでの間、忌子だとヤツに散々いじめ抜かれた。
『高貴なメリオネス家』に獣人の、しかも悍ましい蛇の血が混ざるなどあってはならない。伴侶も子も持つことを許さない、と魔法契約を強要したのも、ドルフとドルフの兄のポーツだ。
クソ野郎の息子が、それ以上のクソだっただけじゃねぇか。
てめえの行いの責任くらい取らせるべきだろ?
だがオレは優しいからな、契約解除と引き換えにアルケリスの助命を陛下に願い出てやったさ。
ドルフの奴は、空々しい感謝の涙を見せていたが、どうせ腹の中ではオレをどう追い落とすかの算段でいっぱいだった事だろうよ。
まぁ、あの時は黙っていたが、アルケリスは北の鉱山で生涯強制労働させられる。
処刑を免れても死んだほうがマシな暮らしが待ってんだ。
アルケリスの奴が、それを感謝するとは思えねぇな。
侯爵はオレとの約束を守って、ドルフを放逐した。
身一つで屋敷を追い出される時の、ドルフの顔は実に見ものだった。
どんなに騒ごうと、大義名分はこっちに有るんだぜ?
『高貴なメリオネス家』に、犯罪者の血はいらねぇんだよ?
ドルフの奴は実家に戻ったらしいが、強欲なポーツが大人しく侯爵の言いなりになるとは思えねぇ。
そのうち何か仕掛けて来るだろうが、仕掛けなら、こっちの準備も万端だ。
貴族席が一つ空けば、どっかの優秀な奴が叙爵されんだろうから、オレの薄汚い復讐も世直しの一助になるってもんだろ?
全てが片付いた訳じゃねぇが、忌々しい魔法契約の解除も済んだ。
マークには、やな思いをさせちまったが、これでやっと大手を振って求愛行動に入れる。
しかしあのちびっ子、妙に鋭いと言うか。
いきなり “イチャイチャしないの?” とか、可愛い顔してなんてこと聞いてくんだよ?
オレが浮かれてるのがバレたのかと、本気でビビったじゃねぇか。
悪気がないってとこが、余計に悪質だよな。
でもなぁ、なんだかんだ言っても、マークのことは本気で心配してたし、他の奴らと比べるとオレの扱いが雑な気はするが、体温調節用の魔道具を作ってくれたりしてよ?
擦れてないって云うか、オレと違って真っ直ぐって云うか、良い子なんだよなぁ。
オレや閣下みたいなオスには、マークやちびっ子みたいな真っ直ぐな人間てのは、眩しくて仕方がねぇよな。
まさか泣く子も黙る、天下のクロムウェル閣下が、あそこまでデレるとはよ。
いっつも良い匂いさせてるし、あれは閣下の好みの香油なのか?
そういやぁ、閣下が毎日髪の手入れしてるって言ってたなぁ。
閣下もリリーシュ様に髪結を習ったって言ってたし・・・・。
オレ、そんなの習った事ねぇぞ?
いいのか?オレこのままで?
マークの白銀の髪は柔らかくて、とても綺麗だ。
確かにマークの髪なら、手入れだけじゃなく、ずっと触っていたくなるな。
ちびっ子も髪の手入れをしてやれって言ってたな・・・・。
明日にでもマークの好きそうな香油を買いに行くか?
「ロロシュ?」
「あ? ようマーク」
「こんな所でどうしたのですか?」
「ヨルムガンドを見に行くんだろ?付き合うよ」
「待っていてくれたのですか?」
なんだよ。良い笑顔すんなよ。
可愛いじゃねぇか。
「お おう。ちと話したいことも有ってな」
「話し? 良いですよ。ここでは人目がありますから、下に降りてからにしましょうか」
オレのせいで人目を気にさせるようになっちまったな、こいつには、そんなの似合わねえのに・・・それも今日までだからな。
「じゃあ、行くか?」
「えッ? ちょっとロロシュ?」
驚いてるな?
初中閣下がちびっ子を抱き上げてるのを見てて、おれもやってみたかったんだよ。
サイズ的に縦抱きはできねえけど、横抱きだって結構グッとくるな!
「ハハッ!」
「もう!これじゃあ、昼間の閣下と同じですよ?」
「下に降りたらオレの事、締め落とすか?」
「プッ・・アハハ!・・・あれはレン様にしか出来ませんよ」
「だよなぁ」
風を切って地の底に降りていく間、顔に当たるマークの髪も、くすぐったいが愛おしいな。
閣下もこんな気分だったのか?
「着きましたよ?降ろしてください」
「もうちょっと、このままで」
「・・・急にどうしたのですか?」
心配そうに見るなよ。煽ってんのか?
「・・・・契約が解除された。オレは自由だ」
「それって・・・んっんん」
嗚呼、やっぱり甘いな。
マークの舌は蜜を舐めてるみたいだ。
やばい。
今ここで、押し倒したい。
「ん~・・・はあ・・こんな所では嫌ですよ」
「そうか・・・」
お前のも兆してんの、分かってんだぞ?
婚約許可証がもらえるまで、マーキングも駄目だと言われちまった。
まぁ、そうだよな。
マークの家は由緒正しい伯爵家だ。
家格はオレの方が上だが、古さと真っ当さで言ったら、アーチャー家の方が上だ。
何よりオレの番が正式な手順を望むなら、それに応えてやらねぇとな。
オレはお前の愛を乞うためなら何度跪いたっていい。
「マキシマス・アーチャー オレの伴侶になってくれるか?」
「ロロシュ・・・ええ。ロロシュ・メリオネスあなたの伴侶に私はなります」
「やった!ありがとう!!」
嬉しくて、思わず抱き上げたマークとクルクル回っちまった。
オレは子供かよ。
魔素湖の光で、マークの髪が輝いて、赤く染まった頬も何もかも綺麗だ。
こんな幸せな日が来るなんて、思ってもみなかった。
愛し子の招来が無かったら、オレはマークを見つけられなかっただろう。
アルケリスのアホがちびっ子にちょっかいをかけなかったら、奴の放逐もオレの継承もなかったはずだ。
全部ちびっ子のお陰だ。
言い伝えの愛し子の祝福は、本当に有るんだな。
「マーク、感謝の気持ちを込めて贈り物だ」
「贈り物?」
こんな所で何も持って無いから不思議そうだな?「これだ」とヨルムガンドの水槽を掌で叩いても、まだ理解出来ねぇみたいだ。
「このヨルムガンドだ。正式な所有権は第2騎士団に有るが、オレとお前で面倒を見る許可をもらって来た」
「本当ですか?!」
「嘘ついてどうするよ。ただコイツの出し方が分からず、死なせちまったらそこ迄だ。あと、懐かなくても終いだぞ?」
「ええ。勿論です!!ありがとうロロシュ!!」
こんなもんで、喜んでキスをくれるのか?
だったら,ミーネの石像を贈ったらどうなるんだろう?
どうにかして、手に入れられないか?
「ん?・・・マーク誰か来る」
「こんな時間に?中に入る許可は私だけの筈ですが・・・」
「シッ・・・こっちに来い」
オレ達は水槽と張り出した岩の間に身を潜め、来るはずのない来訪者の様子を伺った。
“・・・・モルロー?”
“アイツ何しに来たんだ?“
マークもモルローが何しに来たのか分からない様子だ。
モルローはオレ達に気付かず、慣れた様子で奥に向かって足早に通り過ぎていった。
オレ達は互いの目を見て、後を付けて行く事にした。
だが、通路は見通しの良い一本道だ。
オレ達は通路の入り口に張り付いて、モルローが何処に行くのかを盗み見ていた。
”あれは、魔獣の実験室ですね“
”行くぞ“
モルローが実験室に入ったのを確認し、足音を忍ばせて後を追った。
幸いと言うべきか、昼間オレが壊した所為で、実験室の扉は完全には閉められなくなっている。
扉の隙間から見えるモルローは、卵部屋に向かっていった。
”卵を盗むつもりでしょうか?“
”どうだか。アイツの魔力値じゃ卵なんで孵せねぇよ“
卵部屋に入ったモルローは、何かを考えるように顎に手を当てて暫く立ったままだったが、一つ頷くとドラゴンの卵が置かれていた台に近づき、卵が置かれていたクッションを退けて何かを押したようだった。
すると卵の台が横に動いていくのが見えた。
あんな目立つとこにスイッチを作んのかよ。 目立ちすぎて逆に盲点だ。
卵の台が動きを止め、更に下へ降りる通路ができたようだった。
だがモルローは下へ降りようとはせず、掌に魔力を集め始めた。
拙い!!
「モルロー!!」
怒声をあげて、部屋に飛び込むと驚いたモルローの手から、炎の塊がおれに向かって飛んで来た。
ジュウーーー!!
マークの放った氷の盾が炎を防ぎ、白銀の影が横を通り過ぎたと認識した直後、モルローはマークの足元に倒れていた。
ほんと!番の方が強いってのは複雑だな!
番の手で意識を刈り取られたモルローを放置して、床に開いた通路を覗き込むと、そこは誰かの書斎のようだった。
「・・これ、なんだと思う?」
「さあ。ただの箱・・・ではないですよね。蓋も見当たりませんし」
「・・・・・・」
「この部屋、なんだかすごく居心地が悪くないですか?」
「そうだな・・・取り敢えずコイツを閣下に突き出そうぜ?」
オレ達は拘束したモルローを魔法で浮かせ、閣下の元へと急いだ。
一生の思い出になるはずのプロポーズを、台無しにしたこのクソを、オレは生涯許さないだろう。
ヨルムガンドを手に入れた!!
これであいつを喜ばせてやれる!!
まぁ、所有権は第2騎士団になるが、面倒を見るのはオレとマークってことになったから、実質オレ達のものと言っていいんじゃねぇか?
求愛行動の最初の貢物だ、マークが喜ぶ物を贈ってやらないとな!
魔法契約の解除は、オレの養母って事になっているドルフの奴が、最後まで契約解除を拒んでいたが、アルケリスの一味が捕縛され、罪の重さから処刑が確実となった途端、手の平を返して来やがった。
可愛い息子の命を助けてくれ、だとさ。
馬鹿なんじゃねぇか?
アルケリスに弄ばれた、子供達がどうなったと思ってんだ。
オレを孕んだ母さんの事を追い出したのもドルフだ。
母さんが死んだ後、侯爵家に引き取られたオレは、影に放り込まれるまでの間、忌子だとヤツに散々いじめ抜かれた。
『高貴なメリオネス家』に獣人の、しかも悍ましい蛇の血が混ざるなどあってはならない。伴侶も子も持つことを許さない、と魔法契約を強要したのも、ドルフとドルフの兄のポーツだ。
クソ野郎の息子が、それ以上のクソだっただけじゃねぇか。
てめえの行いの責任くらい取らせるべきだろ?
だがオレは優しいからな、契約解除と引き換えにアルケリスの助命を陛下に願い出てやったさ。
ドルフの奴は、空々しい感謝の涙を見せていたが、どうせ腹の中ではオレをどう追い落とすかの算段でいっぱいだった事だろうよ。
まぁ、あの時は黙っていたが、アルケリスは北の鉱山で生涯強制労働させられる。
処刑を免れても死んだほうがマシな暮らしが待ってんだ。
アルケリスの奴が、それを感謝するとは思えねぇな。
侯爵はオレとの約束を守って、ドルフを放逐した。
身一つで屋敷を追い出される時の、ドルフの顔は実に見ものだった。
どんなに騒ごうと、大義名分はこっちに有るんだぜ?
『高貴なメリオネス家』に、犯罪者の血はいらねぇんだよ?
ドルフの奴は実家に戻ったらしいが、強欲なポーツが大人しく侯爵の言いなりになるとは思えねぇ。
そのうち何か仕掛けて来るだろうが、仕掛けなら、こっちの準備も万端だ。
貴族席が一つ空けば、どっかの優秀な奴が叙爵されんだろうから、オレの薄汚い復讐も世直しの一助になるってもんだろ?
全てが片付いた訳じゃねぇが、忌々しい魔法契約の解除も済んだ。
マークには、やな思いをさせちまったが、これでやっと大手を振って求愛行動に入れる。
しかしあのちびっ子、妙に鋭いと言うか。
いきなり “イチャイチャしないの?” とか、可愛い顔してなんてこと聞いてくんだよ?
オレが浮かれてるのがバレたのかと、本気でビビったじゃねぇか。
悪気がないってとこが、余計に悪質だよな。
でもなぁ、なんだかんだ言っても、マークのことは本気で心配してたし、他の奴らと比べるとオレの扱いが雑な気はするが、体温調節用の魔道具を作ってくれたりしてよ?
擦れてないって云うか、オレと違って真っ直ぐって云うか、良い子なんだよなぁ。
オレや閣下みたいなオスには、マークやちびっ子みたいな真っ直ぐな人間てのは、眩しくて仕方がねぇよな。
まさか泣く子も黙る、天下のクロムウェル閣下が、あそこまでデレるとはよ。
いっつも良い匂いさせてるし、あれは閣下の好みの香油なのか?
そういやぁ、閣下が毎日髪の手入れしてるって言ってたなぁ。
閣下もリリーシュ様に髪結を習ったって言ってたし・・・・。
オレ、そんなの習った事ねぇぞ?
いいのか?オレこのままで?
マークの白銀の髪は柔らかくて、とても綺麗だ。
確かにマークの髪なら、手入れだけじゃなく、ずっと触っていたくなるな。
ちびっ子も髪の手入れをしてやれって言ってたな・・・・。
明日にでもマークの好きそうな香油を買いに行くか?
「ロロシュ?」
「あ? ようマーク」
「こんな所でどうしたのですか?」
「ヨルムガンドを見に行くんだろ?付き合うよ」
「待っていてくれたのですか?」
なんだよ。良い笑顔すんなよ。
可愛いじゃねぇか。
「お おう。ちと話したいことも有ってな」
「話し? 良いですよ。ここでは人目がありますから、下に降りてからにしましょうか」
オレのせいで人目を気にさせるようになっちまったな、こいつには、そんなの似合わねえのに・・・それも今日までだからな。
「じゃあ、行くか?」
「えッ? ちょっとロロシュ?」
驚いてるな?
初中閣下がちびっ子を抱き上げてるのを見てて、おれもやってみたかったんだよ。
サイズ的に縦抱きはできねえけど、横抱きだって結構グッとくるな!
「ハハッ!」
「もう!これじゃあ、昼間の閣下と同じですよ?」
「下に降りたらオレの事、締め落とすか?」
「プッ・・アハハ!・・・あれはレン様にしか出来ませんよ」
「だよなぁ」
風を切って地の底に降りていく間、顔に当たるマークの髪も、くすぐったいが愛おしいな。
閣下もこんな気分だったのか?
「着きましたよ?降ろしてください」
「もうちょっと、このままで」
「・・・急にどうしたのですか?」
心配そうに見るなよ。煽ってんのか?
「・・・・契約が解除された。オレは自由だ」
「それって・・・んっんん」
嗚呼、やっぱり甘いな。
マークの舌は蜜を舐めてるみたいだ。
やばい。
今ここで、押し倒したい。
「ん~・・・はあ・・こんな所では嫌ですよ」
「そうか・・・」
お前のも兆してんの、分かってんだぞ?
婚約許可証がもらえるまで、マーキングも駄目だと言われちまった。
まぁ、そうだよな。
マークの家は由緒正しい伯爵家だ。
家格はオレの方が上だが、古さと真っ当さで言ったら、アーチャー家の方が上だ。
何よりオレの番が正式な手順を望むなら、それに応えてやらねぇとな。
オレはお前の愛を乞うためなら何度跪いたっていい。
「マキシマス・アーチャー オレの伴侶になってくれるか?」
「ロロシュ・・・ええ。ロロシュ・メリオネスあなたの伴侶に私はなります」
「やった!ありがとう!!」
嬉しくて、思わず抱き上げたマークとクルクル回っちまった。
オレは子供かよ。
魔素湖の光で、マークの髪が輝いて、赤く染まった頬も何もかも綺麗だ。
こんな幸せな日が来るなんて、思ってもみなかった。
愛し子の招来が無かったら、オレはマークを見つけられなかっただろう。
アルケリスのアホがちびっ子にちょっかいをかけなかったら、奴の放逐もオレの継承もなかったはずだ。
全部ちびっ子のお陰だ。
言い伝えの愛し子の祝福は、本当に有るんだな。
「マーク、感謝の気持ちを込めて贈り物だ」
「贈り物?」
こんな所で何も持って無いから不思議そうだな?「これだ」とヨルムガンドの水槽を掌で叩いても、まだ理解出来ねぇみたいだ。
「このヨルムガンドだ。正式な所有権は第2騎士団に有るが、オレとお前で面倒を見る許可をもらって来た」
「本当ですか?!」
「嘘ついてどうするよ。ただコイツの出し方が分からず、死なせちまったらそこ迄だ。あと、懐かなくても終いだぞ?」
「ええ。勿論です!!ありがとうロロシュ!!」
こんなもんで、喜んでキスをくれるのか?
だったら,ミーネの石像を贈ったらどうなるんだろう?
どうにかして、手に入れられないか?
「ん?・・・マーク誰か来る」
「こんな時間に?中に入る許可は私だけの筈ですが・・・」
「シッ・・・こっちに来い」
オレ達は水槽と張り出した岩の間に身を潜め、来るはずのない来訪者の様子を伺った。
“・・・・モルロー?”
“アイツ何しに来たんだ?“
マークもモルローが何しに来たのか分からない様子だ。
モルローはオレ達に気付かず、慣れた様子で奥に向かって足早に通り過ぎていった。
オレ達は互いの目を見て、後を付けて行く事にした。
だが、通路は見通しの良い一本道だ。
オレ達は通路の入り口に張り付いて、モルローが何処に行くのかを盗み見ていた。
”あれは、魔獣の実験室ですね“
”行くぞ“
モルローが実験室に入ったのを確認し、足音を忍ばせて後を追った。
幸いと言うべきか、昼間オレが壊した所為で、実験室の扉は完全には閉められなくなっている。
扉の隙間から見えるモルローは、卵部屋に向かっていった。
”卵を盗むつもりでしょうか?“
”どうだか。アイツの魔力値じゃ卵なんで孵せねぇよ“
卵部屋に入ったモルローは、何かを考えるように顎に手を当てて暫く立ったままだったが、一つ頷くとドラゴンの卵が置かれていた台に近づき、卵が置かれていたクッションを退けて何かを押したようだった。
すると卵の台が横に動いていくのが見えた。
あんな目立つとこにスイッチを作んのかよ。 目立ちすぎて逆に盲点だ。
卵の台が動きを止め、更に下へ降りる通路ができたようだった。
だがモルローは下へ降りようとはせず、掌に魔力を集め始めた。
拙い!!
「モルロー!!」
怒声をあげて、部屋に飛び込むと驚いたモルローの手から、炎の塊がおれに向かって飛んで来た。
ジュウーーー!!
マークの放った氷の盾が炎を防ぎ、白銀の影が横を通り過ぎたと認識した直後、モルローはマークの足元に倒れていた。
ほんと!番の方が強いってのは複雑だな!
番の手で意識を刈り取られたモルローを放置して、床に開いた通路を覗き込むと、そこは誰かの書斎のようだった。
「・・これ、なんだと思う?」
「さあ。ただの箱・・・ではないですよね。蓋も見当たりませんし」
「・・・・・・」
「この部屋、なんだかすごく居心地が悪くないですか?」
「そうだな・・・取り敢えずコイツを閣下に突き出そうぜ?」
オレ達は拘束したモルローを魔法で浮かせ、閣下の元へと急いだ。
一生の思い出になるはずのプロポーズを、台無しにしたこのクソを、オレは生涯許さないだろう。
57
あなたにおすすめの小説
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる