囚われし創造主の遊び

白黒yu-ki

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第1章 始まりの創造主

#2 創造主、冒険者始めました

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見過ごす事が出来なかったとはいえ、ボクはソードウルフに襲われていた姉妹を助けてしまった。創造主視点からすれば、これは自然の摂理を捻じ曲げた事になる。この世界にある全てのモノはボクが生み出し、またはそれから発展進化を遂げたものである。謂わば、自分の子供や孫のようなものだ。ソードウルフだって獲物を得なければ生きていけない。公平な立場に居座るつもりなのならば、この行いはレッドカードものだ。

今のボクたちは最寄りのアライバの街でなく、別のリュアラの街に向かっていた。アライバの街にはリア達の元・ご主人がいる可能性が高く、遭遇を避ける為だ。


「で、リア達をそのリュアラって街に送り届けてさようならっていうのは、やっぱり納得してくれてない?」

「はい。私はミズキ様に一生を捧げるとあの瞬間に誓ったのです。ミズキ様が望まれるのでしたら、夜の奉仕も拒みません。どうかお傍に置かせてください」

「い、いや、別にそんな事は強要するつもりはない」

「…そ、そうですよね。私には女の魅力はありませんよね」

「そういう事じゃないんだが…」

涙ぐむリアに、ボクは思わず頭を抱える。確かにリアの容姿は一般的に見て美人とは言えない。これまでの奴隷生活での傷だらけの体に痛んだ髪。先ほど水浴びしたとはいえ、まだ臭いが残っている。

だがこのままリア達をリュアラに置いたとしても、生活は保証できない。せめて何かを施してやりたいが…。

「…少しくらいなら大丈夫だろう」

ボクはリアとシアを近くに流れる川へ先導し、2人を座らせる。そして「ここで見た事は誰にも言わないように」と告げて掌を広げる。そして無からシャンプーを創造した。

「消費スキルポイントは2か。これくらいなら気にしなくても良さそうだな」

「あ、あのミズキ様、急にミズキ様の手の中からそれが…何をされたのですか? そんな魔法は聞いたことも無いです。もしや伝承にある神様のような奇跡を!?」

突如出現したシャンプーのボトルに驚くリアと目を輝かせるシア。そうか、この星には魔法が存在するのか。言われてみれば精霊もいるんだ。存在していても不思議ではないと思ってしまうのは、かつて自分がゲーマーだったからだろうか。可能ならば覚えてみたいものだ。

「魔法だよ、魔法。世の中には知られてない魔法もあるのさ」

適当な事を言ってリアを誤魔化す。そして川に視線を向ける。うん、思った通り、目を凝らすとそこにいる。

「そこの水の精たち。ちょっと手伝ってくれ。彼女達の髪を優しく濡らしてやってくれ」

リア達がボクの呼び掛けに怪訝な表情を浮かべているのが分かる。だがその直後、川の水が盛り上がりドッチボール程の水球が浮かび上がった。そしてそれはリアとシアの髪を覆い、再び川へと帰っていった。

「え…え…?」

「さて、動かないでくれよ。今から頭洗うからな」

状況に思考が追いつかないのか、オロオロするリアを見るのは、申し訳ないが少々楽しい。

ボクはシャンプーを手につけ、泡立てて彼女達の髪を洗い始めた。初めは緊張していた2人だが、徐々にリラックスしてくれていた。

「お姉ちゃん、ミズキさまぁ…頭気持ちいぃですぅ」

「ええ…世の中にこんな素晴らしい物があるなんて…あん、ミズキ様、くすぐったいですっ」

「ほらほら、動かない。痒いところはないですかー?」

確か美容院ではこんな事を聞かれた気がする。それに則ってボクも美容師よろしく訪ねる。それに2人は「大丈夫です」と答えてくれた。

「さて、洗い流すか。水の精、また頼むよー」

ボクの呼び掛けで再び川から水球が飛び出し、2人の髪を覆う。そして全ての泡を洗い落とした。

次はドライヤーか? でも電気がないからなぁ。また精霊に頼むとしよう。

「光の精、彼女達の髪を乾かしてくれ」

空に漂っていた光の精に呼び掛けると、快く了承してくれた。光の精たちは集まって光球となり2人の髪を暖めてゆく。そして乾いた事を確認して、ボクは光の精に「もう大丈夫そうだ、ありがとう」と礼を述べると、嬉しそうに天空へと戻って行った。

次は櫛が欲しいな。
この程度ならあまりスキルポイントを消費しないとはいえ、節約はしないといけない。ボクは近くの木に駆け寄り、手を触れる。

そして木から錬成された櫛を取り出した。スキルポイントは消費していない。簡易な櫛だが、髪をとく程度なら充分だ。ボクは再びリア達の元に戻り、順番に2人の髪に櫛を入れていった。

「おぉ、リアの髪がサラサラになった!」

リアたちの髪は明るい赤色をしている。アニメの赤髪キャラを実写にするとこのような感じになるのだろうかと考えていると、リアの目がこちらを見上げていた。

「どうした?」

「ミズキ様、私、少しは綺麗になれましたでしょうか?」

「ああ、リアならもっと美人になれるさ」

ボクの中で次なる計画が組み上がっていく。顔や体に刻まれてしまっている傷を消し、今度は石鹸…ないしボディーソープを使って更に綺麗にしてみようと企てる。



◆◇◆◇

翌日、リュアラの街に到着した。
そして途中何度か遭遇したソードウルフの毛皮を手に入れた。今は自分を含む3人とも無一文なのだ。この毛皮を売れば少しくらいのお金になるだろう。

街の入り口に立つ番兵がこちらを一瞥する。しかし武器も何も持っていないのもあり、すんなり通してくれた。そして毛皮を売る場所を訪ねると冒険者ギルドという場所が買い取ってくれると教えてくれた。

街に入るとシアのお腹の虫が鳴いた。ボクがシアの顔を見ると恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いている。

「そうだな、暫く食べてないって話だから仕方ないさ。すぐに毛皮を売って何か食べるとしようか」

「う、うん!」

シアは嬉しそうにボクの腕にしがみつく。その表情を見て親戚の小さな子を思い出してしまった。


街の看板に書かれている文字は日本語でもなければ英語でもない。そのせいもあって冒険者ギルドに辿り着くのは時間を有したが、何とか到着した。中に入ると筋骨隆々な男や剣を携えた剣士達がテーブルに腰を据えて盛り上がっていた。あれが冒険者という人たちなのだろうか。

「おっと、まずは換金換金」

ボクは受付の女性に声をかける。

「すいません」

「はい、どのような御用でしょうか?」

「この毛皮を売りたいのですが…」

「はい、確認させて頂きます。これは…ソードウルフの毛皮ですね。品質も良いし、素晴らしいです。このなめし技術も素晴らしいです。すぐにでも加工できますね。それでは…銀貨で30枚は如何でしょうか?」

「構いません。それでお願いします」

「分かりました。今すぐに用意いたしますので、そちらのテーブルでかけてお待ち下さい」

この世界の物価が分からないので考えても仕方ない。特に苦労して手にいれた物でもないし、今日の分の食費や宿泊費を得る事ができれば満足だ。ボクらは受付の女性に促されたテーブルに腰を落ち着けた。

銀貨とやらを待っている間、ボクはこの冒険者ギルドをじっくり観察していた。創造主の身としては、人々の楽しそうな笑顔は嬉しいものだ。

「ミズキ様は冒険者にならないのですか?」

冒険者たちを眺めていたボクに、リアが訊ねた。

「そうだな。まず冒険者というシステムがどういうものか知らないんだ」

「それでは私がお教えしますよ」

つい先日この星に来たばかりとは言えない。一般常識だとしたら怪しまれるだろうかと、そんなことを考えていたボクに、受付の女性が銀貨の入った袋を持ってやってきてそう言った。

「まず冒険者になるには申請書を提出して頂きます。そして自身の能力値を測ります。わざわざこちらに見せて頂く必要はありませんが、その能力値を参考にそれぞれのランクの依頼を受けてもらうのが良いでしょう」

「依頼にもランクがあるという事か」

「そうですね。危険度や依頼人の重要度によってはランクが高くなります。ただ当ギルドとしても無駄に死人を出したくはありませんので、分不相応やランクの冒険者にはそういった依頼の受注はお断りしております。あそこの壁にたくさんの依頼書が貼ってありますので、受けたい依頼があったら取り外して受付に渡して受注といった流れです。それでどうですか? 冒険者に興味出てきましたか?」

受付嬢に訊ねられ、ボクは考え込む。リア達の生活の基盤が安定するまではある程度の収入が必要になりそうだ。まずこの創造主のゲームクリア条件が未だに判明していない。創造した生命体が何かの条件を満たした場合にクリアとなる。だがその『何か』が分からないのだ。創造主レベルを更に上げていけば情報が開示されるかもしれないが、この星の好条件を見過ごすのは惜しい。それならばのんびりと手探りながらも条件を探ることにする。その為にはやはり生活の基盤の確保が重要だ。

「…ひとつ訊ねるが、資格の失効はあるのだろうか?」

「失効の対象となるのは3つのパターンがあります。ひとつは死亡した場合です。ふたつ目は自身の意思での引退。そして最後に犯罪を犯して賞金首リストに入った場合です」

「ということは長い期間依頼を受けてなくても失効は無いということか」

「ええ。ただあまりにも空白期間が長かった場合、ブランクを測るためにも実技の試験はございます」

成る程。
確かにその制度は必要だろう。冒険者になるデメリットがないのが魅力だ。それに元ゲーマーの血が騒ぐ。

「決めた。冒険者になります!」


ボクは立ち上がって受付嬢にそう宣言した。そして申請費で早速銀貨10枚を支払うハメになったのだった。
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