囚われし創造主の遊び

白黒yu-ki

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第1章 始まりの創造主

#10 創造主と魔法とリバーシと

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クリス達に魔力量がバレて2日が経っていた。依頼と並行してサラサから魔法の手解きを受けているが、彼女は常に不機嫌だ。

「クリス様からの頼みじゃなければ…」

と、時折ボソッと呟くその言葉には敵意が内包されているような気がした。だがクリスの言う通り彼女は魔法指導者としてとても優秀で、ボクのような規格外の魔力もちにも分かりやすいように説明してくれる。

「流石、クリスが認めている魔術師だな」

そう褒めると、表情は冷静を装っているが面白いように照れていた。ちょろい、と言っていいだろう。

今日はクリスやボルクスも含め、リュアラの街の外で魔法の授業が始まった。そして何故かリアとシアも参加している。リア曰く「魔法が使えるようになればお役に立てるかもしれない」との事だ。確かに魔法が使えるようになれば、生活の面でも重宝するだろう。

「今日はお前の属性を把握する事にした。魔法にも体質によって得手不得手が存在する。例えば、私の場合は『火』と『風』の属性をもっている。だが私のような二属性セカンドもちはごく稀だ。クリス様は『光』。ボルクス殿は魔力の総量が低く、魔法を扱う事はできない。これは体質的なものであり、後天的に変化する事は無いと言われている」

つまりサラサは魔法使いとして天賦の才を与えられていると言う事か。この星におけるそういった才能の振り分けシステムは把握していないが、そうなると魔力の少ない者は不憫だ。しかし実際はそうではなく、魔力が少量で魔法が扱えない代わり、身体能力が高くなる傾向にあるらしい。

「それで、属性はどうやって調べるんだ?」

ボクの質問に、サラサは幾つかの鉱石を取り出した。

「これは魔石だ。それぞれ火の魔石、水の魔石と各種揃えている。これに魔力を流し、反応した魔石によって該当する属性が分かるという訳だ」

サラサは赤い魔石を手に取り、魔力を込める。すると魔石は激しく光り輝いた。これが火の魔石と言う事なのだろう。

「面白そうだな。ボクも試してみるとしよう」

今回のように、自分の属性を調べる展開はゲーマーとして心踊らされる。だがこれまで魔法を使ってきた記憶から、光、土、風は適性があるのではと予想する。だがその期待は脆くも崩れ去った。魔石に魔力を流した瞬間、魔石が砕け散ったのだ。皆一同絶句した。

「これは…もしかして属性が…ないと言う事か?」

「…それならば魔石に何も変化は起こらぬ。単純に魔力量が多過ぎただけだろう。過去にこんなケースは聞いた事がないので予想に過ぎないがな」

自分のような魔力総量では、この既存の方法で調べる事はできないらしい。魔石での判別が行えないとなると、手当たり次第に各属性魔法を使うしかない。

魔石での属性判断はボクを除いて行われ、リアの属性は『光』、シアは『木』である事が分かった。

リア達がサラサに属性魔法の説明を受けている間、ボクは属性魔法を試す事になった。まずは火をイメージして魔力をほんの僅かに流す。以前はそれでも失敗した為、更に絞る。

自分の周囲に火の玉がボッと燃え上がった。どうやら火の属性はあるようだ。次は水。そして氷、風、光、土、木、雷、光、闇も試す。それらの属性も難なく発動し、全ての属性魔法が自分の周囲を取り囲んでいた。

「待て…待て…お前は…何をやっている!」

「ん? 何って属性魔法を調べているのだ。魔石での判別ができないのだから、この方法しかないのだろう?」

顔色を青く染めていたサラサは「そうだけど、そうじゃない!」と体を震わせながら叫ぶ。どっちだ。

「お前は今…幾つの魔法を並行して使っているんだ?」

「…10個だな」

「2つの魔法を同時に展開出来るだけでも天才と言われるんだがな…」

それの5倍を展開しているボクは異端という訳か。しかしこの同時に発動させる感覚には覚えがあるのだ。それは複数の異なった種類の創造。ひとつひとつ創造するだけではレベルアップに時間がかかってしまう為、一瞬で幾つも創造できるように練習を積み重ねてきたのだ。初めのうちは2つの創造でも苦労したが、500万年も経つ頃には難なく行えるようになっていた。その感覚を元に魔法を展開していく。

サラサやクリスたちは徐々に顔を天空に上げ、口をあんぐりと開けた。ボクも頭上を確認する。周囲や頭上に数百の魔法を展開する事が出来ていた。

「ふむ、魔法でも上手くいったか」

「『ふむ、魔法でも上手くいったかドヤァ』じゃない!」

涙目のサラサに胸倉を掴まれて怒られた。ドヤァは言っていないのだが…。

「お、お前、お前は一体、おま、おま…」

「落ち着け、大丈夫だ。ゆっくり話を聞こう」

「う、うん…じゃなくて! これは一体幾つ展開させた!?」

感情をコロコロ変化させて…情緒不安定だな。ボクはそんなサラサに問い詰められ、現在展開させた魔法数を頭の中で数える。

「…314個、だな」

「………私の中の魔法理論が崩れていく…」

ボクの答えを聞き、サラサをその場に崩れ落ちてしまった。

「大丈夫だ。複数の魔法は初めてで試しに展開しただけで、最大550はいける」

バタン、とサラサは倒れた。何故か気を失ってしまったらしい。この状況を見て、クリスは「これは気を失っても仕方ないな」と苦笑していた。

◆◇◆◇

「あー、あの姉ちゃんも災難やったなぁ」

宿でリバーシを作っているボクの部屋で、午前中の魔法講座の話を聞いたダイアが南無と手を合わせる。

「確かに少しやり過ぎたと反省もしている」

「ミズキにとって『少し』って言うのが問題なんやけどね。『少し』ってどういう意味か知っとる?」

「…訂正する。やり過ぎた」

「ウチはもう驚かん事にしたけど、ミズキは相変わらずやね」

その「相変わらず」が何を指すのか深くは考えない方が良さそうだ。そしてそんな話をしている中、ようやくリバーシが完成した。

「試しにやってみるか。ダイア、リア達を呼んできてくれ」

「分かったー」

依頼は子ども向けという体である為、何も知らないリア達に説明してすぐに理解してもらえるかが重要な判断材料となる。リバーシ自体のルールは単純であるので問題はないと思うが…。

ボクの部屋にやって来たリア達。
そこでボクはリバーシのルールを説明し、皆で対戦をする事にした。

「へー、これは斬新な遊びですね…。でもルールも簡単ですし、すぐ覚えれました!」

ボクと一緒に対戦するリアは楽しそうだ。今まで誰かとこうして遊ぶ機会はなかったのかもしれない。

「ミズキさま、私もやりたい!」

「もう1セット作ったから、ダイアとやってみなよ」

「うん、やろ、ダイアお姉ちゃん!」

「ええでー、ほなら一緒にやろか」

久し振りのリバーシに、ボクも地球生活での事を思い出す。ここまでの年数が経ってしまうと友人達の顔も思い出せなくなっているが、友人とこうして遊んだ記憶は蘇った。

その夜はシアがリバーシの楽しさに魅入られてしまい、ダイアは徹夜で相手をさせられることになったのだった…。




翌日、リバーシのひとつを依頼主に届け報酬を受け取った。だがその一週間後には元々娯楽が少なかったのも相まって、単純なルールで楽しめるリバーシは民衆にすぐに浸透した。

冒険者ギルドへも『リバーシを作ってください』というボク指名の依頼が多く入ったが、マグネット版ではない簡易なリバーシをダイアが製作する事で事なきを得た。

冒険者ギルドでも屈強な男達がリバーシを囲み、戦略を練る姿は笑いを誘う。

「ミズキ! 今度は鍛冶の腕じゃニャくて、最近流行りの、このリバーシで勝負ニャ!」

最近ではミィがリバーシの勝負を持ちかけてくるようになっていた。冒険者ギルドがまるでゲームコーナーだ。

「でも本当にミズキがリバーシを考えたニャ? これだけ流行ってると収入も増えたんじゃニャいか?」

「冒険者ギルドが権利を買い取ってくれるみたいだからな。後は専属の職人が普及させてくれるようだ。よし、これで終わりだな」

「な…ミィの駒が優勢だったはずニャのに…全部真っ黒になったニャ!?」

「ただ目先の枚数を取るだけじゃ、リバーシは勝てないのさ」

「…流石創案者だニャ。ミィもまた腕を磨いて再挑戦するニャ。あ、それでさっきの話の続きニャんニャが、ミズキってずっと宿に泊まってるけど、家を購入する気はニャいんかニャ? それくらいの収入はあると思うニャが」

リバーシの腕よりも鍛冶の腕を上げて欲しい所だが、家に関しては以前から考えてはいた。宿代を払っていくのも長期的に考えると痛い出費になる。自宅購入…自分が永住する家ではなくとも、リア達の住居を購入するのは懐的にも丁度良いタイミングのようだ。
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