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第1章 始まりの創造主
#14 創造主の選ぶ道
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マイホームが完成して翌日、リュアラの街からも一望できるユグドラシルの巨木の誕生で騒ぎになりかけたところをブリットが収めたそうだ。ブリットには何度も苦労をかけてしまっている。今度お詫びの品を用意しておこう。
そう考えた矢先に、本人がマイホームを訪ねに来てくれた。
「…いらっしゃい」
「…一冒険者が住むには場違いな豪邸に、庭に生えた山よりも大きな木。色々と突っ込みたい事はあるが、今回は魔族の話がメインだ」
ブリットだけでなく、クリス達もついてきたのはそういう訳だったか。先日は簡単に報告を済ませただけであったし、詳しい話をする必要はあるだろう。
「そうだな…。だが…折角訪ねてきてくれたんだ。まずはこちらでもてなしをさせてくれ」
「もてなし?」
「ああ、少し待ってくれ。客間に案内するよ。バードン、近くにいるか?」
ブリットの疑問にボクは肯き、バードンを呼ぶ。すると音も無しに「さっきから待機しておりますよ」と柱の影から姿を現した。気配を完全に消していたな…。バードンとはヴァイスの部下の老人だ。その実力の全ては把握していないが、レミーの話からヴァイスを100だとするとバードンは80、レミーは10といった能力差らしい。ここに人間の冒険者が入ると0.5程度なのだとか…。ヴァイスって強かったんだなぁ。
そんな考え事から我に返り、ボクは改めてバードンに案内を頼む。
「ええ、ミズキ様の頼みとあれば従いましょう。お客人、どうぞこちらへ」
バードンはブリット達に上履き用のスリッパを用意する。しかしブリット達は蒼い顔をして硬直していた。
「どうした?」
「…フッ、オレはこれでも冒険者のギルド長だ。そこらの冒険者とはレベルが違う。そのオレがこんな老人の気配を感じ取れないとはな…」
「ミズキ、私も同じ気持ちだ。キミはどう感じているか分からないが、老人が姿を現した瞬間、まるで竜種と同じ空間にいるかのような圧迫感さえ受ける」
ブリットとクリスは明らかにバードンを警戒していた。ボクはそんな気配を感じなかったが、バードンは姿を現した瞬間力を放出させていたらしい。
「…バードン、客をからかわないでくれ。それと皆、先に言っておくがバードンも魔族だ。でも危険はないから安心してくれ」
ボクのその言葉にブリット達は老人の正体に合点がいったらしく「成る程な」と肯いた。
未だバードンに警戒心を纏わせていた4人だったが、客間に到着するとバードンはまるで煙のように消えたらしい。それをボクは人数分の水着と浴衣を準備して渡しに来た時にそう聞いた。
「この布は何だい?」
クリスは水着を手に取って訊ねる。そうか、この世界には水着の文化がまだ誕生してないのかもしれない。
「簡単にいえば、水中用の装備ってところかな。家には風呂もあるんだ。本来なら水着は無粋なんだが、今回は女性もいる事だしな」
「お…お風呂…ですって?」
「あれ、風呂ってこの世界にまだ無いのか?」
「い、いえ、王宮に王族専用の浴場はありますが…そんな高価なもの、貴族でさえもてませんよ!」
サラサが驚いた表情でそう説明してくれた。なら是非とも温泉を体験してもらいたいものだ。クリスも「まさか旅先で風呂に入れるとはな…」と苦笑していた。
◆◇◆◇
「これは…素晴らしい眺めだな」
露天風呂からリュアラの街が一望できる眺めは、王族のクリスをしても感嘆の声が漏れた。
「風呂初心者、まずは桶で湯を掬って一度体を洗い流してくれ」
ボクは皆に入浴の際のマナーを教える。ブリット、サラサ、ボルクスは初めての入浴になるらしく、湯気立ち込める風呂を前にして年甲斐もなくはしゃいでいた。
「ミ…ミズキ、ど、どこから湯につけたら良いんだ!?」
「ブリット殿、このお湯変です! お肌がすべすべになりますよ!」
楽しんでもらえているようで何よりだ。
ボクらは皆に風呂に浸かり、心地よい風を肌に受ける。どこかの誰かが言っていたらしいが、風呂は命の洗濯だという。この世界の一般庶民は精々濡れタオルで体を拭くだけであり、下々の人間はそれさえも叶わない。他の者にもこの気持ち良さを感じてもらいたいものだ。
周りの様子を窺うとブリット、サラサ、ボルクスの3人は表情を蕩けさせていた。いつも無骨で無表情に近いボルクスまでも蕩けさせるとは、温泉恐るべし。だがただひとり、クリスだけがじっと湯を見つめていた。
「クリス、どうかしたか?」
「…いや、私の知る風呂とはどうやら違うようなのでな。王宮での湯はここのように肌触りが柔らかくない。いわゆる普通の熱した湯だ。この湯には何か混ぜてあるのか?」
「地中の源泉から引っ張ってるから、普通の湯とは違うだろうな。確か…この肌触りだとアルカリ性単純温泉といったところか。結構深度深いところの源泉だから、濃度も高いと思う」
「…地中? つまりは地下から噴出した湯という事か。キミの事だから、またやったね?」
「う…」
クリスは珍しく悪い顔をしてボクを一瞥する。
「…白状する、魔力で地下3000メートル掘った」
「はぁ、全くキミという男は…」
クリスにため息をつかれ、ボクは苦笑する。それにつられてクリスも苦笑しかけた直後、クリスは急に立ち上がった。
「…どうした?」
「…そんな事が…傷が…消えている…!?」
「傷?」
クリスは先日魔獣との戦いで左腕を負傷したらしい。だが然程大きな傷でなかった事もあり、治療をせずに放置した。その傷がいつのまにか消えていたのだという。ボクもどういうことかと考えていると、クリスは何を思ったか、自らの指を歯で噛む。相当強く噛んだのか、指には血が滲んでいた。
クリスはその指に湯をかける。
「やはり…傷が消えた。どうやらここの湯は傷を癒す効能があるらしいな」
地球での温泉でも、一般的に幾つかの効能が認められていた。健康増進や疲労回復、それらと同じ類のものなのだろうか。
◆◇◆◇
温泉から出たブリット達を待っていたのは料理だ。料理はリアとレミーが担当している。ボクが教えた料理もすんなりと習得し、自身のアイデアでアレンジを施すなどすぐに上達していった。
「ミズキ、見てくれ! このすべすべのお肌! 何だか少し若返った気分だ!」
「…温泉によっては美人の湯と呼ばれるものもあるから、もしかしたらそういう効能もあるかもしれないな」
「…! 決めた、後でまた入りに行ってくるぞ!」
サラサはすっかり温泉気分を満喫しているようだ。だがここからは真面目な話をしたい。ブリットやクリスは立場上、羽目を外し過ぎずにいてくれていた。
「ボクはこの世界でどうしても成功させたい夢がある。協力を申し出るつもりはないが、それを聞いて皆がボクをどうするか聞かせてほしい」
ボクの真剣な表情に、今まで浮かれていたサラサも生唾を飲んで姿勢良く座った。
「…夢か。ミズキ、お前の魔力があれば大体の事は叶う。まぁ、あまり大事にされるのは困るが、お前がそこまで言うんだ。その夢というのは、とんでもない事なんだろうな」
ブリットは一拍置いて「聞かせてくれ」と催促した。
「ボクの夢は人間と魔族の共存だ。その為の架け橋を作りたいと思っている。今魔族を傍に置いているのも、それが理由だ」
その言葉に衝撃を受けたのか、サラサが勢い良く立ち上がった。
「バカな! そんな事は不可能だ!」
「魔族であるレミーも、サラサと同じように断言していたよ。それは仕方ないのかもしれない。長い年月をかけ、互いに相手を色眼鏡で見てしまっている。互いに相容れない存在、戦うべき種族だと…ね。でもボクはそんな色眼鏡なしで魔族を見た。彼らも人間と同じように生活し、同じように哀しみ、同じように笑う。人間と一緒なんだ」
人間の世界で魔族とは血も涙もない魔獣と同じように恐れされている。確かに魔族は人よりも強い体をもち、強い魔力を内包している。それに対する人間側の恐怖は分かるつもりだが、互いに良き隣人となれる可能性もあるのだ。
「…キミの夢に対して、私の意見を述べようか。まず、それが非常に困難である事は理解しているな?」
「…ああ」
「ならば良い。方法としては幾つか存在する。1つは私がこの国の王となること。そうすればキミの夢の手伝いはできるが、これには問題がある。所詮私は第三王子に過ぎず、順当にいけば第一王子のガリアンが王になるだろう。ガリアンは奴隷制度推奨派であるし、魔族は天敵だと考えている口だ」
「…クリスが王になる事が第一条件という事か」
「そうなる。次に…私としては望まないが、国を出て新たな国を建国だ。そこでキミは人間と魔族の共存を謳い、架け橋のモデルケースとなる方法だ」
「成る程…その手もあるか」
「最後に…キミがその絶大な魔力を使い、全てを支配する事だ。前述した建国の極端な例だな。だがこれには多くの血が流れると思ってもらいたい」
クリスが最後に述べた案はヴァイスも提案していたものだ。だがそれは却下。力で無理矢理というのは好まない。
「クリスを王にするか、支配しない方の建国、どちらかだな…」
ボクはため息をついて天井を見上げる。クリスの挙げた支配をボクが選択しなかった事に安堵したのか、クリスの頰が緩んだ。
「…直ぐに決めずとも良い。今は同志を募る期間に充てるのも手だ。それに人間側が解決しても、魔族側が簡単にその話に賛同するとも思えん。ミズキ、キミの選んだ道は果てなく険しい。だが、私は応援させてもらうよ」
クリスはそう言って微笑んだ。ブリットやボルクスも苦笑を浮かべていたが、悪い反応ではなかった。ただひとり、サラサを除いて…。
そう考えた矢先に、本人がマイホームを訪ねに来てくれた。
「…いらっしゃい」
「…一冒険者が住むには場違いな豪邸に、庭に生えた山よりも大きな木。色々と突っ込みたい事はあるが、今回は魔族の話がメインだ」
ブリットだけでなく、クリス達もついてきたのはそういう訳だったか。先日は簡単に報告を済ませただけであったし、詳しい話をする必要はあるだろう。
「そうだな…。だが…折角訪ねてきてくれたんだ。まずはこちらでもてなしをさせてくれ」
「もてなし?」
「ああ、少し待ってくれ。客間に案内するよ。バードン、近くにいるか?」
ブリットの疑問にボクは肯き、バードンを呼ぶ。すると音も無しに「さっきから待機しておりますよ」と柱の影から姿を現した。気配を完全に消していたな…。バードンとはヴァイスの部下の老人だ。その実力の全ては把握していないが、レミーの話からヴァイスを100だとするとバードンは80、レミーは10といった能力差らしい。ここに人間の冒険者が入ると0.5程度なのだとか…。ヴァイスって強かったんだなぁ。
そんな考え事から我に返り、ボクは改めてバードンに案内を頼む。
「ええ、ミズキ様の頼みとあれば従いましょう。お客人、どうぞこちらへ」
バードンはブリット達に上履き用のスリッパを用意する。しかしブリット達は蒼い顔をして硬直していた。
「どうした?」
「…フッ、オレはこれでも冒険者のギルド長だ。そこらの冒険者とはレベルが違う。そのオレがこんな老人の気配を感じ取れないとはな…」
「ミズキ、私も同じ気持ちだ。キミはどう感じているか分からないが、老人が姿を現した瞬間、まるで竜種と同じ空間にいるかのような圧迫感さえ受ける」
ブリットとクリスは明らかにバードンを警戒していた。ボクはそんな気配を感じなかったが、バードンは姿を現した瞬間力を放出させていたらしい。
「…バードン、客をからかわないでくれ。それと皆、先に言っておくがバードンも魔族だ。でも危険はないから安心してくれ」
ボクのその言葉にブリット達は老人の正体に合点がいったらしく「成る程な」と肯いた。
未だバードンに警戒心を纏わせていた4人だったが、客間に到着するとバードンはまるで煙のように消えたらしい。それをボクは人数分の水着と浴衣を準備して渡しに来た時にそう聞いた。
「この布は何だい?」
クリスは水着を手に取って訊ねる。そうか、この世界には水着の文化がまだ誕生してないのかもしれない。
「簡単にいえば、水中用の装備ってところかな。家には風呂もあるんだ。本来なら水着は無粋なんだが、今回は女性もいる事だしな」
「お…お風呂…ですって?」
「あれ、風呂ってこの世界にまだ無いのか?」
「い、いえ、王宮に王族専用の浴場はありますが…そんな高価なもの、貴族でさえもてませんよ!」
サラサが驚いた表情でそう説明してくれた。なら是非とも温泉を体験してもらいたいものだ。クリスも「まさか旅先で風呂に入れるとはな…」と苦笑していた。
◆◇◆◇
「これは…素晴らしい眺めだな」
露天風呂からリュアラの街が一望できる眺めは、王族のクリスをしても感嘆の声が漏れた。
「風呂初心者、まずは桶で湯を掬って一度体を洗い流してくれ」
ボクは皆に入浴の際のマナーを教える。ブリット、サラサ、ボルクスは初めての入浴になるらしく、湯気立ち込める風呂を前にして年甲斐もなくはしゃいでいた。
「ミ…ミズキ、ど、どこから湯につけたら良いんだ!?」
「ブリット殿、このお湯変です! お肌がすべすべになりますよ!」
楽しんでもらえているようで何よりだ。
ボクらは皆に風呂に浸かり、心地よい風を肌に受ける。どこかの誰かが言っていたらしいが、風呂は命の洗濯だという。この世界の一般庶民は精々濡れタオルで体を拭くだけであり、下々の人間はそれさえも叶わない。他の者にもこの気持ち良さを感じてもらいたいものだ。
周りの様子を窺うとブリット、サラサ、ボルクスの3人は表情を蕩けさせていた。いつも無骨で無表情に近いボルクスまでも蕩けさせるとは、温泉恐るべし。だがただひとり、クリスだけがじっと湯を見つめていた。
「クリス、どうかしたか?」
「…いや、私の知る風呂とはどうやら違うようなのでな。王宮での湯はここのように肌触りが柔らかくない。いわゆる普通の熱した湯だ。この湯には何か混ぜてあるのか?」
「地中の源泉から引っ張ってるから、普通の湯とは違うだろうな。確か…この肌触りだとアルカリ性単純温泉といったところか。結構深度深いところの源泉だから、濃度も高いと思う」
「…地中? つまりは地下から噴出した湯という事か。キミの事だから、またやったね?」
「う…」
クリスは珍しく悪い顔をしてボクを一瞥する。
「…白状する、魔力で地下3000メートル掘った」
「はぁ、全くキミという男は…」
クリスにため息をつかれ、ボクは苦笑する。それにつられてクリスも苦笑しかけた直後、クリスは急に立ち上がった。
「…どうした?」
「…そんな事が…傷が…消えている…!?」
「傷?」
クリスは先日魔獣との戦いで左腕を負傷したらしい。だが然程大きな傷でなかった事もあり、治療をせずに放置した。その傷がいつのまにか消えていたのだという。ボクもどういうことかと考えていると、クリスは何を思ったか、自らの指を歯で噛む。相当強く噛んだのか、指には血が滲んでいた。
クリスはその指に湯をかける。
「やはり…傷が消えた。どうやらここの湯は傷を癒す効能があるらしいな」
地球での温泉でも、一般的に幾つかの効能が認められていた。健康増進や疲労回復、それらと同じ類のものなのだろうか。
◆◇◆◇
温泉から出たブリット達を待っていたのは料理だ。料理はリアとレミーが担当している。ボクが教えた料理もすんなりと習得し、自身のアイデアでアレンジを施すなどすぐに上達していった。
「ミズキ、見てくれ! このすべすべのお肌! 何だか少し若返った気分だ!」
「…温泉によっては美人の湯と呼ばれるものもあるから、もしかしたらそういう効能もあるかもしれないな」
「…! 決めた、後でまた入りに行ってくるぞ!」
サラサはすっかり温泉気分を満喫しているようだ。だがここからは真面目な話をしたい。ブリットやクリスは立場上、羽目を外し過ぎずにいてくれていた。
「ボクはこの世界でどうしても成功させたい夢がある。協力を申し出るつもりはないが、それを聞いて皆がボクをどうするか聞かせてほしい」
ボクの真剣な表情に、今まで浮かれていたサラサも生唾を飲んで姿勢良く座った。
「…夢か。ミズキ、お前の魔力があれば大体の事は叶う。まぁ、あまり大事にされるのは困るが、お前がそこまで言うんだ。その夢というのは、とんでもない事なんだろうな」
ブリットは一拍置いて「聞かせてくれ」と催促した。
「ボクの夢は人間と魔族の共存だ。その為の架け橋を作りたいと思っている。今魔族を傍に置いているのも、それが理由だ」
その言葉に衝撃を受けたのか、サラサが勢い良く立ち上がった。
「バカな! そんな事は不可能だ!」
「魔族であるレミーも、サラサと同じように断言していたよ。それは仕方ないのかもしれない。長い年月をかけ、互いに相手を色眼鏡で見てしまっている。互いに相容れない存在、戦うべき種族だと…ね。でもボクはそんな色眼鏡なしで魔族を見た。彼らも人間と同じように生活し、同じように哀しみ、同じように笑う。人間と一緒なんだ」
人間の世界で魔族とは血も涙もない魔獣と同じように恐れされている。確かに魔族は人よりも強い体をもち、強い魔力を内包している。それに対する人間側の恐怖は分かるつもりだが、互いに良き隣人となれる可能性もあるのだ。
「…キミの夢に対して、私の意見を述べようか。まず、それが非常に困難である事は理解しているな?」
「…ああ」
「ならば良い。方法としては幾つか存在する。1つは私がこの国の王となること。そうすればキミの夢の手伝いはできるが、これには問題がある。所詮私は第三王子に過ぎず、順当にいけば第一王子のガリアンが王になるだろう。ガリアンは奴隷制度推奨派であるし、魔族は天敵だと考えている口だ」
「…クリスが王になる事が第一条件という事か」
「そうなる。次に…私としては望まないが、国を出て新たな国を建国だ。そこでキミは人間と魔族の共存を謳い、架け橋のモデルケースとなる方法だ」
「成る程…その手もあるか」
「最後に…キミがその絶大な魔力を使い、全てを支配する事だ。前述した建国の極端な例だな。だがこれには多くの血が流れると思ってもらいたい」
クリスが最後に述べた案はヴァイスも提案していたものだ。だがそれは却下。力で無理矢理というのは好まない。
「クリスを王にするか、支配しない方の建国、どちらかだな…」
ボクはため息をついて天井を見上げる。クリスの挙げた支配をボクが選択しなかった事に安堵したのか、クリスの頰が緩んだ。
「…直ぐに決めずとも良い。今は同志を募る期間に充てるのも手だ。それに人間側が解決しても、魔族側が簡単にその話に賛同するとも思えん。ミズキ、キミの選んだ道は果てなく険しい。だが、私は応援させてもらうよ」
クリスはそう言って微笑んだ。ブリットやボルクスも苦笑を浮かべていたが、悪い反応ではなかった。ただひとり、サラサを除いて…。
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