World’s end guard

食害

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天使の心変わり

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「実験だジルガ、来い」

そう言われて連れてかれた場所は真っ白な部屋。

僕はここに閉じ込められて約20年。
毎日深夜に呼ばれてはここに連れてこられる。

この部屋はどこまでも真っ白で何も無いが、朝の3時になると

「◎△□☆‪✕‬■●」

聞き取れない声と共に真っ白だった部屋が真っ黒になる。

「相変わらず、何を言ってるのかが分からない」

「‪✕‬◎☆○?」

声のようなものは聞き取れるが、それが他言語だということしか分からない。

それを毎日1時間続ける。
これを約20年も続けてきたが、今ひとつ何も分からない。

「今日もだめか………ジルガ、もういい」
「……はい」

終わった。
僕はまたいつもの自分の部屋に戻される。

あの部屋は退屈だ。
変化が何も無い。

「僕の人生ってなんなんだろう」

______________________

「………△◎×?」

「はい、?」

起きたら目の前に天使がいたって言って誰が信じると思う?
とりあえず頭にわっかがあって背中に羽があったし、顔はなんか布が巻かれてて見えなかったけど。


「もしかして3時の暗闇の人物?」
「□◎‪✕‬△」
「いやわかんない」

言語が通じないからいつものあの実験の相手かと思ったけど違うようだ。
ただ本当に言葉が通じないだけだった。

「わ、わかんない、言語わかんない、天使怖」

僕は天使が怖くてベッドの隅に逃げ込んだ。

天使は何か考えた素振りを見せ、近寄ってきた。

「え、くんなくんな、怖い」

ゴツンッッ

「ンギャッ」

おでこぶつけられた、痛い。

「これで分かるか」
「え"っ」
「ちょっとした魔法だ、気にするな」
「いや気にする」

なぜか、天使の言語がやっと分かるようになった(魔法とやらで)

「お前はここで何をしている」

「えっと、何も、?」

「………」

え、何この天使やっぱり怖い

「お、お名前なんて言うのですか、天使さん」

勇気を振り絞って僕は尋ねたけど、

「言うな、と言われている」

「へ、へぇ、そっかぁ、」

断られた。

でも、天使さんって呼ぶことは許されたから僕としては大収穫。
その後すぐにお空に帰っちゃったけど。

また会えるかなぁ。

______________________

「実験だジルガ、来い」

今日も僕は実験に行く。
無意味な1時間のために。


真っ白な部屋。
それ以外は何も無い。
僕と"何か"だけの空間。
いや、研究者たちは見ていると思うけど。

時計の針がカチッとなった。

目の前に黒のモヤ。今日も"アレ"は来た。
「(今日も何か話しかけた方がいいのかな)」

「……ィ……ア……イ」
「、?愛?」

なんだろう。
聞いてはいけない気がする。


「は……ぁ……」
「ぅ、ウゥ、」

本能が聞いちゃいけないと、警告を鳴らしてくる。


でも、でもでもでもでもでも
それでも僕は聞きたい。
20年も無駄な時間だったんだ。
彼は一体何で、この実験の意味はなんだということを、!

「…すた、……ぃ、」
「もっと、もっと、!!!」

「ぃ……あ…」
「いあ、?」

「は、………す…タァ」

「はす、た、あ、?」

"はすたぁ"

「ッ!?」

そう言い残して目の前のモヤは消えた。

「1時間だったぞ、実験は終了だ。」
「……た、…ァ」
「どうしたジルガ、?」

「縺ッ縺吶◆縺」
「ジルガ!!どうした!!」

"◎△△□◎☆☆○○!!!"

「いあ!いあ!はすたぁ!!!!」

頭では分かっているのに、次々と口から声が出てくるのが止められない。

「ジルガの精神状態を確認しろ!!早く!!!」
「まさか、あのモヤが、、」

いや、トメタラダメダ

「いあ!いあ!!はすたぁ!!」

________________
目が覚めたら下半身がタコになってたって話でもするかい。

「実験成功だ。おめでとうジルガ」
「?」

下半身をタコにするためだけに20年も僕は何をしていた?

「君はこれで神になった」
「タコの?」

研究者は何も言わなかった。

「次の実験にうつろうか、次は、」


ガシャンッッッ


突然、ベッドの近くにあった窓ガラスが割れて何かが飛び込んできた。

「あ、」

気づけば自分の足元に研究者の首が転がってた。

"オイシソウ、タベチャエ"

「……いただきます」


ガリッボキボキボキッバリバリグチャッ

「……」
入ってきたのは天使だった。
でも天使は僕の衝動をとめなかった。
なんなら、
「いいぞ、もっと食え、この国がお前の餌だ」

もっと食え、だってさ。
お腹すいちゃうよ。

「へへ、天使様の羽もキラキラで、美味しそーだね、」

"アジミシタイネ!"
 "アジミナンテダメ!タベチャオ!"

「そうだな」

え、それだけ、?
ビックリしたり、怯えたりしないの

「そんな感情は俺には無い」

ふーん、欠損天使さん?

「どうとでも言え」

気づけば僕は声を出さなくても会話できるようになっていた。

____________________
今日も元気にご飯を食べていた。
悲鳴をあげるご飯はすっごく美味しくて、体以外にもどっかが満たされる。

赤はすき。
食欲がそそられる色だから。


ガシャンッッッ


「邪魔するぞ」

毎回ガラス壊さないでくれる、?

「逃げるぞ」

いやいや話聞いてた?

「…………」

天使さんは僕を担ぐとものすごい速度で走った。

まって、何この速度!!死んじゃうから!!もうちょっと緩く!!!ねぇ!!!!

「うるさい黙れ、舌を噛んで死ぬぞ」

ヒェ、



死因が喋りすぎて舌を噛んで死亡とか嫌すぎる。

天使さんは飛ぶことなく、ただひたすら走り続けた。

その間僕はずっと黙ってたわけだけど、
何かが天使さんを追いかけている、ということだけは何となくわかった。

____________________

とある山の中で天使様は足を止めた。

「いるか、ガルレシア」

「ええ、いますとも」

ガルレシアと呼ばれた人(?)は木の影から顔をのぞかせた。

「すぐそこに追っ手が来ている、逃げる道はできたか」

「それはもう随分と前に、、ですが、本当によろしいのですか?」

「何がだ」

一瞬、ピリッとした空気になった

「別の世界に逃げたところで彼らは追いかけてくるでしょう。それでも、それを連れて行くと?」

ヒュンッッッ

ガルレシアの首に天使さんの剣が向けられた。
「それ、とは、誰の事だ」

「いや、これは失敬、そちらの"神様"は連れていくほどの価値があると、?」

「跳ぶのにその問いが必要なら答えるが、?」

ガルレシアはやれやれと言った態度で本を開き始めた。

世界が反転する
空気が変わる
頭から何かが抜け落ちていく感覚



そうか、これは記憶か

記憶が落ちているのか


「ジルガ、お前は跳ぶ時に記憶を忘れるだろうが、名前だけは教えてやるから覚えろ」

天使さんって呼ぶのももう終わりってこと?

「…………そうだな、俺は"グレア"」

グレア・ラウガロン


かっこいい名前。

「そうか?」

そうだよ。
あ、そうだ、じゃあ僕も

「なんだ、言ってみろ」


もうちょっとさ、人みたいに感情もってよ。
人形みたいな感じで寂しいや。

「善処しよう」

そういうところだぞ。


____________________

目が覚めたら目の前に色違いの自分がいた話でもしようか。


    
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