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第1章 私はただ平穏に暮らしたいだけなのに!
5 縫物
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昼食後、男の子達は村の共有畑の手伝いに行き、女の子達は昼食の片付けの手伝いをする。
片付けが終わった後は、女の子みんなで孤児院の掃除をする。掃除は手作りの箒で部屋の隅々を綺麗に履いてゴミを外へ出す。室内でも土足で生活するため土が多く入り込むから、毎日土を掃き出さなくてはいけない。
箒は近くの森で採取した材料で自分が使う箒は自分で作製する。私は太めの長い木の枝の先に小さくて細い小枝を紐で縛っている。これは大きなゴミしか履けず、小さなゴミは取り零してしまう。私の後を太めの木の枝に小枝よりも細く柔らかい草の茎を巻き付けた箒で几帳面にマリーが履いていく。その後を糸のように細かい葉がたくさん付いた乾燥したホウキグサでその後を履いていく。さらにその後を軽いシダのような葉で小さな女の子が履く真似をしながら後に続く。
2階の子ども達の部屋と廊下と階段と1階の食堂兼居間と台所を履き終えると、次は縫い物の時間だ。この村にはお店が存在しない。行商もやって来ない。領主に税として村の収穫物を納め、領主がそれをお金や別の品物に変える。生活に必要な物は全て領主から村長へ渡され、村長から村人へ支給される。買い物が出来ない、する必要がないからお金も必要ない。この村ではお金には何の価値も無い。
基本的に自給自足で、足りない物は村長から毎年決まった品物が決まった時期に支給される。しかし、支給される物は素材のままなので、加工等は自分達でやらなくてはいけない。
洋服や下着等が最たるもの。布と糸で支給されるから、服や下着に仕立てなくてはいけない。ドレスを縫う訳ではないから、それ程難しい技術を求められる事はない。
この村にいる限りは衣食住は保証されているから、自由になるお金が無くても特に不満は無いようだ。
私はシスター見習いで、衣食住の保証はされているだけで、給金はもらっていない。シスターは村人ではなく、領主に雇われている公務員みたいなものらしいので、一人前のシスターになれば給金が出る。
街の職人などの弟子は16歳になるまでは見習いで仕事を教えて貰っている、親方に養ってもらっている、という考えであり、どれだけこき使われても給金は貰えない。16歳になってやっと一人前と認められ、給金がもらえるようになる。弟子を逃さないための酷いルールだと思う。
私も16歳になったらシスター見習いではなく、一人前のシスターと認められ、給金がもらえるようになるらしい。でも、この村ではいくら稼いでも何も買えない。一人前のシスターになると、村から仕事で出る機会もあるから、いつかは買い物も出来るだろう。しかし、今の所私は無一文だ。特に困ることは無いので、不満は無い。
今日は下着を縫う。針は危ないから、6歳以下の女の子と8歳のエマを子守として付けて外に遊びに出てもらう。残った女の子達と食堂兼居間で縫い物をする。
「そこはこういうふうに縫うのよ。ほら、よく見て」
「シスタールリエラ、よく分からないよ。もっと言葉で説明してよ!」
「見てたら分かるでしょ?ほら、ここをこうして、こうやってこうよ」
「え~と、ここをこう?」
「違う違う。ここをこうしてこうやってこう!」
「だから、わからない!!!」
見かねたマリーが私と交代して、丁寧に言葉とゆっくりとした手つきで分かりやすく説明しながら教えてくれた。
私はどうも言葉で説明するのが苦手だ。感覚的になんとなく理解していることが多いから、詳しく分かりやすく言葉で上手に説明ができない。
このままではシスター失格なので、頑張って言葉で説明しようと努力はしているが、無意識のうちに途中で「見て理解して」となってしまう。この癖は早く直さなくてはいけない。
特に縫い物は得意ではないので、上手く説明できない。マリーの方が私よりもよっぽど上手に綺麗に縫える。私は料理のほうが得意だから仕方ない。でも、料理のときも、感覚でやっていることが多いから、上手く言葉で説明できないことが多い。本当に困った性格だ。私は結構大雑把な人間だと再認識して落ち込む。
子どもたちはみんなマリーの方へ教えてもらいに行ってしまったから、私は一人せっせと手を動かして下着を縫う。女は将来のことを考えて、男物も女物も縫えるようにならなければいけない。だから、孤児院の男の子の下着と服も孤児院の女の子達で作る。
やはり、縫い目が一定で力加減も一定のものの方が着心地が良いので、縫い物が上手なマリーの縫ったものが人気だ。私のは一見すると綺麗に仕上がっているが、所々で雑な部分があり、ほつれるのが早かったり、縫い目が体に当たって痛かったりするので不人気だ。これでも、縫い物の腕前は年々上達しているが、好きこそものの上手なれ、というように、私はあまり縫い物が好きではないので縫い物が好きなマリーに追い越されて置いてけぼりにされている。
私が初めて縫った下着は雑巾として使われた。それくらい最初は酷い腕前だったから、だいぶ上達した方だと思う。少なくとも、雑巾は雑巾、下着は下着、服は服としての役割を果たす物として縫うことは出来るようになったのだから。
女の子は基本的に自分の服も下着も自分で縫ったものを着る。下手だと自分が困る。縫い目が雑だとすぐにほつれたり、生地が傷んで破けたり、身体に当たって痛かったりと自分の縫製の腕前を肌で直接感じる。縫製の腕前の必要性をその身で感じる。だから、好きでもないけれど、必要性に迫れて、腕前は上がっていった。
片付けが終わった後は、女の子みんなで孤児院の掃除をする。掃除は手作りの箒で部屋の隅々を綺麗に履いてゴミを外へ出す。室内でも土足で生活するため土が多く入り込むから、毎日土を掃き出さなくてはいけない。
箒は近くの森で採取した材料で自分が使う箒は自分で作製する。私は太めの長い木の枝の先に小さくて細い小枝を紐で縛っている。これは大きなゴミしか履けず、小さなゴミは取り零してしまう。私の後を太めの木の枝に小枝よりも細く柔らかい草の茎を巻き付けた箒で几帳面にマリーが履いていく。その後を糸のように細かい葉がたくさん付いた乾燥したホウキグサでその後を履いていく。さらにその後を軽いシダのような葉で小さな女の子が履く真似をしながら後に続く。
2階の子ども達の部屋と廊下と階段と1階の食堂兼居間と台所を履き終えると、次は縫い物の時間だ。この村にはお店が存在しない。行商もやって来ない。領主に税として村の収穫物を納め、領主がそれをお金や別の品物に変える。生活に必要な物は全て領主から村長へ渡され、村長から村人へ支給される。買い物が出来ない、する必要がないからお金も必要ない。この村ではお金には何の価値も無い。
基本的に自給自足で、足りない物は村長から毎年決まった品物が決まった時期に支給される。しかし、支給される物は素材のままなので、加工等は自分達でやらなくてはいけない。
洋服や下着等が最たるもの。布と糸で支給されるから、服や下着に仕立てなくてはいけない。ドレスを縫う訳ではないから、それ程難しい技術を求められる事はない。
この村にいる限りは衣食住は保証されているから、自由になるお金が無くても特に不満は無いようだ。
私はシスター見習いで、衣食住の保証はされているだけで、給金はもらっていない。シスターは村人ではなく、領主に雇われている公務員みたいなものらしいので、一人前のシスターになれば給金が出る。
街の職人などの弟子は16歳になるまでは見習いで仕事を教えて貰っている、親方に養ってもらっている、という考えであり、どれだけこき使われても給金は貰えない。16歳になってやっと一人前と認められ、給金がもらえるようになる。弟子を逃さないための酷いルールだと思う。
私も16歳になったらシスター見習いではなく、一人前のシスターと認められ、給金がもらえるようになるらしい。でも、この村ではいくら稼いでも何も買えない。一人前のシスターになると、村から仕事で出る機会もあるから、いつかは買い物も出来るだろう。しかし、今の所私は無一文だ。特に困ることは無いので、不満は無い。
今日は下着を縫う。針は危ないから、6歳以下の女の子と8歳のエマを子守として付けて外に遊びに出てもらう。残った女の子達と食堂兼居間で縫い物をする。
「そこはこういうふうに縫うのよ。ほら、よく見て」
「シスタールリエラ、よく分からないよ。もっと言葉で説明してよ!」
「見てたら分かるでしょ?ほら、ここをこうして、こうやってこうよ」
「え~と、ここをこう?」
「違う違う。ここをこうしてこうやってこう!」
「だから、わからない!!!」
見かねたマリーが私と交代して、丁寧に言葉とゆっくりとした手つきで分かりやすく説明しながら教えてくれた。
私はどうも言葉で説明するのが苦手だ。感覚的になんとなく理解していることが多いから、詳しく分かりやすく言葉で上手に説明ができない。
このままではシスター失格なので、頑張って言葉で説明しようと努力はしているが、無意識のうちに途中で「見て理解して」となってしまう。この癖は早く直さなくてはいけない。
特に縫い物は得意ではないので、上手く説明できない。マリーの方が私よりもよっぽど上手に綺麗に縫える。私は料理のほうが得意だから仕方ない。でも、料理のときも、感覚でやっていることが多いから、上手く言葉で説明できないことが多い。本当に困った性格だ。私は結構大雑把な人間だと再認識して落ち込む。
子どもたちはみんなマリーの方へ教えてもらいに行ってしまったから、私は一人せっせと手を動かして下着を縫う。女は将来のことを考えて、男物も女物も縫えるようにならなければいけない。だから、孤児院の男の子の下着と服も孤児院の女の子達で作る。
やはり、縫い目が一定で力加減も一定のものの方が着心地が良いので、縫い物が上手なマリーの縫ったものが人気だ。私のは一見すると綺麗に仕上がっているが、所々で雑な部分があり、ほつれるのが早かったり、縫い目が体に当たって痛かったりするので不人気だ。これでも、縫い物の腕前は年々上達しているが、好きこそものの上手なれ、というように、私はあまり縫い物が好きではないので縫い物が好きなマリーに追い越されて置いてけぼりにされている。
私が初めて縫った下着は雑巾として使われた。それくらい最初は酷い腕前だったから、だいぶ上達した方だと思う。少なくとも、雑巾は雑巾、下着は下着、服は服としての役割を果たす物として縫うことは出来るようになったのだから。
女の子は基本的に自分の服も下着も自分で縫ったものを着る。下手だと自分が困る。縫い目が雑だとすぐにほつれたり、生地が傷んで破けたり、身体に当たって痛かったりと自分の縫製の腕前を肌で直接感じる。縫製の腕前の必要性をその身で感じる。だから、好きでもないけれど、必要性に迫れて、腕前は上がっていった。
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