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第1章 私はただ平穏に暮らしたいだけなのに!
12 報告
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その日の夜、子ども達が森であったことを孤児院長のシスターマリナに報告した。
孤児院長は私の長い報告を聞いている間、感情を全く表に出さずに淡々としていた。
「報告ご苦労さま。後のことは私に任せて、子ども達の様子をしっかり見ていてください」
「分かりました」
孤児院長が報告を終えた私の顔をじっとみている。
「あの?何か問題がありましたか?」
私の子ども達への接し方に何か問題があったのか?今の報告に何か不備があったのか?孤児院長の視線を受けて、後暗いことは何もしていないのに、何か失敗しただろうかと不安に駆られる。
「いいえ、何も問題はありませんよ。ただ、貴方も成長したのだと思っていただけ」
「成長……ですか?私が?」
「ええ。昔の貴方なら、私が止めないと今回のようなことがあると怒り狂って村に怒鳴り込みに行こうとするでしょ?」
「そ、そんなことしたことありません!!……確かに、やりそうになったことは何度かありますが……」
子どもの頃は、今回のように明らかに村の子達に非がある場合、私は自分の正義感を振り回し、感情のまま何も考えずに行動することが何度かあった。それで村との大きな問題に発展してしまったこともあった。問題を自分の手に負えないくらいに大きくして、後のことはシスターマリナに丸投げして片付けてもらっていた。
今思い出すと顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。本当に自己中心的で無責任で、周りに迷惑しかかけていない。私の身勝手な行動で得るものは何もない。失うものと問題しか発生しない。非常に迷惑この上ない人間だった。
私が反省して更正できたのはシスターマリナのおかげだ。こんな私を見捨てず、私の起こした問題に適切に対処してくれて、根気強く私を叱って間違っている私の考えを矯正してくれた。
シスターマリナには感謝してもしきれない。足を向けて寝られない。
そんなシスターマリナに成長したと褒められてほんの少し嬉しい。けど、しみじみと成長したと思われる程苦労をかけたのだと考えると、嬉しさよりも申し訳なさが先に立つ。
孤児院長はそんな私の様子を見て微笑みを浮べている。
「村へは私から抗議するので、貴方も子ども達も何もしないように。村からきっと謝罪があるでしょうから、それまでは今回の問題が大きくならないように注意してください」
孤児院から村側に正式に抗議して、村長から違反を犯した子どもを罰してもらう。
村人が罪を犯した時に罰するのは村長の仕事だ。殺人などの刑法に関する重大な罪は領主が裁くので罪人は拘束されて領主のいる領都に連れて行かれるが、村の慣習法のような村の掟に背いたり、勤めを怠ったりしたなどの比較的軽い罪は村長が裁いて罰する責任と権利がある。
今回の件は、最終的に孤児院の子ども達が村の子ども達に譲っているので、村長からの口頭での厳重注意だけで済むだろう。
これが、孤児院の子達が最後まで譲らず、村の子達が強引にルメルを奪った場合、村の掟に背いたということで罰が下されただろう。この場合は1か月間の森への立ち入り禁止だろう。その立ち入り禁止を破った場合、最悪だと村からの一家追放に処される場合もある。
孤児院には「村人と争いを起こさない」「村人との間に問題が生じた場合はシスターに全て報告する」というルールがある。
孤児院の子ども達には、孤児院を守るために村人と問題を起こしてはいけない、と教えた。
村は孤児院が無くても成り立つが、孤児院は村がないと成り立たない。孤児院と村が対立すると困るのはどうしても弱い立場の孤児院側になってしまう。だから、孤児院を守るために村人とは波風立てずに穏便に仲良く過ごそう。
それが表向きの理由。
本当の理由は、孤児院と村が揉めると、村人の首が全員挿げ変わる危険性があるから。
孤児院は確かに村に依存して存在しており、村の付属物でしかない。しかし、孤児院にとっては村さえ存続出来るなら村人が全員替わっても何の問題も無い。
孤児院と村だと村の方が強いと思われているが、実際は逆で、孤児院の方が権力を持っている。正確には村長よりも孤児院長の方が権力を持っている。
孤児院は領主の直轄で管理されており、孤児院長は領の役人であり、領主に直接会って、報告ができる。村は徴税官という領の役人が管理を行なっており、村長は徴税官を通してしか領主とやり取りができない。
孤児院長は領主直属の部下であるのに対し、村長は領主からその土地に住む許可を得た人々の代表者でしかない。
たとえるなら、孤児院長は大会社の社長直属の部下であるのに対し、村長はその大会社の下請けの小さな会社の社長でしかない。
役職は違えど、村長の上司である徴税官と孤児院長は同じ領主の直属の部下だ。孤児院長は村長の頭越しに徴税官と直接話しをすることも出来る。さらに、徴税官の頭越しに領主に直接話しをすることも出来る。
孤児院長には村長を上回るだけの権力がある。勿論、その権力を振り回すようなことは滅多なことではしない。
過去、私の所為でその滅多なことをさせてしまった。
その時は、当時の村長の首が物理的に飛び、5家族計25人の村人が村の居住権を剥奪され村から追放されることになった。
孤児院長は私の長い報告を聞いている間、感情を全く表に出さずに淡々としていた。
「報告ご苦労さま。後のことは私に任せて、子ども達の様子をしっかり見ていてください」
「分かりました」
孤児院長が報告を終えた私の顔をじっとみている。
「あの?何か問題がありましたか?」
私の子ども達への接し方に何か問題があったのか?今の報告に何か不備があったのか?孤児院長の視線を受けて、後暗いことは何もしていないのに、何か失敗しただろうかと不安に駆られる。
「いいえ、何も問題はありませんよ。ただ、貴方も成長したのだと思っていただけ」
「成長……ですか?私が?」
「ええ。昔の貴方なら、私が止めないと今回のようなことがあると怒り狂って村に怒鳴り込みに行こうとするでしょ?」
「そ、そんなことしたことありません!!……確かに、やりそうになったことは何度かありますが……」
子どもの頃は、今回のように明らかに村の子達に非がある場合、私は自分の正義感を振り回し、感情のまま何も考えずに行動することが何度かあった。それで村との大きな問題に発展してしまったこともあった。問題を自分の手に負えないくらいに大きくして、後のことはシスターマリナに丸投げして片付けてもらっていた。
今思い出すと顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。本当に自己中心的で無責任で、周りに迷惑しかかけていない。私の身勝手な行動で得るものは何もない。失うものと問題しか発生しない。非常に迷惑この上ない人間だった。
私が反省して更正できたのはシスターマリナのおかげだ。こんな私を見捨てず、私の起こした問題に適切に対処してくれて、根気強く私を叱って間違っている私の考えを矯正してくれた。
シスターマリナには感謝してもしきれない。足を向けて寝られない。
そんなシスターマリナに成長したと褒められてほんの少し嬉しい。けど、しみじみと成長したと思われる程苦労をかけたのだと考えると、嬉しさよりも申し訳なさが先に立つ。
孤児院長はそんな私の様子を見て微笑みを浮べている。
「村へは私から抗議するので、貴方も子ども達も何もしないように。村からきっと謝罪があるでしょうから、それまでは今回の問題が大きくならないように注意してください」
孤児院から村側に正式に抗議して、村長から違反を犯した子どもを罰してもらう。
村人が罪を犯した時に罰するのは村長の仕事だ。殺人などの刑法に関する重大な罪は領主が裁くので罪人は拘束されて領主のいる領都に連れて行かれるが、村の慣習法のような村の掟に背いたり、勤めを怠ったりしたなどの比較的軽い罪は村長が裁いて罰する責任と権利がある。
今回の件は、最終的に孤児院の子ども達が村の子ども達に譲っているので、村長からの口頭での厳重注意だけで済むだろう。
これが、孤児院の子達が最後まで譲らず、村の子達が強引にルメルを奪った場合、村の掟に背いたということで罰が下されただろう。この場合は1か月間の森への立ち入り禁止だろう。その立ち入り禁止を破った場合、最悪だと村からの一家追放に処される場合もある。
孤児院には「村人と争いを起こさない」「村人との間に問題が生じた場合はシスターに全て報告する」というルールがある。
孤児院の子ども達には、孤児院を守るために村人と問題を起こしてはいけない、と教えた。
村は孤児院が無くても成り立つが、孤児院は村がないと成り立たない。孤児院と村が対立すると困るのはどうしても弱い立場の孤児院側になってしまう。だから、孤児院を守るために村人とは波風立てずに穏便に仲良く過ごそう。
それが表向きの理由。
本当の理由は、孤児院と村が揉めると、村人の首が全員挿げ変わる危険性があるから。
孤児院は確かに村に依存して存在しており、村の付属物でしかない。しかし、孤児院にとっては村さえ存続出来るなら村人が全員替わっても何の問題も無い。
孤児院と村だと村の方が強いと思われているが、実際は逆で、孤児院の方が権力を持っている。正確には村長よりも孤児院長の方が権力を持っている。
孤児院は領主の直轄で管理されており、孤児院長は領の役人であり、領主に直接会って、報告ができる。村は徴税官という領の役人が管理を行なっており、村長は徴税官を通してしか領主とやり取りができない。
孤児院長は領主直属の部下であるのに対し、村長は領主からその土地に住む許可を得た人々の代表者でしかない。
たとえるなら、孤児院長は大会社の社長直属の部下であるのに対し、村長はその大会社の下請けの小さな会社の社長でしかない。
役職は違えど、村長の上司である徴税官と孤児院長は同じ領主の直属の部下だ。孤児院長は村長の頭越しに徴税官と直接話しをすることも出来る。さらに、徴税官の頭越しに領主に直接話しをすることも出来る。
孤児院長には村長を上回るだけの権力がある。勿論、その権力を振り回すようなことは滅多なことではしない。
過去、私の所為でその滅多なことをさせてしまった。
その時は、当時の村長の首が物理的に飛び、5家族計25人の村人が村の居住権を剥奪され村から追放されることになった。
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