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八
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だいぶ計算結果に隔たりがあった。
シグナルが出るまでに二度は交われるものと見込んでいたが、私の終わりは、目前なのかも知れない。
「カイズ」
号泣する彼女の素肌の背中に触れると、触るなと言わんばかりに背中を揺すった。
「椅子に座って、もう、動かないで! 絶対に……」
ここにも、隔たりがあるようだ。
喜びに打ち震える私と、悲しみに打ちひしがれる、彼女。
算段の実行によって発現した反応の、大き過ぎる差。
認識した、私は、誤作動を起こしている。
主人の意思に、大幅に反している。
身体を洗浄し衣類を身に付け、椅子に深く腰掛けて動作を停止する。
動作中に算段の修正を図ったが、遅々として進まない。
充電不可の想定はされていないが、バッテリーの残量不足は想定されている。
ようやく私の中に、自発的に電力を抑えようという意思が生まれた。
頭が熱を、持っている。
大幅な行動の修正を図ったため、プログラムを見直すだけで大変な負荷がかかっている。
消耗したくない。
私は、修正を放棄した。
彼女が私の瞳を目にして嘆くことのないよう、瞼を下ろす。
今さら彼女の意思に忠実に従ったが、手遅れだろう。
翌日早朝、寝室から出た彼女は私の元に静かに近寄ってくる。
「セシム」
恐る恐る、私を呼ぶ声。
「どうしましたか」
「もう、動かなくなったのかと思った」
安堵のため息をついて、彼女がソファに座る気配。
「じっとしてれば、あと半年以上は大丈夫なんでしょう?」
覇気のない声で尋ねてくる。
「私のバッテリーは経年劣化が酷いようです。残量の計算は、あてになりません」
彼女を窺うことができないと、今まで以上に彼女を思いやることができない。
黙り込んだ彼女が、何を思って、何を求めているのか、わからない。
「カイズの意思を無視して、私は取り返しのつかないことをしてしまいました。申し訳ございません」
先の彼女の言葉に従い、ここから動かず、ひたすらに電力の消耗を抑えよう。
新たな命令を受け入れる体制だけを残し、私は彼女に対する管理を全て打ち切る。
退屈極まりない。
その思考も、断ち切った。
シグナルが出るまでに二度は交われるものと見込んでいたが、私の終わりは、目前なのかも知れない。
「カイズ」
号泣する彼女の素肌の背中に触れると、触るなと言わんばかりに背中を揺すった。
「椅子に座って、もう、動かないで! 絶対に……」
ここにも、隔たりがあるようだ。
喜びに打ち震える私と、悲しみに打ちひしがれる、彼女。
算段の実行によって発現した反応の、大き過ぎる差。
認識した、私は、誤作動を起こしている。
主人の意思に、大幅に反している。
身体を洗浄し衣類を身に付け、椅子に深く腰掛けて動作を停止する。
動作中に算段の修正を図ったが、遅々として進まない。
充電不可の想定はされていないが、バッテリーの残量不足は想定されている。
ようやく私の中に、自発的に電力を抑えようという意思が生まれた。
頭が熱を、持っている。
大幅な行動の修正を図ったため、プログラムを見直すだけで大変な負荷がかかっている。
消耗したくない。
私は、修正を放棄した。
彼女が私の瞳を目にして嘆くことのないよう、瞼を下ろす。
今さら彼女の意思に忠実に従ったが、手遅れだろう。
翌日早朝、寝室から出た彼女は私の元に静かに近寄ってくる。
「セシム」
恐る恐る、私を呼ぶ声。
「どうしましたか」
「もう、動かなくなったのかと思った」
安堵のため息をついて、彼女がソファに座る気配。
「じっとしてれば、あと半年以上は大丈夫なんでしょう?」
覇気のない声で尋ねてくる。
「私のバッテリーは経年劣化が酷いようです。残量の計算は、あてになりません」
彼女を窺うことができないと、今まで以上に彼女を思いやることができない。
黙り込んだ彼女が、何を思って、何を求めているのか、わからない。
「カイズの意思を無視して、私は取り返しのつかないことをしてしまいました。申し訳ございません」
先の彼女の言葉に従い、ここから動かず、ひたすらに電力の消耗を抑えよう。
新たな命令を受け入れる体制だけを残し、私は彼女に対する管理を全て打ち切る。
退屈極まりない。
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