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最初の思い出
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結果から言えば、中西が負けた。というか惨敗だった。
まるで景品が竹内の家に行きたがってるとでも言うかのようにアームの中に綺麗に収まっては落ちていく。五百円で二個。さっきは二百円しか使ってないと言うから七百円で三個。化け物だ。
中西はその後もドンドンレボリューションというリズムゲームやストリートドンパチンという格闘ゲーム等で勝負を挑んだがことごとく負けた。完膚なきまでに。
終いには半べそを掻き始めたので、ずっと後ろで観戦をしていた俺が自販機のアイスクリームを三本買ってそのうちの二つを二人に渡した。
俺はチョコチップミント、竹内がチョコレート、中西はクッキー味のアイスクリームを食べる。
「そんなんで元気になれねぇよ…。」なんて言ってたのに半分も食べないうちから元気になっている。
運動部だからという訳ではないが、俺は食べるのが早く、中西は一応落ち込んでる体で食べているためかなり遅い。中西を竹内に任せてトイレに行った。
途中、最近流行っている河童がモチーフの水泳漫画のキーホルダーが取れるクレーンゲームを見つけた。
このタイプは少ない額でもたくさん取れる。そう踏んだ俺は手持ちの小銭を入れ勝負をする。千五百円ほど使ってしまったが確かに三つ分取ることができた。それらを持って二人のもとに戻る。今取ったばかりのキーホルダーを渡す。
「ほら。初ゲーセンの記念。」
手に取ったキーホルダーを見つめる竹内。あまりまじまじと見つめるから渡したこちらが恥ずかしくなる。
「たくさん取ったし要らないかもだけど。」
いい加減照れ臭くなって竹内に言った。
「翔にもらったのが嬉しいんだろ。」
「ちがっ。いや、違わないけど…」
急に体が跳ねたからベンチに置いた戦利品の入った袋を落としそうになって俺が危うく左手で掴む。
予期せず竹内との距離がグッと近くなった。目の前に吸い込まれそうな黒い目が現れる。照れているからか、ビックリしたからか竹内の頬が少しだけ赤く染まっていた。
伝染したみたいに俺まで顔が赤くなる。竹内が目を反らす。
「ありがとう。」
と素っ気ないが少し上擦った声で言った。
「どういたしまして。」
俺もなるべく平静を装って体を起こす。
「これからどうする?」
と問いかけるとスクールバッグからスマホを取り出した中西が何かを思い出したかのようにスッと立ち上がった。
「俺、手伝い頼まれてたんだわ。俺だけ先帰るわ。」
「あ、それなら俺達も…」
「俺だけ先帰るわ。」
ほぼ同時に解散を宣言しようとした俺達に中西が被せて答える。
「まだ明るいし、もう少し遊んでけよ。」
「そうか?」
「期末近いから今のうちだろ。俺はまたゆっくり参加するわ。」
「分かった。気を付けてな。」
「おう、竹内もまた明日な。」
俺と中西が話してるあいだ黙っていたが、決着がつくと竹内が中西に手を振った。
「また明日。」
挨拶する様子が照れくさそうでまだまだ固い。でも最初の刺々した印象はなくなりつつあった。
中西と別れた俺達はもう少しだけ一緒に遊ぶことにしたのだった。
まるで景品が竹内の家に行きたがってるとでも言うかのようにアームの中に綺麗に収まっては落ちていく。五百円で二個。さっきは二百円しか使ってないと言うから七百円で三個。化け物だ。
中西はその後もドンドンレボリューションというリズムゲームやストリートドンパチンという格闘ゲーム等で勝負を挑んだがことごとく負けた。完膚なきまでに。
終いには半べそを掻き始めたので、ずっと後ろで観戦をしていた俺が自販機のアイスクリームを三本買ってそのうちの二つを二人に渡した。
俺はチョコチップミント、竹内がチョコレート、中西はクッキー味のアイスクリームを食べる。
「そんなんで元気になれねぇよ…。」なんて言ってたのに半分も食べないうちから元気になっている。
運動部だからという訳ではないが、俺は食べるのが早く、中西は一応落ち込んでる体で食べているためかなり遅い。中西を竹内に任せてトイレに行った。
途中、最近流行っている河童がモチーフの水泳漫画のキーホルダーが取れるクレーンゲームを見つけた。
このタイプは少ない額でもたくさん取れる。そう踏んだ俺は手持ちの小銭を入れ勝負をする。千五百円ほど使ってしまったが確かに三つ分取ることができた。それらを持って二人のもとに戻る。今取ったばかりのキーホルダーを渡す。
「ほら。初ゲーセンの記念。」
手に取ったキーホルダーを見つめる竹内。あまりまじまじと見つめるから渡したこちらが恥ずかしくなる。
「たくさん取ったし要らないかもだけど。」
いい加減照れ臭くなって竹内に言った。
「翔にもらったのが嬉しいんだろ。」
「ちがっ。いや、違わないけど…」
急に体が跳ねたからベンチに置いた戦利品の入った袋を落としそうになって俺が危うく左手で掴む。
予期せず竹内との距離がグッと近くなった。目の前に吸い込まれそうな黒い目が現れる。照れているからか、ビックリしたからか竹内の頬が少しだけ赤く染まっていた。
伝染したみたいに俺まで顔が赤くなる。竹内が目を反らす。
「ありがとう。」
と素っ気ないが少し上擦った声で言った。
「どういたしまして。」
俺もなるべく平静を装って体を起こす。
「これからどうする?」
と問いかけるとスクールバッグからスマホを取り出した中西が何かを思い出したかのようにスッと立ち上がった。
「俺、手伝い頼まれてたんだわ。俺だけ先帰るわ。」
「あ、それなら俺達も…」
「俺だけ先帰るわ。」
ほぼ同時に解散を宣言しようとした俺達に中西が被せて答える。
「まだ明るいし、もう少し遊んでけよ。」
「そうか?」
「期末近いから今のうちだろ。俺はまたゆっくり参加するわ。」
「分かった。気を付けてな。」
「おう、竹内もまた明日な。」
俺と中西が話してるあいだ黙っていたが、決着がつくと竹内が中西に手を振った。
「また明日。」
挨拶する様子が照れくさそうでまだまだ固い。でも最初の刺々した印象はなくなりつつあった。
中西と別れた俺達はもう少しだけ一緒に遊ぶことにしたのだった。
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