EXTRA STAGE 溺愛ロマンス

国府知里

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EXTRA STAGE10 - Sadame

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 本作はシリーズ2の、「第十七話 ただ、幸せなので……。」のラブエモーションです。
 

 面会を終えて私室に戻るなり、わたしはアデル様を訪ねた。



「アデル様……」

「サダメ様、ご心配をおかけしましたね」

「あ、あの、大丈夫なんですか?」



 アデル様が苦笑を浮かべた。



「突っぱねたところで、あのバウンゼットが簡単に引き下がるようには思えなかったのです。

 押せば余計に反発するのであれば、いっそ引いて取り込み、目の届くところで監視した方がましだと判断しました」

「あ……、そういうことだったんですか……」

「王兵団なら私の配下となりますし、いざというときは、正式にバウンゼットに命を与えることもできます。

 サダメ様のそばをうろつかせるのは心配ですが、それでも他の部署に置くよりは目が届きやすいですから」

「アデル様……。わたし、絶対にアデル様を裏切るようなことはしませんから」

「それは心配していませんよ。サダメ様のそばにはこれまで以上に信頼のおける者を配置するつもりです。

 決して危ない目になどあわせません」



 アデル様が、わたしの手を取ると、その甲にちゅっと口づけした。

 わたしも同じように、アデル様の手の甲にキス……。

 唇を離して、見上げると、アデル様の顔が真っ赤になっていた。



「アデル様……」

「……うれしいですね……。このように、サダメ様からキスをいただけるなんて……。

 うれしくて、今さっきやろうと思っていた仕事の内容が、頭から吹っ飛んでしまいました……」

「え……、あ、ごめんなさい……」

「いえ、とんでもありません……。もうしばらくこの余韻に浸ることといたします……」

「ふふっ……」



 思わず、ふたりで顔を見合わせて笑ってしまう。

 でも、この十カ月余りこんな些細な時間も持てていなかったんだよね。

 なんだか、尊いね。

 当たり前と思っていたことが、ふとしたことでできなくなってしまうことがあるんだね。

 それがわかった今だからこそ、大切にしたい。

 アデル様……。

 大好き……。



 ***



「サダメ、これがミランデルかっ!?」



 落日の獣人の代表として、王兵団の一員となったバウンゼット。

 いの一番に、わたしの部屋を尋ねてきて、今はミランデルに夢中。



「ミランデル、よしよし、いい子だ! さすがは俺の息子だ!」

「えっ!?」



 バウンゼットの一挙手一投足に、みんなピリピリ。

 わたしの隣でアデル様の青筋が、ピキッと浮き出た。



「異なことを……。見ての通り、ミランデルは私とサダメ様の子だが?」

「俺は、サダメとこの子を一生かけて守ると誓った男だ。

 血のつながりはなくても、俺にとってミランデルは紛れもない俺の息子だ」

「……勝手なへ理屈を……」




 ケンネがバウンゼットの隣でミランデルを見てにこにこしながら、バウンゼットに代わって説明をした。

 言語習得が上達したケンネはすでに丁寧な言葉遣いを扱えるまでになっている。



「アデル皇太子、落日の獣人にとって、結婚っていうのは切っても切れない絆なんです。

 男が一度妻や子供とみなした相手は、一生かけて守り、大切に関係を続けていくものです。

 だから、死に別れでもしない限り、落日の獣人が他の誰かとくっつくってことはないんですよ」

「そういうことだ。癪だが、まあ、サダメの第一の夫としてアデル皇太子のことは俺も認めるよ。

 夫の一番の責務は、妻や家族を幸せにすることだからな。

 サダメがアデル皇太子がいなければ幸せでいられないなら、俺はそれを尊重することにしたんだ」

「……昨日は友達でいいと言っていたはずだが……」

「まあまあ。とにかくこれからは俺がふたりをいろいろサポートするってことだよ。

 俺がいて助かったって思うことがきっとたくさんあるぜ。まあ見てなって」

「……」



 アデル様……、言葉を失ってる……。

 妻だけでなく、子どもまで自分のもの扱いされたら、もはやどうしていいものか……。

 憎まれ口さえ出なくなっちゃった……。

 まさかバウンゼットがそこまで主張して来るなんて、わたしも今聞いてびっくりだよ……。

 離れてから改めて知る落日の獣人の慣習。

 彼らが愛情深く、家族を大切にするのは、そういうわけがあったんだね……。

 己で許したことながら、バウンゼットの目に余る振る舞いに、固く理性で己を律しているアデル様。

 そっとアデル様の手を掬った。

 はっとしたように、アデル様がわたしを見る。

 そして、すぐに、きゅっとわたしの手を握り返してくれた。

 その表情には柔らかいものが戻る。

 そう、わたしたちは大丈夫。

 これからもし、またわたしが記憶を失うようなことがあったとてしても、きっとミランデルがまたわたしを呼び戻してくれる。

 わたしたちはきっと大丈夫。

 それに、この世界で、わたしにはまだやるべきことがある。

 落日の獣人と人間との和平への道は、まだ始まったばかり。

 これからの道のりは、きっと簡単じゃない。

 けれど、ここに、誰よりも頼りになるわたしの愛する人がいる。

 わたしひとりではできないことでも、アデル様がいれば、きっと前に進んでいける。

 産後の体力が回復したら、各地の落日の獣人たちの群れを訪ねてみなきゃ。

 その生活環境や自然環境が脅かされていないか確認しなければ。

 エマさんや、この世界の力の源に、この世界の生き物たちの均衡がちゃんととれているのかどうかを報告しないと。

 これは、星渡りの民であるわたしの仕事。

 わたしの夫は、その最たる理解者で協力者でもある。

 本当に、アデル様が頼りなの。

 アデル様が、ふっと笑った。



「まあ、いいだろう……。バウンゼット、お前がどれほどの役に立つのか、これから見せてもらおう。

 人間と獣人とが建設的で平和的な関係を築いていけるのかどうか。

 バウンゼット、そしてケンネ、お前たちの働きに大いに期待する」

「はいっ、もちろんです!」

「おおっ!」



 ***



 それから数カ月。

 体力が戻ってきて、気候も過ごしやすくなってきた。

 そろそろ各地の落日の獣人たちの暮らす環境を調べてみようということで。

 でも、その前に一度、ゲルタ火山のふもとの群れを訪ねることにした。

 ミランデルとリューデルに、群れのみんなにも会ってもらいたいから。

 数週間の準備ののち、数日かけてゲルタ火山へ。

 前回はここへ温泉旅行に来たんだよね。

 なんだかんだいろいろあったけど、群れで暮しているときには何度も温泉に浸かって、結構満喫していたなぁ。

 今回も、ゆっくり浸かれる時間があるといいけど。



「ようこそ、サダメ様、アデル皇太子!」

「お帰りなさい、サダメ!」

「お帰り~っ!」

「わあっ、これがあのときのお腹の子!? かわいいわねぇ!」

「あはっ、笑ったぞ!」

「こっちがリューデルちゃん? まあ、アデル皇太子そっくりじゃない!」

「ほんとだ、ふたりとも父親似なんだなぁ」



 群れのみんなが盛大に迎えてくれた。

 子どもたちも、ミランデルとリューデルを歓迎してくれた。



「ミランデル、ミランデル~ッ!」

「きゃはっ、かわいい!」

「シャラメ、しゃわってもいい?」

「ええ、そっとね」

「リューデル、ふがっ、鼻を塞ぐなよう!」

「ふはっ、それ、俺もやられた!」



 ケンネとバウンゼットは、通訳として長とアデル様やその他の責任者との話し合いの間に立って、役目を果たしている。

 ああ……。

 こんな姿、一年前はきっと、考えられもしなかったはず。

 今はまだ問題が多いけど、一歩ずつ、一歩ずつ、新しい関係性を作っていければいいよね。

 それがきっと、この世界のみんなのためになるはずから……。

 ベラさんとティーダが、飲み物を持ってわたしの隣にやってきた。



「サダメ、これお乳のよく出る薬草を煮出したお茶だよ」

「わぁ、ありがとうございます、ベラさん」

「それにしても、本当にサダメは子持ちだったんだねぇ。こうして見るまで信じられなかったよ」

「まるで、子どもが見どもを産んだみたいだよねぇ」

「えっ、まだそんなに幼く見える?」

「いや、前ここにいたときよりは、しっかりしたように見えるね。なんてったって、ふたりの子の親だもんねぇ」

「前は記憶がなかったしね」

「あはは、確かに」

「そうだった、そうだった。それはそうと、ゆっくりしていけるんだろ? 久々にみんなで温泉に入ろうじゃないの」

「いいですね!」

「あっ、ベラ、それならあそこ!」

「ああ……!」

「ん? あそこって?」



 ティーダが得意そうに笑った。



「ふふっ、実はいつもの温泉とは違う特別な場所があるんだ」

「え、そうなの?」

「そうそう。まあ、本来は一組の男女が初めて夫婦になるときにいく場所なんだけどね」



 ……え?

 そんな場所があるの?

 ティーダがうっとりしたような声を出す。



「星がきれいでねぇ、ものすごくいい場所なんだよ。そこで過ごしていると、若いふたりは知らず知らずいい雰囲気になってねぇ……」

「そう、それで子宝に恵まれるってんで、若い夫婦の間じゃ、特別な場所ってことになってんのさ」

「そうなんですか……」

「特別に、今日はそこへいこうじゃないの!」

「うんうん!」

「わあっ、楽しみ!」



 といったはいいものの、その温泉が結構険しい場所にあるらしく、結局わたしの警護や体力の関係上、今回はあきらめようってことに……。

 ああ……、すごく残念……。

 ベラさんとティーダが、また今度来たときに行こうと慰めてくれた。

 子どもたちが小さいので、お世話の都合もあって、屋敷に帰る時間が来た。

 本当は泊っていきたいのにな……。

 わたしは平気って言ったんだけど、アデル様がまだ落日の獣人たちの暮らしの中に赤ちゃんを置いておくのが不安らしい。

 まさか、食べられちゃうわけじゃあるまいし。

 けど、自分の許容できるところまでの安全を確かめて、それを何度も繰り返していけば、少しずつその境界線だんだんと薄れていくはず。

 次回やその次くらいには、この群れにみんなでお泊りもできるようになるかもしれないよね。



 ***



 屋敷に戻って、わたしはミランデルとリューデルのお世話。

 ミランデルが生まれて記憶を取り戻してから、わたしのお乳は順調だ。

 きっかけは出産なのか、記憶が戻ったことなのかわからないけど、今は自分のお乳を子どもたちにあげられることが、すごくうれしい。

 ケンネじゃないけれど、たくさん飲んで大きくなって欲しいな。

 ふたりとも、お腹いっぱいになって、満足したように眠り始めた。

 こうして並べて見ると、ふたりとも本当にアデル様によく似てる。

 カリナさんがわたしと同じくらいにこにこ、ふくふくした顔で二人を見つめている。



「さあ、こちらはしばらく大丈夫ですわね。サダメ様、ゆっくり温泉に浸かっていらしてくださいませ。

 落日獣の特別な温泉とまでいかないかもしれませんが、こちらの温泉もとてもいいお湯だそうですわ」

「ふふっ、そうね」



 そんなとき、わたしの部屋にアデル様がやってきた。



「サダメ様、あの……」



 アデル様が、ちらっとカリナさんのほうを見た。

 うん?

 カリナさんが腰に手をやり、じとっとアデル様を見る。



「じ、侍女長……」

「……いいですね? 決して、無理をさせてはいけませんよ……!」

「わかっている……!」



 え、なんの話?

 二人の顔を交互に見つめていると、アデル様が頬を染めて、わたしに向きなおった。



「サダメ様、今夜はどうか、私にお背中を流させてくださいませんか?」



 ……えぇっ!?

 い、今のやりとり、そのことだったの?

 あ、そっか……。

 ミランデルが生まれるまで、わたしに触れてはいけない禁令中だったんだ。

 それが今はもう解禁されたっていう事なのね。

 わたしは上目遣いに夫を見る。

 アデル様……。

 アデル様が期待するようにわたしを見つめ返す。

 ふふっ……。

 そんなの、答えはイエスに決まってるじゃない。

 手を伸ばすと、わたしの手をそっとアデル様が迎えてくれた。

 わたしもよ、アデル様。

 前回の旅行の続きがしたい。

 あのときよりも、今の方がこの時間の大切さが身に染みる。

 その思いを、いっぱいいっぱい確かめ合いたい……。

 アデル様、今夜はふたりで心行くまで楽しもうね。

 これぞ温泉旅行。




 ***



 それから間もなく、わたしはあの日と同じ温泉へ……。

 湯煙の中を進むと、アデル様の大きな背中が見えた……。

 わたしの足音に、アデル様がはっと振り向いた。



「サダメ様……」

「アデル様、おまたせ……きゃっ!」



 濡れた床に足が滑って、ぺたんっ!

 派手に転びはしなかったものの、尻もち着いちゃった!

 いてて……。



「サダメ様っ!」



 アデル様が大慌てでやってきた。



「大丈夫ですか!?」

「う、うん、大丈夫です。ごめんなさい、ちょっと浮かれてよそ見しちゃいました……」



 照れ笑いするわたしをアデル様が真剣な顔つきでタオルで包み、ひょいと抱き上げた。



「私がお運びします。しっかりつかまっていてください」

「ありがとうございます……」



 大きな湯舟の縁に座らせると、アデル様がじっとわたしを見つめた。



「本当に大丈夫ですか? 痛むところは?」

「えっと……」



 そっと腰回りを確認すると、少し腿の外側が赤くなっていた。

 でも、これくらい平気。



「うん、大丈夫です」

「確認してもよろしいですか?」

「でも、本当にそんな痛くないし」

「見せてください。サダメ様に無理はさせないと誓いました」



 そ、そんなに真剣に顔されちゃうとな……。

 わたしはそっと立ち上がり、まとっていたタオルをほどきながら、アデル様に背中を向けた。

 肩越しに声をかける。



「あの……、どこか血とか出てます……?」


 ……ん?

 しばらくしても返事がない。

 前手にタオルを持ちながら振り返ると、アデル様が立ち尽くしてこちらを見ていた。



「アデル様?」

「……」

「あの、アデル様?」

「……はあ……。申し訳ありません……。あまりの美しさに、言葉を失っておりました……」

「え……?」

「はあ、なんという神々しい後ろ姿でしょう……。あまりの景色に、息をするのも忘れていたくらいです」



 アデル様がぽうっとなって、顔に手をやり、にわかにうつむく。

 えと、あの……。

 それで、怪我の様子はどうなったの……?



「あ、あのー……」

「はっ、申し訳ありませんっ……。少し赤くなっていますが、傷はないようです。

 サダメ様、さあ、こちらにどうぞ。ゆっくり湯につかってください。

 ……でも、このように湯けむりで視界の悪い中では危のうございます。

 もうよそ見をしてはいけませんよ」

「あ、はい、そうですよね。気を付けます」



 ふたりで並んで湯につかると、アデル様がそっと手を握り、恋人つなぎをしてきた。

 ふふっ、なんか、こういうのうれしくて……。

 お湯もたっぷりで気持ちいいし、空気もいいし、手も足も延ばせて、はああ~、体も心もほぐれるぅ……。

 ううん、最高……!



「やっぱり温泉っていいですね」

「はい、サダメ様とこうして二人きりでいられることが、私にとっては本当に夢のようです」

「ふふっ、それ、前ここに来たときも同じこと言ってましたね」

「ええ、これからもきっと何度でも同じ様に思うと思います」

「あっ、アデル様、見て! 一番星が」



 湯けむりの合間から覗く空に、夕暮れを知らせる一番星が輝き始めていた。

 はあ……。

 こんな開放的な露天風呂でゆっくり過ごせるなんて、お城暮らしじゃ考えられないよ。

 お城にもいっそ露天風呂を作ってもらえたらいいのに。

 あっ、でも、温泉が湧いてないから、単なる大浴場の建設ってだけじゃ、国家予算出ないよねぇ。

 今の入浴文化じゃ、わたしのわがままみたいになっちゃうだろうし……。

 今の前時代的な入浴スタイルに慣れてきたとはいえ、やっぱりお風呂文化はもう少し近代的に進化させてもいい気がする……。

 もしやるとすると、建物の中に上水と下水の水道管を引くことになるよね?

 それに大量の湯を沸かすボイラーとかの装置もいるってことに。

 う~ん、すごいお金かかりそう。

 でも、見積もりを取るだけでも……、帰ったら匠の加護を持つ工房に相談してみようかな。

 星を見つめながらそんなことを考えていると、恋人つなぎの手が、ぎゅっと握られた。



「ん?」



 アデル様のほうを見ると、じっとわたしを見つめて、湯加減なのかそれともいつもの神格化バイアスなのか、頬を染めていた。

 あれ、なんかちょっと拗ねているみたいな……。



「よそ見をしてはいけないと申し上げたはずですが……」



 え……。

 アデル様が手をつないだまま、一番星を隠すようにわたしの前に回り込んだ。

 自分からよそ見するなってこと……?

 アデル様に、胸がきゅん。

 なにその、ひとり占め要求。

 思わず、笑みがこぼれる。



「わたしはずっと、星よりもアデル様に夢中です」

「そのお言葉、疑うわけではありませんが、記憶をなくされていた間は、本当に毎日私はさみしかったのですよ」



 そっと手を伸ばし、わたしの頬に触れるアデル様。

 その手に私も頬を摺り寄せて、手を重ねた。

 アデル様がこんなふうに気持ちを伝えてくれるなんて……。

 そうだよね、いつもは皇太子として気を張り詰めて、弱みなんておくびにも見せない。

 だけど、本当はずっと、わたしを求めていてくれたんだよね……?

 そっとアデル様の後ろ首に手を伸ばし、そっと顔を近づける。

 答えるように、アデル様と優しいキス……。

 すっごく柔らかくて、甘い。

 わたしを大切にしてくれているのが伝わってくる。

 アデル様がゆっくりとわたしを引き寄せ、わたしたちの素肌はぴったりと寄り添った。

 密着する肌と肌の心地よさ……。

 アデル様の弾力のある胸や腿の筋肉。

 たくましい腕のライン。

 ――ぴくっ。

 脚に触れた、上にもたげたアデル様。

 アデル様が、はっとキスを止めて小さく謝った。



「も、申し訳ありません。あまりに久しぶりで、お、抑えがきかず……」

「アデル様……」



 見上げると、アデル様が羞恥と興奮と節度の間で揺れながら、顔をそむけた。

 こんな顔……。

 見せられて放っておけるわけないよ……?

 わたしは湯の中に手を沈めて、持ち上がりかけているアデル様をそっと包んだ。

 アデル様が驚いたようにわたしを見る。



「サ、サダメ様……!?」

「これまでずっとさみしくさせてしまってごめんなさい。でも今日はずっとアデル様のことを見てるから……」

「あっ……!」



 竿を優しく掴んだだけでアデル様はびくりと震えて甘い息を吐く。

 わ、すごい、敏感……。

 それとも、そこまで気持ちが高ぶってたの?

 わたしの愛撫をまだ戸惑っているのか、アデル様はどうしたらいいのかわからないみたいに堪えてる。

 そんなに固くならないで、気持ちよくなって欲しいのに……。

 わたしは上下にさすりながら、アデル様の反応に注視する。

 どんなふうにしたら、喜んでくれるんだろう?

 ゆっくりと優しくこすり上げ……、頭を指ですりすり……、袋もやわやわと握ってみる……。

 アデル様が次第にうっとりとしてきて、開いた口から熱い吐息を漏らし始めた。



「はあ……、ん、はあ……っ、はあぁ……」

「アデル様……、こっちを見て?」

「サ、サダメ、様……」

「どんなふうにして欲しい? どこが好きか、言って?」

「……はあ、はあ……、そんな……」



 理性がまだアデル様を押しとどめていて、全部が解放できていないみたいで……。

 わたしはちょっとだけ、強く握ってみた。



「――んあ……っ!」



 アデル様が強く震え、わたしに体を押し付けてきた。

 その顔が、甘くとろけ始めている。

 うわあ……、アデル様のこんな顔……。

 わたしがこんな顔をさせているなんて……。

 いつもは逆だよね……?

 でも、こんなアデル様も好きかも……。

 わたしはキスをして、アデル様の唇を甘噛みしてみる。

 キスをやめて見つめると、アデル様が目じりを真っ赤に染めて、荒く息を吹きかけてくる。



「はあ、はあ……サダメ様……」

「強いのが好きなの?」

「う……」

「言って? アデル様に気持ちよくなって欲しいの……」

「……は、い……。もっと強く……」



 アデル様が甘えるみたいな小さな声で囁く。

 くす、かわいい……。

 ぎゅっと力を入れて、竿を摩擦する。

 アデル様が首をのけぞらせて、はあっとため息を吐いた。

 感じてる……。

 アデル様が感じていると、わたしもだんだん興奮してくる。

 もっと感じさせたい。

 もっと喜ばせたい。

 そんな気持ちが湧いてくる。



「ここ? アデル様」

「あっ、はあ、……ああ、う……。はい……、うぅ、いいです……!」

「いっぱいしてあげる」

「あう……っ、うう、ん、はあ、はあ~っ……、あっ、あ」

「ここも好き?」

「うん……っ、ああ、サダメ様……っ、すごく、いい、です……っ」

「わかった」

「あっ、あっ、うっ! サ、サダメ様、いく……っ!」



 アデル様が一段と声を上げて、強張りながらわたしにもたれかかった。

 ぶるぶるっと震えたかと思うと、わたしたちの間の湯に白いものがふわふわと浮いてきた。

 アデル様が、うっとりと、肩で息をしている。

 よかった、気持ちよさそう……。



「サ……、サダメ様……」



 わたしはそっと抱き寄せて頭の後ろを撫でる。



「これからはさみしさを我慢しないで? わたしも努力するから」

「サダメ様……」



 アデル様がぎゅっと、わたしを抱きしめて、首に顔をうずめた。



「……ああ、わたしはなんと幸せ者なのでしょうか……。それとも、夢かまぼろしでも見ているのでしょうか……?」

「あれ? よそ見って、夢まぼろしも入ります?」



 そういうと、アデル様が笑った。



「ふふっ……。申し訳ありません、もうよそ見はいたしません」



 なんでもかんでも神格化バイアスにされちゃったら、わたしも困っちゃうよ、アデル様。

 だってわたしは、神様でもなんでもないただの普通の人間だもん。

 唇を寄せて、もう一度キス。

 その距離のまま、わたしは囁く。



「今度は一緒に気持ちよくなりたい……」



 アデル様が優しく口元を緩めた。

 甘い微笑み……。

 甘いキス……。

 今夜は心行くまで、ふたりで喜びを味わおうね……。



 
 溺愛ロマンス EXTRA STAGE10 - Sadame ~これサダシリーズ2 EXTRA STAGE~
 を、ご愛読ありがとうございました。
 本編をお楽しみいただいた読者様にも、本作からお楽しみ板だた皆様にも、心より感謝申し上げます。シリーズ2の終盤、サダメ目線でのラブエモーションでした。お楽しみいただけたでしょうか? 引き続き、アデル目線でのラブエモーションをどうぞお楽しみください。また、本編をまだ読んでないよと言う読者様は、本編もぜひお楽しみくださいませ! 作者マイページから「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届きますので、こちらもご活用ください。

 ▶本編はこちら。マイページからご覧いただけます。
 これサダシリーズ1【これぞ我がサダメ】
 これサダシリーズ2【これぞ我が温泉旅行】

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 こちらもぜひお楽しみください。

 
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