サンドプレイシュミレーション

国府知里

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Simulation Introduction

十二、エモノオ領(2)

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 この世のすべての大地とすべての海をいだく強大なる「居神国」。
 居神国はさる惑星における人類の平行世界。
 最も近しい例を上げれば、日本国における弥生時代にも似た原始国家である。
 大きく違うのは、徹底した女系王が管理する女性優位の社会であること。
 政治的権力と社会的優位性を持つこと、また継承できるのは女のみ。
 男は子種をもたらすだけの家畜である。……



 居神国に属するエモノオ国。
 ここに生きるホッシルという男がこの物語の主人公である。















 遊牧の民が暮らすエモノオ領の中で最も大きな一派であるゴルダ族。
 コルダ族長の元には周辺に住む集団からあらゆる歎願が舞い込む。
 雨風にやられて壊れてしまったテントを作り直すための木材や皮、それを加工する人員の融通。
 年老いた母や病にかかった家族にのために貴重な薬や滋養のある珍味を譲って欲しいという陳情。
 厳しい自然環境で生き抜くために必須となる生活の基盤や薬は、一族間同士で取引をすることが常であった。
 あるとき、コルダ族長の元に山二つ超えた先の遊牧民の使いがやってきた。
 名前をキニという。
 三十代代半ばの信の厚そうな女であった。

「コルダ族長様、どうかお助け下さい。
 先日の大雨で岩が崩れ、羊の餌場までの道が塞がってしまったのです。
 あの餌場がなければ、我が一家だけでなく餌場を利用している複数の一家の羊たちが飢えてしまいます」
「はるばる山を越えてきたキニ殿の願いをどうして断れようか。必要な人足はいかほどか」
「若く強い働き手を十人ほど。お礼に、今後五年新しく生まれた羊と同じ数だけの羊を献上差し上げたく思いますが、いかがでしょうか?」
「よかろう、よかろう」

 こうして大きなコルダ一族はさらに大きな力と富を蓄えていくのであった。
 キニがふいに後ろを向いて、一人の男を前に差し出した。
 男は頭からすっかり布をかぶせられている。

「コルダ族長様、ここにおりますのは我が一族で育てた選りすぐりの種でございます。
 コルダ族長様に快くお引き受けいただきましたお礼といたしまして、まずはこれを献上したく思います」
「男は他の家からも度々送られてきて不足はしておらぬ。
 しかし、わざわざ連れてきたということは、それなりの見栄えがありそうだな」
「見栄えだけではありません。
 わたしどもの暮らす地域はこちらよりさらに山岳の険しい土地。
 このようなこともあろうかと、見栄えのよい男にさまざまな技をとくと仕込んでございます。
 きっと、御一同をこのホッシルがご満足させるでしょう」
「その手の話はよう聞くが、さほど役に立ったためしはないが、まあいいだろう。おいていくがいい」
「はい。ホッシルの種が男をなしたときには、そのひと粒をまた我らに下していただきたく思います」
「ああ、よいだろう」

 こうして女たちは男を交渉や友好のための手段と使うことで、社会的なつながりを築こうとするのである。
 コルダのいう通り、このよう磨いた男を捧げものとして使うことはあったが、実際問題、男の価値は女を種付けできるか否かである。
 捧げられた男がうまく生き残っていけるかどうかは、天の采配に委ねられていた。
 ところが、このホッシルという男。
 コルダが布をはがしてみるや、誰もがはっとするほどの、圧倒的な色気と美貌の持ち主であった。
 しかも、とくと仕込まれてというという話は嘘ではなかった。
 コルダ一族の女たちは一度肌を合わせれば、みな揃いも揃ってその手練手管に夢中になってしまった。
 ホッシルには天性の資質が備わっているのか、どんな女も、どんな方法でも、そしてまた何回でも果てることなく、女たちを飽きることなく楽しませた。
 さらにまた、天の幸いともいうべきか、生まれた子どもには女が多く、ホッシルはコルダ一族に囲われているどの男よりも重宝されるようになった。
 時には、他の家からホッシルを貸して欲しいという歎願が来るほどであった。
 ホッシルの立場は、男でありながらその立場以上に、女たちに愛され可愛がられ、他の男とは比べ物にならないくらいに安定した居心地のいい物になっていた。
 今夜はふたりの女をまとめて相手にしている。

「……はあ、はあ、ホッシル……、今度はわたしよ……」
「はい、ケイラ様……」
「あ、ああん、だめよ、ケイラ姉さん、まだ……」
「お黙り、ミクリは今年の番じゃないでしょ……」
「……ああん、ずるいわ、姉さんばっかり……」

 ケイラの中にたっぷり注ぎ込むと、ケイラはびくびくと体をそらして淫らに声を上げた。
 隣で焦れていたミクリに乗り換えて、今度はミクリを昇天させる。
 ホッシルは優越感に浸っていた。
 いつもは偉そうな顔で男に対し厳しい言動をする女たち。
 男など全く無価値で意味のないものとして蔑む女たち。
 そんな女たちの穴を自分のもので突いてやると、あっという間にくねくねと骨抜きになり、手名付けられた犬のようにすり寄ってくる。
 ホッシルは可笑しかった。
 自分にとっては、いともたやすい仕事だったし、ホッシルもこの仕事が性に合っていた。
 女たちに対しては常に注意深くあらねばならなかったが、一旦床へ入ればどんな女もホッシルにとっては同じであった。
 ホッシルは、性の力と技によって自己の立場を盤石にすることに成功していたのである。
 しかも、この国で男は、女たちと交わること以外はなにもしなくていい。
 汗水たらして羊を追う必要も、次の冬のための毛糸をつくる必要も、日々の糧を心配する必要もない。
 ただ、女をよろこばすだけでいい。
 ホッシルとて捨てられる男の赤子を何人も見てきたし、種として用なしになって荒野にうち捨てられた男たちを目にしてきた。
 それはそれとして事実として理解している。
 だが、ホッシルは今その世界から最も離れた場所にいる。
 女たちのご機嫌を損ねない限りは、野に放り出されることはない。
 そんな間違いを犯すほど、自分は愚かではないとホッシルはわかっていた。
 ミクリの猫なで声が遠のくと、すぐそばで焦れていたらしい女がむくりと起き上がってきた。

「ホッシル、まだいけるんだろ? あたしにもおくれよ」
「ライカ様、しかし……」
「いいから、早く」

 ライカがホッシルの唇に覆いかぶさって来た。
 摺り寄せて来る足の付け根に触れてみれば、割れ目はもうほちゃほちゃに出来上がっていた。
 指でいたぶるだけで、ライカはすぐに達した。

「……ああっ……あん、はんっ、お願いだよ、あんたのそれを早く」
「わかりました」
「……はあっ! はあっ、ああっ!」
「ふっ、ふっ、ふん!」
「あっ! あっ! ああっ!」

 拍子よく突いてやれば、突きと同時にふたつの山が小気味よく揺れる。
 いつ見ても、女の体とは不思議だと思うホッシルであった。
 ホッシル自身も女と体を会わせるのは心地よかったが、女のほうは自分が感じるよりはるかに多くの快感を得ているように見えることがある。
 なにがどうしてなのかはわからない。
 だが、不思議とそういう感じがしていた。

「ホッシル、ああ、ホッシル……!」
「ふん、ふんっ、ふうっ」
「ああ、ホッシル……! あたしの名前を呼んで……!」
「え?」
「名前を呼んでおくれ!」
「ラ……、ライカ様……」
「一緒にいっておくれよ!」

 その願いに沿って、ホッシルはライカの様子に注視した。
 巧みに突きを続けながら、ライカが達するのを見極めるのである。
 ホッシルは自分の射精に関してもほぼ正確に制御ができた。

「ライカ、様……」
「ああっ、はあっ、ホッシル、ホッシルゥ……!」
「ライカ、ライカ様……っ」
「あああっ、うあんっ、んはっ、はああっ! あっあ!」

 ライカが達するのと同時に、ホッシルは勢いよく放った。
 ライカが恍惚と満足とに体をくねらせ、反り立った乳首の山を激しく上下させている。
 その様子を見ていると、自然とホッシルのいちもつはやる気に満ちてくる。
 もう一度、放ちたい。
 ホッシルはそう感じて、ライカの腰をグイッと引き寄せた。
 快感の先で呆けていたライカがはっとした。

「ホ、ホッシル……」
「お許しください、ライカ様……。どうかもう一度」
「え……?」
「あまりにライカ様があまりにも素敵で……、どうか」

 ホッシルにそういわれて断る女はいなかった。
 ホッシルはその後、三度もライカの中に放出した。
 ライカの中はホッシルの液体で一杯になり、抜き出したときには、とろとろと白いものがあふれ出るほどだった。
 ホッシルはライカの局所をきれいにぬぐい、はだけた着物を丁寧に整えてやった。
 枕を頭の下に敷き、髪を調え、布団をかけてやる。
 ホッシルは抱いた三人の寝姿を整えてから、その場所を離れた。
 些細なことのようだが、こうして丁寧に扱われることを女は好むのである。
 ホッシルのこうした心配りもまた、女たちを夢中にさせるツボのひとつだった。
 ここまで魅力的なホッシルに、強い執着を示す者が現れてもそれはおかしいことではなかった。
 それが、ケイラとライカであった。
 ホッシルの種を受けて、ケイラは間もなく妊娠した。
 妊娠すると女たちは体を愛い、無事に子が産めるように養生に励む。
 その一方、産む順番ではないライカは好きなだけホッシルと交わうことができた。
 それがケイラに嫉妬心を育ませたのである。

「ライカ、あんたいい加減になさいよ!」
「なにを怒っているんだい、ケイラ。体に障るよ」
「ホッシルを独り占めしないでちょうだい!」
「独り占めなんてしてないよ。だいたいあんたはもうホッシルの種を宿してんだろ?」
「そうだけど、ホッシルの種をひとりで取り放題取るのはおかしいでしょ?」
「はあ? ホッシルはあたしたちみんなのものだろう?
 あたし以外の人だって好いただけ使っているよ。
 誰がどれだけ使ったって、あんたが損するわけでもなし、別に構やしないはずだよ」
「そうだけど、でも、ライカは使いすぎよ!」

 表立って争う形となったのはライカとケイラだったが、実際のところライカのホッシルへの執心ぶりは、他の女たちの目にも行き過ぎに映っていた。
 みなが仕事に出ている合間にこっそりとホッシルと楽しんだり、順番を守らなかったり、勝手に男に与えてはならない酒や甘味を無断で与えたりもする。
 しかも、ライカはコルグ一族の中でも体力や発言力もある強い女だったので、他の女たちもなかなか文句をいえないでいたのであった。
 さらにいえば、ライカがホッシルとの営みに精を出すせいで、いつもの仕事がはかどらず、遅れ気味になっていた。
 次第にコルグも見ぬ振りができなくなってきた。
 ついにある日、コルグがいった。

「ホッシルを他の一族に譲る。このままでは万事宜しく冬を向かえることができぬ」
「そんな、族長! あたしは反対です!」
「そ、そうですよ、なにも他へやらなくても! ライカが控えるようになればそれでいいはずです」
「ライカ、こうなったのもお前の執心が行き過ぎているからだ。
 それらケイラ、お前は生まれてくる子供のことだけ考えていればいい」
「でも!」
「しかし!」
「族長のわしに逆らう気か? であれば、致し方あるまいな。
 問題は根源から絶つほかあるまい」

 コルグがテントの外へ出て、すぐさまホッシルが連れてこられた。
 ライカとケイラが揃って顔をゆがめる。
 なぜ呼ばれたのか知らないホッシルも、コルグが大きな鉈を手にしたのを見て、顔色を変えた。
 ライカとケイラがおのおの叫んだ。

「族長、それはどうか! ホッシルは何も悪くありません!」
「その通りです、殺すことはないではありませんか!」

 族長は他の女たちにホッシルを押さえさせ、その後ろ首に鉈をあてた。

 族長はこの女社会の理をよく心得ている。

 静かな目で血のつながった二人の女を見た。

「ライカ、ケイラ。みなもよく聞いておれ。
 お前たちの何人かはいずれ、わしと同じ立場になるだろう。
 族長の役割は、一族がこの国で安寧に暮らし発展をしていけるように導くことだ。
 そのために邪魔になるものは、どのようなものであろうと許してはならん。
 一族にとって、和は最も貴ぶべきもの。
 たかが男一人のことでこのように一族の和を乱してはならん」

 そういうと、コルグはなんのためらいもなくホッシルの首をかき切った。

「いいか、今よりホッシルのことを口にすることもならん。
 みな、改めて一族の結束を第一とし、互いに協力し合って仕事に励めよ」

 すでに物言わぬ姿となったホッシルを見て、ライカとケイラはしばらくその場に立ち尽くした。
 互いに互いの顔を見ると、あんたのせいだと両方の顔に書いてあった。
 だが、時が過ぎれば、意味のないことに腹を立てていたことに気が付く。
 男とは、女たちの確固たる社会構造の中で、使い尽くされ打ち捨てられていくものである。
 多少見てくれが良かろうが、性戯に長けていようが、重要なのはそこではない。
 男の魔力は時として女を狂わせることもあるが、それが女社会の理を壊すほどではない。
 影響力を持つ前に、女たちは男たちを魔力を封じることができるし、そもそも男には性の力は使えても、子をなす力は持ちえない。
 結局、男は無力なのであった。
 時がたつと、ライカはまるでつきものが取れたかのように、仕事に精を出すようになった。
 しばらくして、ケイラはホッシルによくにた美しい女を産んだ。
 この娘をライカはケイラと同じぐらい大切に可愛がった。
 仮に、この子が男だった場合、コルグはすぐに野にさらしたであろう。
 優秀な種は必要であるが、出過ぎた種はこの世界に必要ないのである。
 女たちは、男たちを制御する術をすっかりその手に握りこんでいるのであった。




 
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