【完】左手だけの婚約者~Hanamun Life~一緒にワープした婚約者は、左手だけなのに最強です!?

国府知里

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10、知りたいことは

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 コルグさんは、わたしたちを地図や地球儀のある書庫に案内し、国のあらましを説明してくれた。
 新しい言葉も増えてきて、いまいちよくわからない部分もあったけれど、なんだかますますゲームの世界めいてきた。
 
 十七の領地に分かれているハナムンという国は、中央の第一の領地イスウエンから右巻きに渦を巻くように、連なって形を成している。
 主だった大きな領地が東西南北に配し、その間を中小の領地がつないでいる。
 トラントランがある第十四の領地サイシュエンは、最西の大領地だそうで、西方の行寺という意味であるトラントランは、ハナムンで最古の由緒あるお寺だという。

「ほら、旬さん。やっぱり偉いお坊さんに、その言葉遣いはちょっとまずいよ……」
「いや、これでいい。丁寧に書くのは手間だし、あまりへりくだり過ぎるのもよくない。舐められる」
「そ、そうかなぁ……」

 領地にはそれぞれ、世礎樹:ユーファオーの樹があって、中央と東西南北の樹が特別に大きいのだという。この巨大樹が、他の世界から浮者を連れてくる。浮者は、清月光:マヌーケルンの夜に、強い浮の力をまとってやってくる。浮者が術を使うには、マヌーケルンの青い光が必要だ。この光こそが、ハナムンの世界をなす循環エネルギーのひとつなのだそうだ。

 似て非なる流の力は、浮と同じ方法で使えるけれど、まったく同じではなく、ハナムンの人々の中でも、厳しい修業を積んだ流者だけに扱えるのだという。流者の印字の光は、清青光:マヌーケルエンと呼ばれていて、マヌーケルンと色合いが微妙に違うらしい。浮の力のように国をなすというような大局的な力はないそうだ。でも、コルグさんの術は十分にすごいと思う……。

 浮にしても流にてしも、旬さんにいわせると、印帳に術の内容をどう書くかによっては、かなり複雑な術も使えそうな印象がある、のだそうだ。RPGをやらないわたしには、正直、不思議な力は全部魔法という程度にしかわからない。ゲームの中の魔法といえば「ヒール」とか「ファイア」みたいな呪文を選択すると、発動と同時にMPが減少する、というイメージだけど。確かに、それに比べれば、印帳に書いた内容が発動するというのなら、もう少し細かなことが出来そうな思える。もしかしたら、同時通訳とか、図書の翻訳とか、周りの人にも聞こえるような拡張機能もありなのかもしれない。

 にしても、ものをいうのは浮の力……。
 単純でも複雑でも、大局的とか、そうでなくとも、力が弱いわたしには、旬さんのように打てば響くような感覚というのか感受性というのか、そういうものが残念ながらほぼないみたい……。色の違いもわからなかったし、旬さんとコルグさんがそれぞれまとっているという浮と流の違いも、まったくといっていいほどわからなかった。こればかりは、もともとの素質と、努力以外にはないそうだ。
 どちらも術の修練のためには、マヌーケルンの夜、ユーファオーの樹の下で行をすることになるらしい。
 先が思いやられるばっかりだよ……。

「フーシャノオオクハ、ユーファオーノキノモトデ、フノチカラヲ、テンチニソソイデ、オクラシニナルカ、アルイハ、チュウオウニデムキ、ダイショウグンノ、ソッキントシテ、オスゴシニナリマス」
「大将軍というのは、王とか、国の代表みたいなものか?」
「コノクニノ、ダイイチケンリョクシャデス。カクリョウチヲ、オサメル、ダイミョウヲタバネル、オサデモアリマス。ダイショウグンモ、フーシャデス」
「それを早くいってくれ。大将軍に会えば、話が早いじゃないか」
「ソレハソウナノデスガ……」

 コルグさんがためらったのには、理由があった。
 大将軍は浮者を手厚くもてなし、自分のもとに保護しようとするので、各領地では、その領地に浮の力を注いでくれる浮者を確保するのに苦労しているのだという。浮者の多くが中央暮らしを望むために、大領地の東西南北の地ですら、領地に巡る浮の量が減少しているのだという。

「コノトコロ、サイシュエンデモ、フガゲンショウシ、ユーファオーノキモ、ヒトマワリ、ホソクナッテシマイマシタ。デキルコトナラバ、ミナミ・フーシャト、シュンフーシャニハ、コノチニ、トドマッテイタダキタイト、ゾンジマス」
「浮の力が少なくなると、その領地はどうなるんですか?」
「キギガヤセ、ミズガヒアガリ、サンガハシズマリカエリマス。タハタハミノリヲワスレ、ルドゥーナルモノノ、ケハイガコクナリマス。フガ、カレタジョウタイ、コレヲ、ル、トイウノデス」
「留って、浮が不足している状態なんですね。なんだか勝手に、浮が聖なる力で、留が悪の力、なんだと思ってました。浮の枯渇状態なんですね」
「シラヌモノカラミレバ、ソウミエルコトモ、タタアリマス。フリューヲマナンダモノデモ、ハッキリト、リカイシテイルモノハ、スクナイノデス。
 モウスコシ、セイカクニイエバ、ハナムンノヒトビトノ、カラダニナガレテイル、リューノチカラ。コレガ、カレタジョウタイガ、ドゥーデス。ルドゥートハ、フリューガカレ、モノゴトノメグリガワルク、トドマッテシマッタ、ジョウタイデス。
 トハイエ、ルドゥーハ、チカラヲタメルコト、チエヤ、ザイヲトドメルコト、オモイデヲタイセツニスルコト、トイウヨウナ、セイシツモモッテイマス。ルドゥーモマタ、ナクテハナラナイチカラナノデス」

「浮流と留洞は、世界のバランスをとっているんですね」
「ソノトオリデス。イマハ、ソノバランスガ、イゼンニクラベテ、カタヨッテキテイマス。イマイジョウニ、フガスクナクナレバ、コノヨノナガレガトドマリ、リューガカレレバ、ヒトノイノチモ、メグラナクナッテシマウノデス」
「それは領地にとっても国にとっても、危機的な状況のはず。領地から浮者が一人もいなくなってしまったらどうするんだ?」
「フノチカラガタリナイトキニハ、チュウオウニ、フーシャノハケンヲ、イライシマス。イマノトコロハ、チュウオウノ、ハケンフーシャダンニヨッテ、カクチノヘイアンハ、タモタレテイマス」

 浮の力というものが、思ったよりもつかみどころがなく、そのくせ、影響力は存外に大きいことがわかった。
 助けてもらった手前、わたしはコルグさんやクランさん、ゼンジさんのためになるならこの地にとどまりたいけれど、正直、中央のイスウエンで暮らしているという他の浮者や、大将軍の話も聞いてみたい。
 わたしと旬さんの身に起こったことはこの世界でもイレギュラーな出来事だということ、ふたつの世界に分かれてしまった旬さんの体を元に戻すにはどうしたらいいのかということ、そして、わたしたちが元の世界に戻ることは本当に不可能なのかどうか。
 知りたいことは沢山ある。 

「ワシニ、アナタガタヲ、トメルコトハデキマセンガ、カナウコトナラバ、コノテラヲキョテンニシテ、サイシュエンノタメニ、トドマッテクダサルコトヲ、オカンガエイタダキタイ」
「すまないがすぐに返事はできない。俺はイスウエンに行ってみてから考えたい」
「ソノヨウニモウサレタフーシャガ、モドッテキタタメシハ、ゴザイマセン。シカシ、ソレモ、シカタノナイコトデショウ」
「今すぐにという話ではない。この指輪の使い方を模索しがてら、浮力を注ぐということに協力してもいい」
「アリガタクゾンジマス」
「わたしも、ここを出る前にもう少しいろいろ勉強しておきたいです。浮のことでは大した力になれなくても、この国のことや言葉を学ぶことはできると思うから」
「コチラノショコカラ、トショノカシダシヲ、キョカシマショウ。シタマチコトバト、ハナムンゴノ、ジショモゴザイマスカラ」
「あはは、下町言葉の、ですね」
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