【完】仕合わせの行く先 ~ウンメイノスレチガイ~

国府知里

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シリーズ3 ~ウンメイノユキチガイ~

Story-4 いきちがい(1)

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 早馬でハリーがこちらへ向かってくることを知ったモリスとケインは、手紙の指示にあるとおりにすぐマリ―ブラン家へ向かった。
 ふたりから話を聞いたキューセランはまずは考えさせてくれというほかなかった。
 キューセランはリバエルの若紳士たちが、シーラ・パンプキンソンを求めてサラの救出に尽力してくれたことを理解している。
 シーラ・パンプキンソンは、リバエル国の王弟殿下の目的だ。
 はっきりと求婚があったわけではないが、いずれにしても、極論意味するところは同じである。
 先日、キューセランはレインにそのことを伏せておいた。
 なぜなら、ハリーがそのような提案を持ってくることなど予想しなかったし、 彼なりにサラのことを思った結果、レインと結婚させることが最も安全に思えたからだ。
 余計なことは言う必要がないと思ったのだ。
 だが、こうなってはすべてをさらすほかにはない。
 そして、天秤にかけると、サラをリバエル国に行かせるほうが、サラにとっては安全に思われるのだった。
 キューセランの思いはほとんど決まった。
 あとは、サラがなんというかだ。
 遠方に出掛けた父と母を待つサラが、なぜ一人で国を出なければならないのか……。
 キューセランはサラを納得させられる理由を見つけられずにいた。
 キューセランは、その日のうちにレインを訪ねた。
 人払いしたレインの私室に迎えられ、キューセランはハリーの来訪とその目的を告げた。

「私としましては、サラの安全を第一に考え、ハリー様のご厚意に甘えたいと思っております」
「そうだな……。
 いずれにしても、先日のありさまでは、すぐにサラを迎えるわけにもいかない。これは天の助けだ」

 レインは、結婚せずともすむとみて、ふっと安心したように笑った。

「だが……」

 ガタンと音を立てて立ち上がったレインは、その麗しい顔をゆがめてキューセランを見つめた。

「行かせる前に、もう一度私に会わせろ。
 私のプライドを傷つけさせたまま、行かせてたまるか」
「あ、あれは、単にきっと黒い服が嫌だっただけで、決してレイン様を嫌がったわけでは……」
「ああ、だから、今度は! 必ず、サラの笑顔を勝ち取ってみせる」

 レインの燃えるようなプレイボーイ魂を前に、キューセランは何も口をはさむことができなかった。

 ・・・・・・



 それから間もなく、ハリーはマリ―ブラン家にやってきた。
 そして、何を思ったのかレインまでもがわざわざそのタイミングに合わせて、マリ―ブラン家へやってきた。
 子細を知らされていないマリーブラン家の家人と使用人たちは、いったいこの屋敷でが起こっているのか興味津々だった。
 朝から気をもんでいたキューセランは歯痛を起こし、鎮痛剤を飲んだ。
 まずはなごやかに互いに挨拶が交わされた。
 レインは白を基調に淡い桃色をさし色にした優し気な印象の装いで、ハリーは金糸で縁取られた青いドレススーツだった。
 互いに互いの国の紋章を胸に入れている。
 非公式ながらも、これは外交だという表れだった。
 レインの後ろには二人の共が控えており、ハリーの後ろにはモリスとケインが控えた。
 キューセランはモリスを見た。
 はじめてレインが来た日もそうだったが、サラはあれからとみにモリスを気に入っている。
 モリス自身も最初は戸惑っていたが、モリスが聞かせる話に、サラが何かを感じているとすれば、それもうなづける。
 キューセランは、モリスがいることで、どうにかサラが落ち着いていてくれたらと祈った。
 ふたりの王家は、差しさわりのない話をする間も、互いを観察しあっている。
 初対面の二人はなんの所以か、同じ女性に会うために顔を合わせているのだから、自然と力を探り合うのは本能というものだ。
 そして、わざわざ日を合わせてきたのは、やはりレインは己が自信を持つ絶大なる魅力を知らしめたいという思い一つなのだった。
 レインはたしかに魅力的だ。
 だか、その最たるものは性的に自覚のある女性に向けての魅力である。
 精神年齢が十歳たらずのサラにそれがどこまで通用するのかはわからない。
 一方のハリーは、少年然としたはつらつとしたものがあり、その目や声には明るさが溢れていた。
 とりたてるほどの美少年という顔立ちではないが、健全な美しさがあり、 黄金の髪やまつ毛が日に当たって輝くと、彼の表情は一層華やかに見えた。

「サラ様をお連れいたしました」

 使用人の声とともに、サラはシーラとぴったり寄り添って入ってきた。
 レインはすかさず、サラに向かって百戦錬磨の微笑みを投げかけた。
 しかし、サラはびくりと肩を震わし、しっぽを逆立てた猫のように明らかな警戒の態度を見せた。
 レインは微笑みの顔のまま凍らせ、その内側ではまたも大きな衝撃をその胸に受けていた。
 サラは二人が来たらこうせよといい含められていたのだろう。
 自らそろそろと前に進み出ると、膝をついて挨拶をした。

「お目にかかれて光栄です……」

 ハリーは、膝まずく少女を見つめ、そして背後に控えるもう一人の少女にも目を向けた。
 この二人がサラとシーラ。
 これまでの調査や報告書によって聞いてきた二人が、今ようやくそろって目の前にいる。
 これまでの物語が一瞬にして、ハリーの頭の中に広がった。
 今日この日を迎えるまでに、どれだけの時がかかっただろう。
 それは単純に言う時間のことではなかった。
 想いの時の長さだった。
 言うなれば、長い小説を読み終えた後、それを書いた作家に初めて会った時のような気分だ。
 マハリクマリックは、サラとシーラがふたりで共作したひとつの物語なのだ。
 呆然自失のレインを置いて、ハリーは立ち上がった。
 そして、サラとシーラの前に来ると、自らも膝を折った。

「私も、こうして二人に会えて、本当にうれしい」

 サラはシーラと顔を見合わせると、花が咲いたようににこっと笑った。
 ハリーが二人を立ち上がせると、サラはすぐにシーラの隣に立ち、ハリーにシーラを紹介した。

「シーラです。私の、世界で、一番の、友達です」

 ハリーは応えて、シーラにむかって微笑んだ。

「よろしく、シーラ」

 その様子を見たサラの笑顔が、ハリーに心を開いたことの証だった。
 それを遠目に見ていたレインは、激しく自尊心を傷つけられ、その後のサラたちの会話はまったく耳に入ってこなかった。

「よろしいですか、レイン殿」
「えっ?」

 呼びかけられるまで氷漬けになっていたレインは、はっとハリーを見た。

「サラとシーラをお借りしてもよろしいですか」
「あ、ああ……」

 サラとシーラはハリーとともに部屋を後にし、その後ろにモリスとケインも続いた。
 残されたレインにキューセランは何を言っていいかわからず、まだたっぷり入っているお茶のお代わりを使用人にいいつけた。

 ・・・・・・



 庭に出て、いつものお気に入りの場所へ来ると、サラは振り向いてハリーに尋ねた。

「ハリー様はなぜ私に会いに来たんですか?」

 ハリーは望んでサラに会いに来るということを先に伝えておくようにキューセランにたのんでいた。
 ほしいものはほしいと口にしなければ手には入らない、そう思いいたった日の心情を忘れないためである。
 しかし、記憶を失ったサラにとってはまっとうな疑問だ。
 まったく所以のない、しかも隣の国の王弟などという人物が、サラに会いに来る理由が思い当たらない。

「なぜかな……。私にもわからない。
 でも会ってみた今は、本当に会えてよかったと思ってる」

 サラは小首をかしげてシーラを見、シーラは理由を知っていたが、あわせて首をかしげて見せた。
 ハリーはサラとシーラを見比べた。

「君たちって、本当によく似てるね。本当の姉妹みたいだ」

 サラはシーラと寄り添い指を絡めた。

「私たち、本当の姉妹みたいでしょ」

 ふたりの少女はくすくすと笑った。
 それからサラはハリーとたわいもない話をした。
 互いの家族のこと、馬の名前、庭にどんな花が咲いているか、童話物語の中の魔女はどうしていつも鼻が曲がっているのか。…………

「お話といえば、マハリクマリックを知ってる?」

 ハリーは童話の流れから自然にその言葉を持ち出した。

「マハリクマリック?」

 サラはなにか考えるようなしぐさを見せた。
 その後ろでシーラは小さく首を横に振ってみせた。
 つまり、サラはマハリクマリックの劇を見たこともすっかり忘れているのだった。
 でも、だとすれば、マハリクマリックさえ思い出せば、あとは芋ずる式にすべてを思い出すのではと思われた。
 だが、シーラが首を振ったということは、そうはならなかったということだろう。
 ハリーはそれならばとでもいうように、ケインづてに聞いたマハリクマリックの話をシーラに聞かせた。

「……それで、おじさんは今度は掃除が得意だという女の人を雇うんだけど……」

 サラは初めて聞く話のようによろこんで、手をたたいた。

「ハリー様もお話が上手なのね。
 ねえ、モリス。
 今のお話とても面白いから、モリスの本の中にも入れるのはどう?」

 モリスは微笑んで、それはいいですねといった。
 ハリーはさて、と前置きして、そろそろ帰らなければといった。

「応接室に戻りましょうか」

 するとサラは首を横に振った。

「レイン様がいるから嫌」
「サラはレイン様が嫌いかい?」
「わからない。でも、なんだか怖い」

 そういうとサラはシーラの腕につかまった。

「レイン様と結婚しなきゃいけないの?……」

 キューセランはサラに、結婚しないならリバエル国に行けとは言えなかったのだろう。
 突如として振った沸いたレインとの縁談だけが消滅もせず、サラの心に不安として浮遊している。

「それなら、私たちと一緒に来るといい。それなら怖くないから」

 ハリーは優しくサラを促した。
 サラは右にシーラの手をつかむと、不意に思い立ったように左手でモリスの手をつかんだ。
 モリスはびっくりしてサラを見つめたが、サラの瞳にはモリスへの信頼が込められていた。

「随分なつかれたようだな」

 ハリーはモリスにそう言いながら、ふたりの過ごしたであろう時間を少し羨んだ。
 モリスはふいに握られた柔らかな感触に、胸をわずかにときめかせながら、その手に応えた。
 応接室に戻ると、やはりレインはそこにいた。
 同時に、モリスの指にはきゅっと小さな力がこもった。

「ああ、これは、ハリー様!」

 不機嫌なレインの相手にすっかり神経をすり減らしていたキューセランは、ハリーを生神のように歓迎した。

「私はこれでお暇しますが、レイン殿はいかがされますか?」
「ああ、私も帰ろうと思っていたところだ」

 レインは傷ついた自尊心を奮い立たせて、優雅な美貌の皇太子を装った。
 相変わらず、サラはレインに警戒を向けている。
 面々が玄関先で別れを告げるとき、サラはモリスの手を放そうとはしなかった。

「帰らないで」

 サラのおねだりに、モリスはにわかに動揺したが、毅然と返した。

「本日はハリー様の付き人ですから、私は帰らねばなりません」

 ハリーはサラに微笑んだ。

「また明日来るとしよう。そうだろう、モリス」
「はい、承知しました、ハリー様」

 サラは納得してモリスの手を離した。
 離れていく体温に、モリスは人知れず頬を染めた。
 屋敷を出てすぐ、ハリーはレインを自分の馬車の中に誘った。
 傷心のレインは、正直断ってしまいたかったが、彼の皇太子たる尊厳がそれを許さなかった。


「レイン殿、話はモリスとケインから聞いておりますが、間違いはありませんでしょうか?」
「あ、ええ……。サラを貴国で保護してもらえるのは願ってもないことです。して、サラに納得してもらえそうですか」
「今日はまだ何とも。ですが、幸いにもサラ嬢はモリスになついているようです。国に遊びに来ないかと誘ってみるつもりです」
「それはよさそうな案だ。できるだけ早急にことが進むよう願います」

 レインは馬車を挨拶をし、馬車を降りた。
 実は、ハリーは可能ならこういってみようかとも考えた。
 あなたはサラに嫌われているみたいだから、これからもちょくちょく顔を出してもらえれば、 サラは嫌気がさしてなお一層リバエルに行く気になるかもしれません。…………
 だが、レインのプライドを思うと、さすがにそれは口に出せることではなかった。

 ・・・・・・



 翌日もやってきたハリー、モリス、ケインに対して、サラとシーラは笑顔で出迎えた。
 ちょうど郵便配達人が来ていて、両親からの手紙が来ていないかと聞いているところだったのだ。
 当然、今日も手紙は来ていなかった。

「とても遠いところなんですって。
 手紙が届くのにもうんと時間がかかるんですって」

 サラはハリーに、父と母の写真を見せた。
 といっても、ゼルビアの写真は一切なくなっているので、写真はこの屋敷に残されていた ファースランとマリアが結婚したときの写真なのだった。
 写真に並んだ二人の面影は、サラに受け継がれている。

「昨日お医者様が来たら、もうすぐ包帯とれますよって言ってくれたのよ。
 包帯が取れたら、シーラと町へ出かけるの。私たち、まだこのお屋敷から出たことないの。お城をちかくで見たいわ。
 それと運河を船で下るの。ねえ、モリスもいっしょに来て」
「私は構いませんが……」

 モリスはハリーを見た。
 ハリーはすぐに構わないよ、といったが、サラにはなにかが引っかかったようだ。

「どうしたんだい?」
「あの……、ハリー様は、リバエルの王様の、弟?」
「そうだよ」
「モリスは、ハリー様の、ずっと、付き人?」
「そうだよ」

 サラはあらかさまにがっかりしたようにして、シーラを見た。
 ハリーたちはサラが何にがっかりしたのか、視線でシーラに答えを求めると、 シーラは少しためらいながらサラの気持ちを代弁した。

「サラ様は先日からずっとおっしゃっています。
 サラ様はモリス様におそばにいてほしいようです……」

 サラはじっとモリスを見つめた。

「わ、私ですか?」

 モリスはサラは子どもだと自分に言い聞かせながらも、動揺を隠せなかった。
 ハリーは苦笑を浮かべ、ケインは頭をかいた。

「ハリー様が来てから、モリスはずっとハリー様のものなのね」
「それは……」

 モリスは困り顔になる。

「サラ様は、ハリー様が一緒では嫌ですか?」
「ううん。でも、ハリー様がモリスを私にくださればいいなって思うわ」

 ハリーはサラの告白に、明るく笑った。
 ケインはモリスのうろたえた様子を見て、ほほえましい心境になった。
 サラだけが、じっと真剣な表情でモリスを見つめている。

「わかった」

 ハリーはぽんと通る明るい声で言った。

「サラに、モリスをあげよう」
「ほんと?」

 周りの唖然とした顔をよそに、ハリーはサラにこう持ち掛けた。

「サラ、昨日のマハリクマリックを覚えている?」
「はい」
「私から君にサラをあげる代わりに、君から私に何かもらえないかな」

 サラは少し考えて、即答した。

「わかりました!」

 サラはきらきらとした目でモリスを見つめた。

「それじゃあ、私は……、何にしようかな……」

 ハリーは思案するそぶりをみせ、ぱちんと指を鳴らした。

「それじゃあ、私にはシーラをもらえないかな?」
「シーラを?」

 サラの顔が、さっと色を失った。

「それはだめ、それは嫌!」
「そうか。じゃあ、そうだな……。うーん、それなら……。
 サラとシーラでリバエルに遊びに来るというのはどうだい?」
 サラはきょとん、とハリーを見た。

「最近、リバエルのお城は退屈なんだ。
 君たちが来てくれたら、きっと毎日とても楽しいと思うんだけど」

 サラはシーラを見た。
 シーラは賛成するように、にこっと笑った。

「それなら、いいわ! 大賛成!」

 ・・・・・・


 それからほとんどの間を置かず、サラとシーラはハリーの客としてリバエル国に向けて出発することとなった。
 マハリクマリックの交換条件としてサラに与えられたモリスはというと、 ハリーの命のもと、サラ専用の近侍のような存在として、サラに貸し与えられた。
 これまでも、呼び名に上下があったために、不思議とその関係性は違和感をもたらすことなく収まり、 マハリクマリックが成立したあの日から、モリスはキューセラン家でともにサラと過ごしている。
 サラは毎日物語を聞かせてくれる吟遊詩人のような友達を求めていたのだが、 実際、警護のために腕に覚えのあるものを置くことは必要だったのでちょうどよかった。
 相変わらずかやの外扱いされているヘイリーとスタイリーはいい気はしなかったが、 それでも隣国の王弟と個人的な縁がマリーブラン家にあるとはっきりしたことは、 彼らにとっても利になることのように思え、表面的な親交はつつがなかった。
 キューセランはさみしくなるといいながらも、サラの安全が保たれることに感謝し、 妻アリスは、サラを着せ替える楽しみがなくなってしまうととても残念だと言って別れを惜しむあまりに、 旅行用の外套と王宮で着るためのドレス三着も特急で作らせた。

 ・・・・・・



 出発の日の当日。
 モリスはサラの部屋で、使用人たちが荷造りしているのを監督している。
 別に監督などする必要もないのだろうが、やることがないのでそういう雰囲気で立っている。
 モリスはお茶を給仕したり、サラのコートや帽子をとってしわにならないようにコート掛けにかけたり、 ドアを開けてエスコートしたり、といった基本的なことはやれる。
 最下級生のころから士官学校の上下関係でそういった近侍らしい一通りのことはそつなくこなせるのである。
 しかし、国に帰れば使用人に世話を受ける側なのだから、 ウールの服やサテンの靴の汚れをどう落とせばいいだとか、どの鞄に何を入れただとか、下着の数は足りるかなどの 女支度のこまごましたことなど、そんな使用人の真似事がモリスにできるはずもなかったし、近侍がする仕事でもなかった。
 あるいは、朝のハーブティーのレモングラスを何分蒸すとか、夜のカモミールティーのブレンド配合だとか、 サラのお気に入りのリボンや小物だとか、サラの好みの色の合わせ方だとか。
 実際そういうことは、シーラとほかの使用人がやってくれる。
 結果的にモリスはなんだか偉そうな雰囲気でその様子をただ眺めることになるのだ。
 サラとシーラは当日着ていくドレスと帽子選びにもう小一時間ほどかけている。
 正直モリスには信じられない時間の使い方だった。
 少女たちはなにが面白いのやら、同じようなことを同じように繰り返し、そして、くすくすきゃあきゃあと、その繰り返し。
 仲がいいのは承知だが、男同士の友情とはかけ離れていて、ぜんぜん入り込める気がしない。
 その点に関してはいえば、退屈すぎてあくびをかみ殺すときもある。
 それでも、サラが日に日にかわいく見えてしかたない。
 純粋な瞳で頼られるとモリスは単純にうれしく、寄せてくれる信頼にこたえたいと思う。
 自分がこんな気持ちになるなんて、想像もしなかった。
 こういってはなんだが、サラが記憶を失っているからこそ、 なんのしがらみもてらいもなく関係を育むことができるということもあるのだ。
 それはそれとして、サラの記憶が戻ることを願うことには変わりがなかった。
 これまで衝突していがみ合いをしてきたこと、月夜の君として窓越しに見つめ合った時間、 シーラの為に必死になる姿、窮地でみせた機知と勇気。
 そのどれもがモリスの頭から離れはしない。
 どの思い出が欠けても、いまこの気持ちに至るはずがなかった。
 ときどき、サラがこのまま何も思い出さなかったとしたら、と考えることがある。
 うすら寒くなるような想像を、やはり避けては通れない。
 同じ記憶喪失に陥ったシーラの場合、彼女自身の体験によれば、記憶があいまいになったのははじめだけで、 あとにはなんの障害も自覚症状もなかったという。
 サラの場合もそうであればよいのだが、サラには自分の年齢が後退しているという自覚すらない。
 さすがに、両親が死んだことやゼルビアの屋敷が焼失したことを知れば、 激しい衝撃を受けるだろうが、それでも記憶を思い出すきっかけになりうるだろう。
 あるいは、医者か、最も信頼されているシーラによって、サラは今記憶喪失状態に陥っているのだとうことを話して聞かせ、 時間をかけて自発的に治療を受けさせるということも考えられる。
 だが、はたしてそれで記憶が戻るのだろうか。
 もし戻らないとすれば、いたずらにシーラを不安に陥れることになる。
 シーラは自らが記憶を失い、危険にさらされていると知っても、あの明るい笑顔を見せてくれるのだろうか。
 そしてまた、記憶が全く戻らないとすれば、モリスの思い出のなかにあるサラは、二度とモリスの前には現れないのだ。
 思えば、毎回感情のままにぶつかり合うばかりで、少しもお互い同士を解し合えなかった。
 むしろ、離れていた時のほうがモリスはサラという人物のことを理解できたような気がする。
 サラのほうはどうだったろうか。
 そう思うと、モリスは無性に記憶を失う前のサラに会いたくなる。
 だが、その一方でサラの前で素直になれそうにないというのもわかっていた。
 あれだけ私のことを嫌っていたくせに、と言われないはずがないのだから。
 でもそれでもいい。
 また口喧嘩ができるだけで、それがどんなにうれしいか。
 口さえきければ、今度はもう少し歩み寄れる気がする。
 会いたい…。
 モリスは目の前景色を見て見ないような表情で、ぼんやり立っていた。

「モリス様、荷造りが終わりました」

 使用人が両手に大きな鞄を抱えて部屋を出るところだった。

「あ、私も手伝おう」
「いえ、でも…」
「だめ。モリスはここにいて」

 サラが鞄を持ちかけたモリスを引き留めた。

「私たちこれから大事なお話があるの」
「はい。それでは失礼します」

 使用人の女はぺこりと頭を下げ、大きな旅行鞄をもってよたよたと部屋を後にした。
 モリスはぼんやりとした靄を払うように、頭を切り替えてサラを見た。

「それで、なんのお話ですか、サラ様」

 するとサラは急に真顔になって、モリスを窓辺にこさせた。
 シーラがモリスに椅子を用意し、サラとシーラはなにやら顔を見合わせた。
 いつもなら、「私たちの部屋」と二人が呼んでいる部屋の一角で話をするはずだが、今回は何の趣向だろうか。
 モリスは新しい少女たちの遊びに付き合うつもりで椅子に腰を掛けた。
 サラは極めてまじめな顔つきをしている。

「私たち、モリスにやってもらいたいことがあるの」
「はい、なにをすればよいのですか?」
「お父様とお母様を殺した真犯人を捕まえたいの」
「えっ…」

 モリスは聞き違いだと思った。
 しかし、サラとシーラは全く表情を変えずに、じっとモリスを見つめている。

「今、なんと……」
「あなたは、法務局で私を助けてくれた。その前は、バートルート家で軟禁されていた時も、あなたがいなかったら私どうなっていたかわからないわ。
 あなたの力が必要なの」
「き、記憶は……」
「私記憶を失ってない」
「…………」
「あの事件はマルーセル家とつながっているんでしょ?
 私もジュリアンが用意した箱馬車の紋章を見たときにわかったの。
 私たちは法務局にいたあの男が真犯人だと思ってる。
 法の裁きを受けて罰せられない限り、私たちは絶対にマルーセルを許さない」

 サラの瞳は激しく燃えていた。
 シーラも同じ色の瞳で同じようにモリスを見つめていた。

「モリス様、混乱されているところ、申し訳ないのですが、答えをお聞かせください。あなたが手を貸してくれたら、私たちはとても助かります。
 でも、もし手を貸してくれないとしても、私たちはやめるつもりはありません」

 モリスは少しずつ状況が飲み込めてきた。

「君たちは、そのためにふたりで記憶喪失の狂言を……?」
「私たちには今、叔父様の一家しか寄る辺がない。だけど、叔父様も二人のいとこも、一緒になってお父様とお母様の無念を晴らしてくれるかといえば、私たちは信頼できない。だから、この復讐は私たちだけで決めたの」

 先ほどからサラの口から飛び出す不穏な言葉の数々に、戸惑いを感じながらも、それだけの強い意志を感じざるをえなかった。

「じゃあ、どうして私にこのことを話したんだ?」
「あなたは信頼できると思ったからよ。
 あなたは、まっすぐだわ。それに、とても強い。
 仲間に入れるなら、あなたしかいないと思ってた」
「モリス様、もしお嫌ならそうおっしゃってください。
 無理強いするつもりはもとよりありません。
 でも、邪魔をするなら容赦しません」

 シーラはなにをどうするつもりなのか、恐ろしげに脅し文句を言い放った。
 それも、サラの為と思えば、ハリーのためなら同じであろう似たもの同士のモリスには理解するのはむつかしくなかった。

「生半可な気持ちなら断って。
 でないと、私もシーラもあなたに心からの信頼をあげられないから」
「私が断ったら、まさか、リバエル国に行かないつもりか?」
「そうね、あなたを得られないなら行く理由がないもの。
 わたしははじめから、あなたしか欲しくない。
 でも、あなたなしでこの計画を進めるなら、ザルマータに残ってレイン皇太子を頼るほかないわ」
「皇太子をあんなに嫌う芝居も、そのためか?」

 そう考えればつじつまが合う。
 あれだけ強い印象を与えれば、皇太子は逆にサラのことが気になるし、実際そうなった。
 サラは少しため息をついた。

「あれは少しちがうけど……」

 シーラはサラを心配する視線を送った。
 なにやらまだモリスには話していないことがあるらしい。

「でも、記憶喪失のふりをしたのはそのため。そのほうが真犯人は、私を無力とみなして手加減してくれるかもしれないし。
 三人の皇太子のことはよくわからないけど、宮廷で動くにはそのほうがいいと思ったの。相手が子供だと思えば、大人って案外思わぬことを口にするものだわ」

 サラはまたため息をついて、後ろ手に壁によりかかった。
 シーラがにわかに急いたように、モリスに迫った。

「モリス様、手を貸していただけますか?
 でも、サラ様のために死ねないというなら断ってください」

 サラは微笑した。

「それは無理よ、シーラ。モリスにはハリー様がいるもの。
 でも、そのハリー様があなたを貸してくださったわ。
 あなたを死なせてハリー様のところへ返すなんてしたくないから、あなたの命はあなたが持っていて」
「私の命はサラ様のものです。
 サラ様にもしものことがあれば、私もご一緒します」
「私もよ、シーラ。私とあなたは、運命共同体よ。
 モリス。あなたがもし、私たちに手を貸してくれるのなら、私たちはそれと同じ心をあなたにあげる」
「私が手を貸したとして、このことをハリー様に話しても?」
「あなたがそのほうがいいというのなら信じるわ。私たちはあなたがほしい。
 私たちがあなたにあげられるものは、信頼だけ。他に何も保証してあげられない。それでよければ手を取って。無理ならこのまま部屋を出ていって」

 サラはモリスに向かって手を差し出した。
 ふたりの少女の双眸が少しも揺れずにモリスを見つめていた。
 確かに、サラのために死ねと言う温度をキューセランたちに求めるのだとしたら、彼らは決して手を貸すとは言わないだろう。
 それどころか、まるで生き急ぐようなふたりの若さに足止めをかけるべく働くに違いない。
 だが、話の筋が見え始めたときから、モリスの気持ちは固まっていた。
 モリスはサラの柔らかな手を握った。
 サラもほっとしたように唇を緩め、手を握り返した。

「それにしても、よくも今日までだましてくれたな。
 信頼をあげるというその言葉も演技だったら、私は馬鹿を見るだけだな」

 モリスは椅子から立ち上がった。

「私も驚いているんだけど、私には演技の才能があったみたい。
 でも、今日からはもう何もモリスに隠したりしないわ」
「私のことも全面的に信用してくれるというのは本当だろうな。サラ」

 モリスは初めて、サラを目の前にして、その名を呼び捨てで呼んだ。
 実際に呼び掛けてみると、その感覚はしっくりときた。
 これを、待っていたのだ。
 サラが、もちろんというや否や、モリスはさっと右手を前に突き出した。
 あっ、といったのはシーラだった。
 モリスの右手はサラの肩をさらい、そして左手はサラの体を迎えるようにして、ぎゅっと引き寄せた。

「……モリス……?」

 しばらくモリスは何も言わずにただ、サラを抱きしめた。
 サラもモリスが何をもって信用の証としたいのかをしかめるように、じっとそうしていた。
 ふたりの少女からは死角となって見えなかったが、モリスの目には熱いものがたまっていた。
 サラにはモリスのくぐもったようなこらえた嗚咽が喉のあたりから聞こえた気がした。
 泣いてくれている……。
 そう確信すると、いままで憎まれ口ばかりのモリスが、自分にあたたかな情を寄せていてくれたことを初めてしるサラだった。
 サラはそれにこたえて、モリスの胸に頬を押し当て、ぎゅっと抱きしめ返した。
 モリスはごますように涙を拭いた。

「お前の髪が目に刺さったぞ」
「私の髪、そんなに固かったかしら」
「そ、そんなことはないが」

 モリスはサラの柔らかな髪の感触を改めて味わった。
 半分夢を見ているような気持だった。

「逃げ出すか、叫びでもしたら、ほらみたことかといってやろうと思ったのに」
「正直言うと、殴られるかと思ったわ」
「まさか!」

 サラの言葉に思わずモリスは腕を緩めた。
 腕の中のサラは、モリスを見上げていた。

「あなたならそれくらいするかもって思ってたから。
 だって前につかみかかろうとしたことがあったじゃない」
「そ、それは……」
「でもあなたは私たちの手を取ってくれた。
 だから殴られたって、川に落とされたって、森に置き去りにされたって、あなたのことを信じるわ」

 真顔のシーラに、モリスは言葉もなく頬を染めた。
 するといつのまにかモリスの真後ろで、不穏で不機嫌な気配を発するシーラがじりじりといった。

「私はあまりもう信用できそうにありません……。
 一刻も早くサラ様を離していただかないと、私……、モリス様の背中を刺してしまうかもしれません……」

 モリスは初めてシーラに対して背筋の冷えるものを感じたが、 以前の自分なら、ハリーに対してまったく同じ態度をとっただろうと思うと、そこにある種の親近感を禁じえない不思議だった。

「シーラの心配事は、このことだろう?」

 モリスは力みなく、ひょいとサラを抱き上げた。
 そして、そのままベッドの上に座らせると、

「これか?」

 サイドボードの小さな錠剤を手にした。

「き、気づいていたんですか……?」
「そりゃあ、ここ毎日ずっと見ていたからな。
 サラがため息をつくとき、たびたびシーラはこれを飲ませていた。
 これは何なんだ?」
「お医者様からもらった鎮痛剤です。
 サラ様が頭痛の時にと処方されたものです」
「頭痛……、そんなに頻繁に?
 本当に医者は大丈夫だといっているのか?」

 モリスから引き取った錠剤と水をシーラから受け取ったサラは、それを飲み下し、ふうと息をついた。

「毎日痛むと言うと、外出を許可してもらえないの。
 でも、ちゃんと休むとよくなるから平気よ。
 いつもはそんなにひどくないのよ。一番ひどいのは、レイン皇太子の時だけ」
「レイン皇太子? なぜ?」
「わからないの。あの人を見るときにはいつも。
 なぜだか、急に頭痛がひどくなるの。さっき私、記憶を失ってないって言ったわね。だけど、正確には、ところどころ思い出せないこともあるの。
 そういうことを思い出そうとするときも、同じように頭痛がひどくなる」
「レイン皇太子とあの事件はなにか関わっているということか?」
「それがわからないの。思い当たることはないし。でも……。頭痛を引き起こす皇太子と結婚しなくてすんで本当によかったと思うわ。
 出発まで、少し眠ってもいい……?」

 サラは返事を待つか待たないかのところですぐに瞼を下した。
 シーラはサラのドレスがしわにならないよう整え、クッションをあてがい、毛布を掛けた。
 シーラとモリスは音を立てないように、そっと部屋を後にした。
「シーラ、サラは本当に大丈夫なのか?」
「部屋の外では、サラ様とお呼びください」
「あ、ああ」
「お止めしたところで、計画を変えるサラ様ではありません。
 私たちにとってマハリクマリックは、ほしいものを必ず手にいれるための魔法の呪文です。私たちがマハリクマリックを使って、得られなかったものはただの一つもありません。
 これからだってそうです。真犯人をとらえ、白日の下で裁きを与えるために、私たちが差し出すものはだだ一つです。望みの大きさに対して、それは無謀にみえるかもしれません。
 でも、サラ様と私は、私たちの信頼と引き換えに、あなた様を手にいれました。これからも、必要なものはすべて手に入れるでしょう。
 マルーセルに鉄槌を下すそのときまでに。
 モリス様もどうか、マハリクマリックを信じてください。
 子どもの遊びと笑わずに、私たちと一緒に信じてください」

 シーラの目に宿る炎は、サラのものと全く同じだった。
 彼女たちは、ふたりの世界を作ってまるで少女たちの戯れを演じながら、その真実は、復讐のために心を燃やしていたのだ。
 モリスはわかったとうなづいた。
 これまでは、シーラ・パンプキンソンの歩いてきたマハリクマリックの旅を追うだけだった。
 だが、これから先はその旅の中に、モリスも足を踏み入れていくのだ。
 この物語がどこへ続くかは、歩いたものにしかわからない。


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