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JK探偵・小野田怜奈の事件簿
最終話「霧の庭と最後の真実」
しおりを挟む新学期の始まりを告げる春の雨が、静かに降っていた。
小野田怜奈は祖父・主税の書斎で、ひとつの古い木箱を見つけた。鍵のかかったその箱は、いつも主税が絶対に触れるなと厳しく言っていたものだ。
「……でも、これはきっと、私に向けて残されたもの」
鍵は、いつかの事件で見つけた懐中時計の中にあった。
開けると、中には一通の手紙と、一冊の古い日記が入っていた。手紙は、父・剛から怜奈に宛てられたものだった。
《怜奈へ。この日記には、君が知るべき“最後の事件”が書かれている。私が死の直前まで追っていた謎。……その結末を託す》
そうして怜奈は、父の遺志を継ぎ、最後の事件へと挑むことになる。
***
日記に記されていた場所は、長野・蓼科高原の一軒家。
20年前、剛が追っていたのは連続失踪事件。5人の若者が姿を消し、全員が最後に訪れていたのがこの別荘だった。
怜奈は母・沙耶と共に現地を訪れ、調査を開始する。
そこに現れたのは、旧知の警視庁捜査一課刑事・黒古だった。
「剛さんが遺した事件か……俺も最後まで付き合うさ」
調査を進めるうちに浮かび上がるのは、一枚のモザイク状の写真。剛が何度も切り貼りしていた断片的な証拠写真だった。
「これは……“全員が同じ影を見ていた”?」
失踪者全員が、ある共通の幻覚、もしくは心理現象を報告していたことが日記に記されていた。
***
屋敷の地下室に隠されていたのは、かつて剛が設置した観察機器と、一本の録音テープだった。
テープの中には、ある人物の声が入っていた。
『彼らは“誰かの記憶”を生きている。過去の罪が、誰かの意識に再投影されたんだ……』
この事件の本質は、集団心理と記憶操作に関わるものだった。
その“操作”を行った人物の名は──剛の親友であり、精神分析医だった「堂嶋洸(どうじま・こう)」。
彼は、精神的トラウマを抱えた青年たちを集め、記憶の再構築によって人格治療を試みていた。
「でも……それって、倫理的には……」
沙耶が呟く。
「父さんは、それを止めようとしてたんだ……。でも事故で──」
剛の死は、偶然ではなかった。
【最終幕:探偵の決着】
堂嶋はすでに失踪していたが、彼が遺した資料の中に、最後の記録が残されていた。
『怜奈へ。もし君がこれを読む日が来たら──すべての謎を解き明かしてほしい』
録画に残っていた映像には、幼い怜奈が、父に向かってこう言っていた。
『お父さん、ぜったいにウソつかないで。わたし、ぜったい全部見つけるから』
……その言葉が、彼の心を支えていたのだ。
そして、怜奈は決断する。
「私は“探偵”として、すべてを暴く。そして、あなたを……許す」
彼女は、父の死の真相、堂嶋の罪、そして被害者たちの名誉回復のため、証拠と記録をすべて警察に提出した。
だがそれは、復讐ではなく、祈りだった。
***
事件から数ヶ月後。
怜奈は高校の屋上で、マルを抱きながら空を見上げていた。
「ねえ、マル。お父さん、きっと向こうで笑ってるよね」
春の風が吹き抜ける。
「これで、私の物語は、ひと区切り。……だけど、きっとまた何か起きるよね」
そう微笑む彼女の胸ポケットには、新しい手帳。
その表紙には、こう書かれていた。
《小野田怜奈探偵事務所──依頼随時受付中》
(完)
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