24 / 45
すしネタ探偵!シャリの上にも三年
【第1巻:マグロと泡だて器と消えたトレーナーの謎】
しおりを挟む「マグロが……泣いてる」
朝イチでネタケースを覗き込んだ平っちは、真顔でつぶやいた。
「ほな目ぇ拭いたれや、ガリでな」
「それ、涙じゃなくてドリップやん!ってツッコんでくれるとこやん!」
バイトリーダーのイサキちゃんは、今日もツッコミ全開である。ちなみに彼女の声量は、寿司ロボのブザー音と互角。
ここは都内某所の回転寿司チェーン「グルグル寿司 本店」。
今日もシャリとともに回るのは、酢飯と謎と、ボケとツッコミだ。
その日、事件は昼営業の直前に起きた。
「店長ォ!冷蔵庫のマグロが……全部、赤くなってます!」
「赤いのは普通だろォォォ!」
店長の海老沢、通称エビテンの見事な江戸っ子ボイスが店内に響きわたる。
だが、問題はそこじゃない。冷蔵庫の棚に置かれていた泡だて器とトレーナーが、忽然と消えていたのだ。
「泡だて器はともかく、なんでトレーナーが冷蔵庫に!?」
「オレの私物なんよ!昨日の帰り寒くて、干してたのよ!厨房で!」
「衛生的にアウトやん!いやツッコむとこ多すぎて泡立ちそうやわ!」
バイトたちの混乱のなか、一人、黙ってシャリを握っていた平っちがふとつぶやく。
「この事件、シャリっと解いてやるぜ」
「黙ってても寒いけど、その決めゼリフはさらに寒いわ」
昼の営業が始まっても、厨房はざわついていた。
「泡だて器がないと、デザートの抹茶ムースが作れませんッ!」
泣きそうな新人バイト・ユウキ。彼は今日が初勤務。なのにいきなりムース担当という謎人事。
そんななか、事件はさらに転がる。
「イカが出てないぞ!イカの皿が一周もしてねえ!」
なんと、人気のイカネタがまるごと消えていた。
「マグロの次はイカやて!?イカれてるわ!」
「寿司だけに、ネタが尽きないね~」
「もうええわ!」
イサキちゃんのツッコミが厨房中に炸裂したとき、平っちはそっとスマホで防犯カメラを巻き戻していた。
「……いた」
映っていたのは、深夜3時に忍び込む人影。それはなんと、昨日来店していた常連客──緑色のトレーナーに黒パンツ、そして泡だて器を腰にさしたパン職人風の男だった!
「つまり、こういうことだ」
平っちが厨房のホワイトボードの前に立ち、板書開始。
1:昨夜、緑のトレーナーの男が来店
2:彼は泡だて器に異様な執着を見せていた(防犯映像より)
3:帰り際に、「この泡だて器、いいですね」と意味深発言
4:深夜に侵入、泡だて器とトレーナー(自分の)を持ち去る
5:ついでに冷蔵庫のマグロを全部「自分の手でなでて」から持ち帰った
「なでただけ!?」
「うん。ドリップの出方が不自然。なでたことで温度変化が起きて、色が変わっただけ」
「なんでそんな変態的な犯行!?」
「愛情だよ。彼は“ネタフェチ”なんだ」
そこに警察が到着。トレーナーを証拠に男を特定。逮捕。
犯人の供述によると、彼は「泡だて器とマグロの肌触りを同時に楽しみたかった」という、誰にも理解されないフェチ心を爆発させたらしい。
「まさかネタへの愛が犯罪に変わるとはな……」
呆れるイサキちゃんに、平っちはウインクして言った。
「でも、犯人の心は泡立ってた。だけど、オレの頭の中はもっとフワフワしてた!」
「一回保健所呼ぶわ!」
ツッコミの声とともに、厨房には笑い声と、今日も新鮮なシャリが流れていく。
「すしネタ探偵、シャリっと解決!今日もネタがウマい!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる


