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すしネタ探偵!シャリの上にも三年
【第2巻:イカとアジサイと大型テレビの密室】
しおりを挟む「イカが消えたんやけど」
平目イサキが厨房に飛び込んでくるなり、ぼそっと言った。
「イカはな……墨を吐いて逃げるからな。つまりこれは……煙に巻かれた事件ってことだ!」
「はい出たー。イカスボケ~!いやボケんでええから真面目に聞いて!」
ここは都内某所の回転寿司「グルグル寿司 本店」。
芸人志望の寿司バイト・須々木平正、通称「平っち」が、今日も寿司ネタにまつわる謎を、ネタ帳より軽い頭で解決する!
厨房の冷蔵庫。いつもぎっしり並んでいるイカの刺し身が、今朝は一皿もなかった。
「マグロもサーモンもあるのに、なんでイカだけ……?」
その謎に加えて、妙なことがもう一つ。
「テーブル席の大型テレビ、勝手に**“紫陽花(あじさい)の育て方講座”**になってるんやけど……」
それは普段、寿司ネタ紹介や回転レーンの映像を映す店のサイネージ。どうやら、誰かが外部のUSBを挿して、勝手に映像を変えたらしい。
「イカ消失に、アジサイの講座……?これはただの園芸趣味の暴走じゃない。事件の香りがする!」
「ネタの臭いよりキツイな……」
「イカ、やっぱり出せないの?」
昼のピーク時、客からの声も上がってきた。
そこへ、スッと手を挙げる男がひとり。
「ワタクシ、イカの件……見たかもしれません」
現れたのは、黒ぶちメガネのインテリ風おじさま。
彼が言うには──
「朝、店の裏で、イカのトレーを抱えて大型テレビの裏に向かう人物を見たんです。ええ、紫色のジャージを着ていました」
「ジャージの色、まさかアジサイの……」
「どんだけ色から連想すんねん!」
裏手の倉庫にある大型テレビの裏を調べてみると、あった。
USBスティック、そして空のイカのトレイ。
「でもおかしいな。なんでテレビの裏に?」
平っちが指をぱちんと鳴らした。
「そうか。犯人は、アジサイの映像を流すためにUSBを使った。だけど、そのUSBの中には証拠隠しの動画が入ってるんだよ!」
再生してみると──映っていたのは、厨房の冷蔵庫からイカを取り出し、ポケットに忍ばせるバイトの姿。犯人は……
「ユウキやん……またかい!!」
前回ムースを泡立てられなかった新人バイト・ユウキが、イカをこっそり持ち帰っていた。
「……すいません。僕、アジサイの育て方を自作でまとめてて……そのUSBを間違えて厨房に挿してしまって……。あと、イカは母が大好物で……」
「だからって冷蔵庫のイカ持ち出したらアカンて!」
イサキちゃんの鉄槌ツッコミが炸裂。
事件は丸くおさまり、イカも追加発注。
犯人(?)のユウキは一週間の謹慎ののち、今は正座でイカをさばいている。
「今回もネタは鮮度命だったな」
「せやな。あとUSBの取り扱いも命やで」
大型テレビには、今は「イカの捌き方講座」が流れている。
次回のための伏線だろうか……いや、多分違う。
「すしネタ探偵、シャリっと解決!今回の教訓は、USBと冷蔵庫は別物です!」
「ほんま、シャリとコタツくらい違うわ!」
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