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姪と僕とのグルメ事件簿
第11話「姫と僕と、高速のつみれミステリー」
しおりを挟む【プロローグ:朝の汁と、消えた帽子】
日曜の朝、高城真は珍しく早起きしていた。
「うーん……うまい……」
手にしていたのは、昨夜の残りのつみれ汁。具材はふんわりしたイワシの団子と根菜、柚子の香りが鼻に抜ける。
そこへ、玄関から元気な足音。
「おじちゃーん!たいへんだよ!あの人がいなくなっちゃったの!」
朝から飛び込んできたのは、姪のひかり(5歳)。保育園の先生が主催する遠足で、朝一番に出かけたはずの「園バスの運転手さん」が、高速道路のパーキングエリアで姿を消したという。
「しかもね、そこに……“野球帽”だけ落ちてたんだって!」
──野球帽。大人の謎。今回の事件は、高速道路と熱い汁の向こう側から始まる。
【第一幕:高速道路と三つの“しるし”】
現場は「中央第六パーキングエリア」。保育園の遠足中、バス運転手の川合信一がトイレに立った後、戻らず行方不明に。残されたのは彼がいつも被っていた赤い野球帽だけ。
警察は一時的な失踪として扱っていたが、園児たちが不安がるため、ひかりは勝手に調査に乗り出した。
「これ、へんだよ。ほんとうに逃げたなら、帽子なんておとしてかないよ?」
ひかりの指摘で、高城も現場を訪れると、帽子のそばに「濡れた汁の跡」と「柚子の香り」が漂っていることに気づく。
「あの……今朝、先生が“朝食に園で配ったつみれ汁”の残りを運転手さんが水筒に入れてたって言ってました」
園の職員の証言により、「つみれ汁」が事件と何らかの関連を持っていることが判明する。
【第二幕:野球帽の裏と、二つの目撃証言】
帽子の裏側には、小さな刺繍があった。「K.S」というイニシャル。
「川合信一……でも待って。“S”って?」
その瞬間、ひかりが別の推理を持ち出す。
「もしかして……このぼうし、ほんとうは川合さんのじゃないかも」
PA内での防犯カメラ映像を確認した結果、帽子をかぶっていた人物が映るのは午前8:14。しかし、その直後の8:17、もう一人の似た体格の男性が、同じ方向から歩いてくる姿が映っていた。
しかもそちらの人物が水筒を持っていた。
「つまり──入れ替わった?」
【第三幕:つみれ汁の“におい”と真犯人】
捜査の結果、帽子をかぶったまま姿を消したのは、実は川合の兄・佐原清志。彼は元トラック運転手で、借金から逃げるために“弟になりすまそう”としていた。
「川合さんは、その計画に気づいていた。でも兄を見捨てられず、高速道路の途中で“すり替わり”に協力した。野球帽と水筒を交換して」
しかし、清志の水筒には“つみれ汁”の臭いが染みついていた。
その香りで、トラックの同乗者が「違和感」に気づき、不審人物として警察に通報。数時間後、清志は高速の別のPAで確保された。
【エピローグ:においと味で分かること】
園に戻ったひかりは、園児たちと一緒にもう一度つみれ汁を食べていた。
「やっぱり、おいしいね!ほんとうのつみれのにおいは、ごまかせないもん」
「うん。においも味も、真実も……ちゃんと見抜ける人にならないとな」
高城は笑って、彼女の隣でもう一杯おかわりをする。
つみれ汁の香りは、どこか温かく、でもその裏には小さな謎の気配があった。
今日もまた、小さな探偵団は一つの真実にたどり着いたのだった。
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