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姪と僕とのグルメ事件簿
第13話「姪と僕と、ピザと法被と最後の一切れ」
しおりを挟む【プロローグ:ピザの香りと、はっぴな事件】
「これ……すっごい、きのこだよ!」
日曜日の午後、ひかりは巨大な段ボールを両手で抱えていた。中には、地域イベントで配られていた試食品「ご当地きのこのピザ」の箱。
「ねえおじちゃん、このピザのおじさん、へんなかおしてたよ?」
ぼく、高城真(33歳・弁護士)は、ひかりとともに近所の商店街の祭りに来ていた。屋台には法被を着た町会の面々、そして人気店「釜焼き本舗」のブースが人だかりを作っていた。
だが、ひかりが「へんなかお」と表現した人物──法被姿の店主・柳井(やない)は、イベント後、突然倒れてしまった。
原因はピザ。配られた一切れに、毒性のある野生きのこが混じっていたのだ。
【第一幕:ピザ一切れと法被の不在】
商店街イベントのピザは、「地元産のきのこを活かした創作ピザ」として3種が焼かれていた。
問題のピザは「香茸(こうたけ)と舞茸のクリームチーズ風味」。だが、柳井のピザには香茸ではなく“ドクアンズタケ”の切れ端が紛れ込んでいた。
当日、柳井は常連にピンバッヂを配っていた。「釜焼き本舗」のロゴが入った小さなバッヂだ。
「みんなが“おそろい”になると、お祭りって感じでしょ?」とにこにこしていた彼だが──その笑顔が最後になるとは、誰も思っていなかった。
【第二幕:ピンバッヂの位置と“きのこの迷子”】
ぼくたちは、町会の会議室で状況を整理していた。
ピザを焼いたのは柳井自身。補助には、大学のきのこ研究会の学生が2名入っていた。調理の様子は、地域の“おもしろ配信”のライブ映像に残っていた。
ところが──映像では、柳井が焼いていたはずのピザの一枚が、途中で別の鉄板に移動していることに気づく。
「ピンバッヂ……おじちゃん、あのバッヂが、“べつのひとの服”にあったよ」
ひかりの指摘で、映像を再確認すると、事件前の数分、柳井の法被にあったピンバッヂが、大学生の一人・泉川(いずみかわ)のエプロンに付け替わっていたことが判明。
「バッヂ、落ちてたから拾って、なんとなく……」
泉川はそう言うが、明らかに故意だった。
【第三幕:毒きのこと、もうひとつのレシピ】
柳井は、きのこの扱いに人一倍慎重だった。使用するきのこはすべて仕入れ品で、地元農協の証明つき。
だが、泉川は、自作の「きのこレシピ」で勝手に混入させていたのだ。
「僕のきのこの方が、“味”が強いんですよ。なのに“地元ルール”ばかり優先されて──」
柳井が焼いたはずのピザを“途中ですり替える”ことで、自分の具材入りピザを彼に食べさせるつもりだった──まさか、そこに毒きのこが混じっていたとは知らずに。
しかも、ピンバッヂは、柳井が配ったもので、誰でも“犯人”に見えるようにする目くらましだった。
しかし、姫の観察は違った。
「このバッヂ、くっつけたあと、ちょっとだけ“チーズのしみ”がついてる」
それは、犯人が厨房でピザに触れたあと、急いでバッヂを拾った証拠だった。
【エピローグ:一切れに、全部つまってる】
柳井は一命をとりとめた。
泉川は「味で勝ちたかっただけ」と自白。故意の毒物混入は否定されたが、過失による傷害未遂で書類送検となった。
「やっぱり、“最後の一切れ”があやしかったね!」
ピザの欠け方、きのこの形、バッヂの位置──その全部を観察していたのは、ひかりだった。
「おじちゃん、きのこもピザも、ちゃんと名前を見てたら、まちがえないのにね」
「うん。証拠も、材料表示も、正しく見ることが大事だ」
「あとね、バッヂはここにつけたら、ピザたべるときにあぶないよ」
ぼくの胸につけられたバッヂを外して、ひかりはにっこり笑った。
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