【完】姪と僕とのグルメ事件簿【ミステリーオムニバスシリーズ1~4】

国府知里

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すしネタ探偵!シャリの上にも三年

【第13巻 タコとスピーカーと点数の海に沈んだ少年】

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平日の午後、グルグル寿司・本店。
レーンの上には寿司が流れ、レーンの下ではトラブルが流れていた。

「店長!スピーカーから、ずっと“タコの鳴き声”が流れてます!」

「タコって、鳴くのかい?」

「それ以前に、なぜ寿司屋のスピーカーから鳴いてんの!?」

「ピーヒョロロロロロ……」

妙な音が店内に響き渡っていた。
しかも寿司の注文コールがすべてタコの声に変換されるというバグ付き。

「注文が入るたびに“タコ鳴き”……!地獄かここは!」

「タコ頼むたびに呼ばれるタコの気持ち、考えたことあるか?」

「いや誰が哲学寄せのツッコミすんねん!」

さらに謎がひとつ。

厨房の裏から発見されたのは──0点のテスト。

答案用紙には、大きく赤で「0」。
しかも全問、“タコ”とだけ書かれている。

「問題文に関係なく、すべて“タコ”と書いてる……」

「解答欄タコまみれやないか!」

「答えがタコだって信じたんだよ。たとえ国語でも、たとえ算数でも!」

「それシュール通り越して、もはや海鮮呪術や!!」

犯人は誰か。
スピーカーはどうしてタコを鳴き続けるのか。
そしてなぜ、厨房の裏に“全力タコ少年の答案”が──

「謎はすべて、サイドメニューの奥に隠れていた」

「いや、そんなところに伏線置くなや!」

容疑者は小学3年生・タクトくん。
週3で来る常連であり、寿司よりもイカとタコをこよなく愛す海鮮オタク。

「ぼくのテスト……返されたその日、涙のスープに沈めたの……」

「スープに沈めるな!しかも厨房の裏に届けるな!」

「スピーカーのタコ音は、ぼくが録音したんだ。“0点でも、タコのことだけはわかる”って叫びたかった」

「叫んじゃったよ!!」

平っちは静かにうなずいた。

「その気持ち、わかるよ……僕も昔、“ボケ”だけで0点取ったことがある」

「なにその“お笑い偏差値”みたいな評価法!」

「“おもんな指数”が高すぎて採点不能だったんだ……」

「おもんな指数ってなんやねん!!」

最終的に、タクトくんの母が迎えに来て、タコスピーカーは停止された。
答案用紙は持ち帰り、家でタコカレーに再利用されたとか(※食べてはいない)。

その日のラストオーダー、店長がぼそっとつぶやく。

「やっぱり、タコの裏にもワサビがあるんだよ……」

「店長、それ、たぶん間違ってますよ」


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