【完】姪と僕とのグルメ事件簿【ミステリーオムニバスシリーズ1~4】

国府知里

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すしネタ探偵!シャリの上にも三年

【第14巻 平目とフライ返しと通行止めと恋ゴコロ】

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 グルグル寿司・本店。
 午前11時、シャリもまだ人肌。だけど事件はいつも突然やってくる。

「おい平っち、あんた今日“魚の気持ち”ってテーマでネタ考えてたんちゃうん?」
「考えてたよ!『この板前、握りが甘い……!』って心の声で始まるやつ」
「まさかの寿司視点コント!? てか、甘いって誉めてんのかディスってんのかハッキリして!」

 ボケとツッコミが入り混じる中、店の表に貼り紙が出された。

【本日、商店街前の通りが工事により通行止めとなります】

「通行止め!? まさかウチの仕込みにも影響が……」

 店長・海老沢(通称エビテン)が絶望の表情で叫ぶ。

「ネタの配達トラックが入れねえ!? ワサビ抜きの人生か、こりゃ……」

 そのとき事件は起きた。

「す、すみませーん!」

 入口から駆け込んできたのは、隣の洋食屋「フライdeナイス」のバイトくん。

「うちの店、厨房が停電して、シェフがショックで“フライ返し”を投げて逃げたんです!」

「ええ!? どこへ!?」

「知らない通行止めの先へ、返しながら……」

「“フライ返し”だけに!?」

「なんで上手いこと言った顔してんのよ平っち!」

 洋食屋の厨房からは煙が。回転寿司の厨房からは魚が。混ざればそれはもうカオス鍋。

 とにかくシェフを探さなければと、平っち&イサキちゃんコンビが動き出す。

 ──通行止めの先へ。

「まさかの寿司屋から道路捜査へ?」
「いや、これはもう“通行捜査”やろ!」

 煙の中を抜け、見つけたのはベンチに腰かけた白衣の男。手には……フライ返し。

「シェフ、どうして……?」

「……人生が、揚げすぎて焦げちまったんだよ」

「揚げすぎ人生て!!」

「もう、なんもフライたくなかった……」

 やたらうまいこと言ってるが、メンタルはボロボロ。

 そこに、平目イサキの優しい声。

「シェフ、気持ちはわかります。でもな……ウチらの平っち、昨日“鯖のネタ”にスベっても生きてるんですよ」

「うん、生きてるよ!今日もスベるよ!」

「スベり宣言すな!」

 そしてそっとイサキがつぶやく。

「……私はね、平っちのボケ見てたら元気出るんです。ちょっとだけ……笑いたくなるんです」

「えっ……え、それって……」

「だから!今日のネタ、ちゃんと考えときや。見とくから」

 イサキちゃん、顔赤い。平っち、耳まで赤い。

「こ、これは……まさかの恋のフライ返し!?」

「誰がうまいこと言え言うた!!」

 こうしてシェフも無事復帰。
 洋食と寿司の異種コラボ「イカフライ握り」がその日の裏メニューとなり、通行止めも解除。

 そして平っち、店内でひとりつぶやく。

「……恋心って、案外シャリに似てるのかもな。あったかくて、やわらかくて……」

「早速ボケろ、そんでスベれ」

「はい、喜んで!」
 
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