【完】姪と僕とのグルメ事件簿【ミステリーオムニバスシリーズ1~4】

国府知里

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すしネタ探偵!シャリの上にも三年

【第16巻 ホタテと銀行マンとMLB】

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 今日も谷間の『グルグル寿司』本店は大盛況……のはずが、寿司レーンの回転より先に回ってきたのは、金髪スーツにサングラスという謎の銀行マン。

「私は、銀行のこの辺の支店の老金マンです。『小谷習平』の友人を探してるんですが。」

「小谷習平!? まさかの、MLBの主打者! 寿司屋の名簿にその名前があったらそれはバグや!」

「てか金髪にサングラスにスーツって、銀行マン界のジョニー・デップですか!」

 平っちが早速ツッコミ一閃。

「いやもう、この時点でトレンドワード5つぐらい入ってるで!」

「まさかここにはいないと思いますけど…」と呟いた老金マンの言葉もつかの間、レーン上のホタテが突然しゃべりだした。

「この三零三の年は、小谷におまかせ。」

「なんでホタテから野球のCM!? ついに寿司ネタに声優ついたんか!」

 すかさずイサキちゃんがツッコミ。

「もうややこしすぎて寿司屋が情報過多フェスやん!」

 そこへ店長・エビテンが満面の笑みで立ち上がった。

「こいつぁワシの推しホタテじゃい! 15年前、小谷がまだ中学生のころから目ぇつけとったんじゃ!」

「推しってアイドルか! てかなんで寿司屋で野球の話がこの密度で飛び交っとるん!」

「ワシにとっては、イチローもマグロも同格よ。打率と脂のノリが命なんだよ!」

「わかりにくいけど、なんか納得しそうになるやつー!」

 そこへさらに、新たな乱入者。

「小谷の兄の兄の兄の兄の兄の兄の兄です。」

「もう親戚の連鎖が長すぎてパスワードにしか見えへん!」

 彼が出したのは、しゃべるホタテを試作した証拠のスケッチブック。

「これ、見てください。ホタテの口からWi-Fiが出る構造になってます。」

「ネット回線まで確保するホタテて何者!? 寿司界のインフルエンサーやん!」

 そこへ、平っちがひときわデカい声で叫ぶ。

「ということは、この事件の犯人は……ホタテだ!!」

「ちがうやろ! 自供してるやん、しゃべってるって!」

 レジ前ではエビテンがホタテを大事そうに抱えて泣いていた。

「ワシのホタテが、メジャー級に光っとるぅぅぅ……!」

 そこへイサキちゃんが、ちょっと照れくさそうに言った。

「なんやかんやで、あんたのスベりっぷり、嫌いちゃうで。」

「告白!? いや、スベり肯定って、芸人にとって最上の褒め言葉や!」

 平っち、シャリを手にホタテを掲げる。

「俺はすし界のスライダー、すべるけど曲がる、そして刺さる。謎解きの変化球や!」

「自分で言うな!」

 そこへ、唐突に巨大スクリーンが現れ、しゃべるホタテが映し出された。

「次回、『サバ、寄生虫、日焼け水着』で会おう。」

「言うとる場合かーーー!!」

 その日、寿司ネタも推理もスベりまくったが、なぜか客の笑顔は絶えなかった。

「笑われてるんちゃう。笑わせとるんや。」

 イサキちゃんが小さく微笑む。

「平っち、それ言うとる時点でスベってるけどな。」

「ほんまの愛は、スベりの先にある!」

 今日も『グルグル寿司』のネタとギャグは、回り続ける──!


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