【完】Nurture ずっと二人で ~ サッカー硬派男子 × おっとり地味子のゆっくり育むピュア恋~【ブルーモーメントオムニバス1~2&5】

国府知里

文字の大きさ
37 / 60
【シリーズ2】あの日君とみた空はこんなにも届かない

【第8章 病室の窓、差し込む光は君のためにあった】

しおりを挟む

「病院って、静かだね」

 優菜がそう言って笑ったのは、病室に入って3日目の午後だった。

 白いシーツ。無機質な天井。規則的に鳴る機械の音。
 窓の外には、空だけが広がっていた。

「うるさいより、いいだろ?」

「そうだけど……ちょっと、寂しい」

 優菜の言葉に、俺は何も言えなかった。

 カーテン越しの光が、彼女の横顔に差し込んでいた。
 その輪郭が、すこしだけ痩せて見えた。

 ***

 放課後、俺はできるだけ病院に通った。
 宿題はスマホで写して、家に帰ってからまとめてやった。

 学校の帰り道、コンビニで買ったアイスや、彼女の好きな雑誌を抱えて、病院のエレベーターを上るのが日課になっていた。

「今日ね、採血で3回も失敗されたの」

「マジか。ドジな看護師さんだな」

「ふふっ……その人、たぶん新人さん。手が震えてた」

「じゃあ許してやるか」

「うん、許す。だって……わたしも震えてたもん」

 優菜は、少しだけ声を震わせながら笑った。

 俺は、手を伸ばして彼女の手を握った。
 あの日、公園で握ったときよりも、少しだけ骨ばっていた。

 でも──まだ温かかった。

 ***

 ある日、彼女がノートを差し出した。

「なにこれ?」

「わたしの“したいことリスト”。いわゆるバケットリスト、ってやつ」

 ページには、小さな文字でびっしりと願いが書かれていた。

 ・花火大会に行きたい
 ・浴衣を着たい
 ・智くんと映画を観たい
 ・また、あの公園でお弁当を食べたい
 ・図書館デートをしたい
 ・一緒に海を見たい
 ・卒業式まで、ちゃんと高校生でいたい

「ぜんぶ、叶えるよ」

「ほんと?」

「絶対に。順番に、ひとつずつ」

「……ありがとう。智くんが、いてくれてよかった」

 そう言って微笑んだ優菜は、少しだけ涙ぐんでいた。

 俺は、ノートを大事に胸に抱えた。
 この願いを叶えるために、俺は何でもしようと決めた。

 ***

 病室の窓から見える空は、どこまでも広くて青かった。
 その空の光は、まるで彼女のために差し込んでいるようだった。

 俺はその光に祈った。

 この空の下で、少しでも長く──彼女と生きられますように、と。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話

そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん! 好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。 ほのぼのラブコメというか日常系小説 オチなどはなく、ただひたすらにまったりします 挿絵や文章にもAIを使用しております。 苦手な方はご注意ください。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

処理中です...