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第一部
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「あの子が短大卒で入社してきた頃さ、彼女、あからさまに社内で、男漁りをしてたんだよね。俺、同期の五十嵐に頼まれて合コンの幹事をやったことがあるんだけど。その時、小川さん……じゃなくて、旧姓は、杉田さんだっけ? 五十嵐が彼女に惚れちゃって、ふたりは付き合ってたんだけど、後で、三股かけられてたって発覚して、結局一カ月くらいで別れたよ。とにかく男癖が悪いので有名で、うちの課の女の子たちも、皆彼女のこと嫌ってるみたいだよ。五十嵐と彼女が付き合ってた時、俺も言い寄られたしね。見境ないんだよなあ。当時、俺は既婚者だったから、相手にしなかったし、そもそも、ああいうあざとい女って俺、苦手なんだよね」
唯香の中で、消化できない疑問が湧き上がってきた。このことを岡崎さんに訊いてよいものかどうか逡巡した後で、思い切って訊いてみることにした。
「そうだったんですね。あの……素朴な疑問なんですけど、お訊きしてもいいですか?」
「うん。俺でわかることなら」
「男の人って、小川さんみたいな女性が好きなんですか? こう言ったら失礼かもしれませんけど……彼女、特別、美人っていうわけでもないし、可愛いってわけでもないですよね? それに……性格もちょっと」
唯香は、思い出したくもない小川美希のビジュアルを思い描いていた。標準体重を大幅に超過しているであろうぽっちゃり(肥満)体系。下膨れの顔、パサパサに痛んだ長い髪をご丁寧にコテで毎朝巻いてくるのか、いつも遅刻ギリギリで出社している。要するに、デブスなのだ。なぜ、そんな女が、次々と男を落としたり、三股かけたりすることができるのか? そのことが、どうしても理解できなかったのだ。
「うーん、そうだねえ……それについては俺も理解に苦しむよ。これは、飽くまでも俺の想像なんだけどね。彼女は自分の容姿が優れていないことを自覚していて、容姿を武器に闘うことはとうに諦めている。じゃあ、何を武器に闘おうか? そこで彼女が選んだ武器が“女”だったんじゃないかな? 男なんて皆バカだからさ、多少、見た目に難がある女でも、自分のことをちやほやしてくれる女に対しては悪い気はしない筈なんだよ。それに、彼女は“女”をぷんぷん匂わせることで簡単に落ちそうな、あまり女に免疫のない男を故意に選んでいる気がするんだよね」
「なるほど。でも、彼女、岡崎さんにも言い寄ってきたんですよね? 岡崎さんは女性に免疫がないようには見えないんですけど」
「そう? 俺、全然モテないよー。でも、強いて理由を考えるなら、俺、あの時、嫁とうまくいってなかったから、つけ入る隙があると思われたんだろうね。逆パターンを想像してみてよ。男だって、つけ入る隙がある女の方が手っ取り早く落とせるって思うじゃん? その点、成瀬さんは、まったくもってつけ入る隙がないんだよなあ。美人だし、高嶺の花って感じでさ。アプローチするにはけっこうな勇気が要るよね」
岡崎さんが、熱っぽい視線を向けてきたので、思わず、唯香は俯いてしまった。
「そんなこと……全然ないんです。寧ろ、隙だらけっていう感じで」
唯香は、もごもごと口ごもった。
「そうなんだ? それじゃあさ…今度、ふたりでゴハン食べに行かない?」
「へっ?」
「こんなバツイチの男とじゃイヤかな?」
「そ……そんなことないです。行きたいです。ゴハン食べに」
唯香の中で、消化できない疑問が湧き上がってきた。このことを岡崎さんに訊いてよいものかどうか逡巡した後で、思い切って訊いてみることにした。
「そうだったんですね。あの……素朴な疑問なんですけど、お訊きしてもいいですか?」
「うん。俺でわかることなら」
「男の人って、小川さんみたいな女性が好きなんですか? こう言ったら失礼かもしれませんけど……彼女、特別、美人っていうわけでもないし、可愛いってわけでもないですよね? それに……性格もちょっと」
唯香は、思い出したくもない小川美希のビジュアルを思い描いていた。標準体重を大幅に超過しているであろうぽっちゃり(肥満)体系。下膨れの顔、パサパサに痛んだ長い髪をご丁寧にコテで毎朝巻いてくるのか、いつも遅刻ギリギリで出社している。要するに、デブスなのだ。なぜ、そんな女が、次々と男を落としたり、三股かけたりすることができるのか? そのことが、どうしても理解できなかったのだ。
「うーん、そうだねえ……それについては俺も理解に苦しむよ。これは、飽くまでも俺の想像なんだけどね。彼女は自分の容姿が優れていないことを自覚していて、容姿を武器に闘うことはとうに諦めている。じゃあ、何を武器に闘おうか? そこで彼女が選んだ武器が“女”だったんじゃないかな? 男なんて皆バカだからさ、多少、見た目に難がある女でも、自分のことをちやほやしてくれる女に対しては悪い気はしない筈なんだよ。それに、彼女は“女”をぷんぷん匂わせることで簡単に落ちそうな、あまり女に免疫のない男を故意に選んでいる気がするんだよね」
「なるほど。でも、彼女、岡崎さんにも言い寄ってきたんですよね? 岡崎さんは女性に免疫がないようには見えないんですけど」
「そう? 俺、全然モテないよー。でも、強いて理由を考えるなら、俺、あの時、嫁とうまくいってなかったから、つけ入る隙があると思われたんだろうね。逆パターンを想像してみてよ。男だって、つけ入る隙がある女の方が手っ取り早く落とせるって思うじゃん? その点、成瀬さんは、まったくもってつけ入る隙がないんだよなあ。美人だし、高嶺の花って感じでさ。アプローチするにはけっこうな勇気が要るよね」
岡崎さんが、熱っぽい視線を向けてきたので、思わず、唯香は俯いてしまった。
「そんなこと……全然ないんです。寧ろ、隙だらけっていう感じで」
唯香は、もごもごと口ごもった。
「そうなんだ? それじゃあさ…今度、ふたりでゴハン食べに行かない?」
「へっ?」
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