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第一部
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「それで、唯香ちゃんは、これからどうするつもりなの?」
タケルの琥珀色の瞳に唯香の姿が映し出されていた。
「とりあえず、有給使って休むって宇野沢に許可とってきたから、一週間くらいのんびり考えようかなあって。あれだけ派手にやっちゃったし、転職せざるを得ないかもねえ」
「気分転換にどこか出掛ける?」
「はあ? そりゃあ、別にいいけどさ。アンタ、家の方大丈夫なわけ? 私、嫁さんに訴訟起こされたりしたら困るんだけど」
「ああ、俺の方は大丈夫! 今、嫁、子供連れて、向こうの親たちとパリに旅行中だから」
思わず、唯香はアイスコーヒーを吹き出しそうになった。
「ええっ? 何それ? なんで、アンタ、一緒に行かないわけ?」
「俺さ、こんなんだからさ、向こうの家族にめっちゃ嫌われてるんだよねえ。まあ、結婚自体、向こうの親の反対押し切ってした感じだし……まあ、嫌われて当然だよね。俺、全然、紀伊家の家柄に相応しくないし。まあ、それでも、向こうのお義父さんとお義母さんが娘と孫たちのことは可愛いくて仕方ないって感じだから良かったよ。嫌われるのは俺ひとりで充分さっ」
タケルの表情が少しだけ翳った。
「アンタも、いろいろと苦労してるのねえ」
「まあ、俺の方の問題は昨日今日に始まったことじゃないからさ。それより、今は、唯香ちゃんの問題の方が深刻だよ」
「まあねえ……なんで、あんなに派手にキレちゃったかなあ? これじゃあ、あの女の思うつぼだよねえ。今頃、私の悪口言いふらされてるんだろうなあ。ああ、胃が痛い」
「唯香ちゃんはさ、昔から不器用な生き方してるよねえ。せっかく美人に生まれてきたのにさあ、勿体ないよねえ。他の女たちなんて、うまいこと狡猾に立ち回ってるけどねえ。唯香ちゃんは真面目だし正しいと思うよ。それでもさ、もうちょっと、あざとく立ち回らないと、小川さんみたいなずるい女に振り回される一方だよ。ていうか、小川さんみたいなわかりやすい女はまだマシかもよ? 彼女みたいなタイプの女は、たぶん、唯香ちゃん以外の人たちからも嫌われている筈だから、勝手に自滅してくれると思うんだよねえ。まあ、周りがバカばっかりだったら話にならないけど。そういう女よりもさ、おとなしそう、いい人そう、私、無害ですよーって顔に書いてあるみたいな女の方の方が、もっとたちが悪いからねえ」
「うん……わかってるんだよお。そんな風に器用に立ち回れたら、とうの昔に人並の幸せ手に入れてるはずなんだよ。こんな筈じゃなかったんだよお」
そう言いながら、唯香は、伸び掛けのボブヘアに手櫛を入れて、わしゃわしゃと乱した。刹那、タケルが、唯香の背後から唯香を抱きしめ、耳元で囁いた。
「もしかして、唯香ちゃん、俺と出逢っちゃったこと、後悔してる?」
タケルの心臓の鼓動が、息遣いが、唯香の理性を奪った。
タケルの琥珀色の瞳に唯香の姿が映し出されていた。
「とりあえず、有給使って休むって宇野沢に許可とってきたから、一週間くらいのんびり考えようかなあって。あれだけ派手にやっちゃったし、転職せざるを得ないかもねえ」
「気分転換にどこか出掛ける?」
「はあ? そりゃあ、別にいいけどさ。アンタ、家の方大丈夫なわけ? 私、嫁さんに訴訟起こされたりしたら困るんだけど」
「ああ、俺の方は大丈夫! 今、嫁、子供連れて、向こうの親たちとパリに旅行中だから」
思わず、唯香はアイスコーヒーを吹き出しそうになった。
「ええっ? 何それ? なんで、アンタ、一緒に行かないわけ?」
「俺さ、こんなんだからさ、向こうの家族にめっちゃ嫌われてるんだよねえ。まあ、結婚自体、向こうの親の反対押し切ってした感じだし……まあ、嫌われて当然だよね。俺、全然、紀伊家の家柄に相応しくないし。まあ、それでも、向こうのお義父さんとお義母さんが娘と孫たちのことは可愛いくて仕方ないって感じだから良かったよ。嫌われるのは俺ひとりで充分さっ」
タケルの表情が少しだけ翳った。
「アンタも、いろいろと苦労してるのねえ」
「まあ、俺の方の問題は昨日今日に始まったことじゃないからさ。それより、今は、唯香ちゃんの問題の方が深刻だよ」
「まあねえ……なんで、あんなに派手にキレちゃったかなあ? これじゃあ、あの女の思うつぼだよねえ。今頃、私の悪口言いふらされてるんだろうなあ。ああ、胃が痛い」
「唯香ちゃんはさ、昔から不器用な生き方してるよねえ。せっかく美人に生まれてきたのにさあ、勿体ないよねえ。他の女たちなんて、うまいこと狡猾に立ち回ってるけどねえ。唯香ちゃんは真面目だし正しいと思うよ。それでもさ、もうちょっと、あざとく立ち回らないと、小川さんみたいなずるい女に振り回される一方だよ。ていうか、小川さんみたいなわかりやすい女はまだマシかもよ? 彼女みたいなタイプの女は、たぶん、唯香ちゃん以外の人たちからも嫌われている筈だから、勝手に自滅してくれると思うんだよねえ。まあ、周りがバカばっかりだったら話にならないけど。そういう女よりもさ、おとなしそう、いい人そう、私、無害ですよーって顔に書いてあるみたいな女の方の方が、もっとたちが悪いからねえ」
「うん……わかってるんだよお。そんな風に器用に立ち回れたら、とうの昔に人並の幸せ手に入れてるはずなんだよ。こんな筈じゃなかったんだよお」
そう言いながら、唯香は、伸び掛けのボブヘアに手櫛を入れて、わしゃわしゃと乱した。刹那、タケルが、唯香の背後から唯香を抱きしめ、耳元で囁いた。
「もしかして、唯香ちゃん、俺と出逢っちゃったこと、後悔してる?」
タケルの心臓の鼓動が、息遣いが、唯香の理性を奪った。
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