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第一部
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昨晩降った雨がもたらした湿気と急激に上がった室温が絡み合って、もわっとした空気の塊が唯香の眠りを妨げた。
「うっ、うーーーーーん」
と呻き声を上げる唯香。
「なん……ベッド、狭いんだけど」
寝ぼけながら、唯香は隣に眠っている生温かい“モノ”を思い切り蹴り飛ばした。「ウゲッ!」という奇声を上げながら、ベッドから転がり落ちたのは、全裸のタケルだった。
「えっ? 何? 今の生々しい感触?」
唯香は、ガバッと掛け布団を蹴り上げ、ショーツだけの淫らな姿でいる自分に気付き、思わず悲鳴をあげた。床の上に転がり落ちたタケルが、むくりと起き上がり、寝ぼけ眼で
「あっ、おはよう、唯香ちゃん!」
と、前も隠さず、呑気に挨拶をしてきた。
「アンタ……その、あれだ! まず、そのお稲荷さんを収納しろ!」
「ええっ? 唯香ちゃん、照れてるのお? 俺たち、今更、こんなことで照れるような関係じゃないじゃあん」
タケルは、生欠伸をしながら言った。
「アンタと私が恋人同士だった頃と今とじゃ、話が違ってくるんだよ! で、その……私、あまり記憶がないんだけど……アンタと私、やっちゃったの?」
唯香は恐る恐るタケルに尋ねた。タケルは、おどおどする唯香を見て、笑いを堪えている。
「昨日の唯香ちゃん、色っぽかったなあ。積極的だったしー」
「まじか。やっちまったのか……」
シュンと項垂れる唯香の姿を見たタケルが、吹き出した。
「嘘だってば! 唯香ちゃん、かなり疲れてたみたいで、途中で寝落ちしちゃったから、してないよ」
「アンタ、寝込みを襲ったりしてないでしょうね?」
「俺、無理矢理とかそういう趣味ないし」
「まあ、確かに。じゃあ、本当に私たちはやってないのね?」
「やってない、やってない! 未遂だってば!」
「そうか。良かった。他人様の旦那様に手を出したら、大変なことになるからね」
唯香は胸を撫でおろした。
「俺……やっぱり、唯香ちゃんと結婚した方が良かったのかなあ?」
タケルの呟きは、唯香の耳には届いていないようだった。
「うっ、うーーーーーん」
と呻き声を上げる唯香。
「なん……ベッド、狭いんだけど」
寝ぼけながら、唯香は隣に眠っている生温かい“モノ”を思い切り蹴り飛ばした。「ウゲッ!」という奇声を上げながら、ベッドから転がり落ちたのは、全裸のタケルだった。
「えっ? 何? 今の生々しい感触?」
唯香は、ガバッと掛け布団を蹴り上げ、ショーツだけの淫らな姿でいる自分に気付き、思わず悲鳴をあげた。床の上に転がり落ちたタケルが、むくりと起き上がり、寝ぼけ眼で
「あっ、おはよう、唯香ちゃん!」
と、前も隠さず、呑気に挨拶をしてきた。
「アンタ……その、あれだ! まず、そのお稲荷さんを収納しろ!」
「ええっ? 唯香ちゃん、照れてるのお? 俺たち、今更、こんなことで照れるような関係じゃないじゃあん」
タケルは、生欠伸をしながら言った。
「アンタと私が恋人同士だった頃と今とじゃ、話が違ってくるんだよ! で、その……私、あまり記憶がないんだけど……アンタと私、やっちゃったの?」
唯香は恐る恐るタケルに尋ねた。タケルは、おどおどする唯香を見て、笑いを堪えている。
「昨日の唯香ちゃん、色っぽかったなあ。積極的だったしー」
「まじか。やっちまったのか……」
シュンと項垂れる唯香の姿を見たタケルが、吹き出した。
「嘘だってば! 唯香ちゃん、かなり疲れてたみたいで、途中で寝落ちしちゃったから、してないよ」
「アンタ、寝込みを襲ったりしてないでしょうね?」
「俺、無理矢理とかそういう趣味ないし」
「まあ、確かに。じゃあ、本当に私たちはやってないのね?」
「やってない、やってない! 未遂だってば!」
「そうか。良かった。他人様の旦那様に手を出したら、大変なことになるからね」
唯香は胸を撫でおろした。
「俺……やっぱり、唯香ちゃんと結婚した方が良かったのかなあ?」
タケルの呟きは、唯香の耳には届いていないようだった。
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