成瀬さんは世渡りが下手すぎる

喜島 塔

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第一部

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 数分後、総務部人事課長の中井課長と、モノトーンのチェック柄の事務服を身に纏った痩せ型の二十代後半くらいの女性社員が第2会議室へ現れた。宇野沢と中井課長は、顔を見合わせるや否や、

「このたびはご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありませんでした」
 と言って、お互いに深く頭を下げた。痩せ型の女性社員も、恰幅の良い中井課長の後ろに隠れるようにして頭を下げたので、何のことやらわけがわからないが、場の雰囲気に合わせて唯香も頭を下げた。宇野沢はふたりに腰掛けるように促すと、また、内線電話の受話器をとり、

「高部さん? うん、そうそう。第2会議室。お客様用のいちばん良いコーヒーふたつ持って来てくれる? そうそう! 『ブルーマウンテン』ってラベルに書いてあるやつね。はい、すみません。お願いしまーす」
 と言った。

「この度は、うちの若村わかむらが、取返しのつかないことをしてしまい本当に申し訳ありませんでした。謝罪して許されることではないことは重々承知しておりますが、本人も深く反省しておりまして、それなりの処分も今検討しておりますので、どうか、このとおり」

 そう言って、中井課長はテーブルの上に額がつくくらい深々と頭を下げた。若村という女性社員も深々と頭を下げた。

「ああ! どうか頭をお上げください! 元を正せば、今回の事件、原因はうちの小川にあったわけですから。ここは、穏便に事を済ませましょう」
 宇野沢が言った。

(『今回の事件』って何? 小川が関係しているわけ?)

 自分だけ蚊帳の外に置かれたまま話が進行することに苛立ちを感じた唯香は、

「あの、すみません。私、今回の事件とやらに関係しているのでしょうか? 私は、宇野沢課長と退職についての話をしていたのであって、私の退職の話が今回の事件とやらに関係しないのであれば、私は一旦席を外した方がよろしいかと思うのですが、いかがでしょうか?」
 と発言した。

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