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第一部
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八角重工業株式会社 社員各位
【営業統括部 第一営業課 小川美希の職務怠慢について】
上記社員について、懲戒解雇処分を要求します。
上記社員は、去る年六月二十六日(月)から六月三十日(金)の期間に於いて、
子女の発熱等の体調不良を理由に欠勤していたが、それは、虚偽の欠勤理由であった。
上記社員の子女を預かっている保育所の職員に確認したところ、その期間すべてにおいて、子女はとても元気であり、健康上の問題はまったくなかったという証言がとれている。
上記社員は、虚偽の欠勤理由で長期欠勤をしている間、配偶者ではない男性と不適切な行いを連日複数回に渡って行っていたという、社会人としてあるまじき行為に及んでいる。
上記の事柄が真実であることの証拠書類を添付いたしますので、お目通し頂き、よろしくお取り計らいくださいますようお願い申し上げます。
□□□
これが、本文の内容。そして、添付書類を開くと、小川と長身の男がラブホテルに足を踏み入れるところを激写した写真と、事を済ませ出てきたところの写真が唯香の目に飛び込んだ。このような写真が複数枚有り、日付はいずれも六月二十六日から六月三十日になっている。ちょうど四半期決算の時期。唯香が小川の尻ぬぐいを散々させられ苛々していた時期と一致する。
(あの、くそあまっ!)
未だかつて経験したことがないほどの怒りが唯香の内側からぐつぐつと沸き起こってきて、胃がきりきりと痛み出した。唇を噛みしめながら、動画ファイルを開いた。モザイクがかかっていて声も補正されているが、小川の娘が預けられていると思われる保育所の保育士が、
「えっ? 美玖ちゃんですか? その期間でしたら、美玖ちゃん毎日元気に、お友達と遊んでましたけど? あれっ? これ、言っちゃまずかったですか? え? 拡散する? それは困りますう。私が発言したってバレたら信用問題になっちゃいますう……そうですかあ? そういうことでしたら、この動画使って頂いて構わないですけどお、私のことは絶対に巻き込まないでくださいよねっ!」
賄賂でも受け取ったのだろうか? 動画を拡散することを拒絶していた保育士が、態度を軟化させた。きっと、この保育士も、小川のことが好きではないのだろう、と、唯香は思った。
「最悪ですね」
一連の書類や動画に目を通したあとで、唯香は小川に対する怒りを通り越し笑いが込み上げてきた。
「これ、全社員にメールしたのって、本当に若村さんなんですか?」
「はい……全部、私がやりました」
「どうして? 小川さんのことを嫌っている女性社員が多いのは分かるけど、ここまで思い切ったことをしたってことは、それなりの事情があるのでしょう?」
若村の瞳から、堪えていた涙がぽろぽろと零れ落ちた。
八角重工業株式会社 社員各位
【営業統括部 第一営業課 小川美希の職務怠慢について】
上記社員について、懲戒解雇処分を要求します。
上記社員は、去る年六月二十六日(月)から六月三十日(金)の期間に於いて、
子女の発熱等の体調不良を理由に欠勤していたが、それは、虚偽の欠勤理由であった。
上記社員の子女を預かっている保育所の職員に確認したところ、その期間すべてにおいて、子女はとても元気であり、健康上の問題はまったくなかったという証言がとれている。
上記社員は、虚偽の欠勤理由で長期欠勤をしている間、配偶者ではない男性と不適切な行いを連日複数回に渡って行っていたという、社会人としてあるまじき行為に及んでいる。
上記の事柄が真実であることの証拠書類を添付いたしますので、お目通し頂き、よろしくお取り計らいくださいますようお願い申し上げます。
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これが、本文の内容。そして、添付書類を開くと、小川と長身の男がラブホテルに足を踏み入れるところを激写した写真と、事を済ませ出てきたところの写真が唯香の目に飛び込んだ。このような写真が複数枚有り、日付はいずれも六月二十六日から六月三十日になっている。ちょうど四半期決算の時期。唯香が小川の尻ぬぐいを散々させられ苛々していた時期と一致する。
(あの、くそあまっ!)
未だかつて経験したことがないほどの怒りが唯香の内側からぐつぐつと沸き起こってきて、胃がきりきりと痛み出した。唇を噛みしめながら、動画ファイルを開いた。モザイクがかかっていて声も補正されているが、小川の娘が預けられていると思われる保育所の保育士が、
「えっ? 美玖ちゃんですか? その期間でしたら、美玖ちゃん毎日元気に、お友達と遊んでましたけど? あれっ? これ、言っちゃまずかったですか? え? 拡散する? それは困りますう。私が発言したってバレたら信用問題になっちゃいますう……そうですかあ? そういうことでしたら、この動画使って頂いて構わないですけどお、私のことは絶対に巻き込まないでくださいよねっ!」
賄賂でも受け取ったのだろうか? 動画を拡散することを拒絶していた保育士が、態度を軟化させた。きっと、この保育士も、小川のことが好きではないのだろう、と、唯香は思った。
「最悪ですね」
一連の書類や動画に目を通したあとで、唯香は小川に対する怒りを通り越し笑いが込み上げてきた。
「これ、全社員にメールしたのって、本当に若村さんなんですか?」
「はい……全部、私がやりました」
「どうして? 小川さんのことを嫌っている女性社員が多いのは分かるけど、ここまで思い切ったことをしたってことは、それなりの事情があるのでしょう?」
若村の瞳から、堪えていた涙がぽろぽろと零れ落ちた。
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