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第一部
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「美希……小川さんと私は同期で、最初の頃は仲が良かったんです。彼女も独身で結婚願望があったから、よく一緒に合コンに行ったりしてました。小川さんが幹事をしてくれた合コンで、私、彼氏ができて、結婚の話も出ていたんです。でも、小川さんは、そのことが面白くなかったみたいで、彼氏に私の嘘の悪口を言った挙句、その……強引に盗られちゃったんです」
「小川さんの肩を持つ気はさらさらないけど、遺恨があったのなら、ふたりで話し合うことはできなかったの? こんな大それたことができるんだから、それくらいのことできそうなもんだけどねえ」
「美希に、どういうつもりなのか、問い質したことがあるんですけど、謝罪の言葉も反省している素振りもなくて、いつか、痛い目に遭わせてやろうと思っていたんです」
唯香と若村の女子トークを聞きながら、宇野沢と中井課長のふたりは、まごまごしていた。
「そうだったのね。仕事に私情を挟むことは関心できたことじゃないけど。私も、小川と私情を挟んで大喧嘩した身だから、あなたのこと責める権利はないわ」
そう言うと、若村が堪らず笑った。
「だいぶ、派手にされたようですね。小川さん、右手に包帯巻いて総務部にも来ましたよ。本当に、成瀬さんが美希を突き飛ばしてケガさせたんですか? どう見ても、美希の方が、成瀬さんを突き飛ばしそうなイメージなんですけど」
「もうっ! そんなの小川の嘘よっ! 私が不在なのをいいことに好き勝手やってくれたのねっ!」
「大丈夫ですよ。みんな、小川さんの言うことなんて信じていませんから。ご安心ください」
若村と話をしたことで、唯香のモヤモヤが少しだけ晴れた気がした。
「あの、宇野沢課長」
突然、唯香から話を振られた宇野沢は、またもや、お客様用のブルーマウンテンコーヒーを溢した。
「はい。何でしょう?」
「私、退職の件、なかったことにしてもいいですか? 勝手を言って申し訳ないのですが」
「も、もちろんだよっ! 成瀬さんがいないと、うちの課は仕事が回らないんだからっ! 考え直してくれてありがとう! 次、成瀬さんの補佐につける人は、しっかり仕事をする人にするからね」
「ありがとうございます。宇野沢課長。それと……私がとやかく口出しできることでないことは重々承知しておりますが、若村さんの処分を軽くしてあげることはできませんか? もう、彼女がどうなるのかは決まっているのですか?」
宇野沢に代わって、中井課長が答えた。
「その件なんだけどね、最初は、全社員に一斉メールを送付して個人のことを貶めるという行為を重く見て、懲戒解雇処分が下されるはずだったんだけどね。若村さん、普段の仕事も真面目でしっかり責任もって取り組んでるし、同僚からの評判もとても良くてね。どうか、若村さんを解雇しないでくださいっていう署名が集まったんだよね。まあ、会社側としては異例の措置なんだけど、彼女は、二週間の自宅謹慎とその後、総務部人事課から管理部業務課に異動になるということで処分は決まったよ」
「それを聞いて安心いたしました。今回の件は、直接的ではなくても、私も無関係とは言えませんから」
この場は、なんとなく丸く収まったようだけれど、唯香は釈然としなかった。そうだ。岡崎さんだ。岡崎さんは、何らかの策を講じて唯香を苦境から救い出してくれると約束してくれた。今回の事件に岡崎さんは絡んでいるのだろうか? 絡んでいるとしたら、岡崎さんと若村沙織との間に何かしら親密な関係があるということになるが……
岡崎さんに確認してみようと、唯香は思った。
「小川さんの肩を持つ気はさらさらないけど、遺恨があったのなら、ふたりで話し合うことはできなかったの? こんな大それたことができるんだから、それくらいのことできそうなもんだけどねえ」
「美希に、どういうつもりなのか、問い質したことがあるんですけど、謝罪の言葉も反省している素振りもなくて、いつか、痛い目に遭わせてやろうと思っていたんです」
唯香と若村の女子トークを聞きながら、宇野沢と中井課長のふたりは、まごまごしていた。
「そうだったのね。仕事に私情を挟むことは関心できたことじゃないけど。私も、小川と私情を挟んで大喧嘩した身だから、あなたのこと責める権利はないわ」
そう言うと、若村が堪らず笑った。
「だいぶ、派手にされたようですね。小川さん、右手に包帯巻いて総務部にも来ましたよ。本当に、成瀬さんが美希を突き飛ばしてケガさせたんですか? どう見ても、美希の方が、成瀬さんを突き飛ばしそうなイメージなんですけど」
「もうっ! そんなの小川の嘘よっ! 私が不在なのをいいことに好き勝手やってくれたのねっ!」
「大丈夫ですよ。みんな、小川さんの言うことなんて信じていませんから。ご安心ください」
若村と話をしたことで、唯香のモヤモヤが少しだけ晴れた気がした。
「あの、宇野沢課長」
突然、唯香から話を振られた宇野沢は、またもや、お客様用のブルーマウンテンコーヒーを溢した。
「はい。何でしょう?」
「私、退職の件、なかったことにしてもいいですか? 勝手を言って申し訳ないのですが」
「も、もちろんだよっ! 成瀬さんがいないと、うちの課は仕事が回らないんだからっ! 考え直してくれてありがとう! 次、成瀬さんの補佐につける人は、しっかり仕事をする人にするからね」
「ありがとうございます。宇野沢課長。それと……私がとやかく口出しできることでないことは重々承知しておりますが、若村さんの処分を軽くしてあげることはできませんか? もう、彼女がどうなるのかは決まっているのですか?」
宇野沢に代わって、中井課長が答えた。
「その件なんだけどね、最初は、全社員に一斉メールを送付して個人のことを貶めるという行為を重く見て、懲戒解雇処分が下されるはずだったんだけどね。若村さん、普段の仕事も真面目でしっかり責任もって取り組んでるし、同僚からの評判もとても良くてね。どうか、若村さんを解雇しないでくださいっていう署名が集まったんだよね。まあ、会社側としては異例の措置なんだけど、彼女は、二週間の自宅謹慎とその後、総務部人事課から管理部業務課に異動になるということで処分は決まったよ」
「それを聞いて安心いたしました。今回の件は、直接的ではなくても、私も無関係とは言えませんから」
この場は、なんとなく丸く収まったようだけれど、唯香は釈然としなかった。そうだ。岡崎さんだ。岡崎さんは、何らかの策を講じて唯香を苦境から救い出してくれると約束してくれた。今回の事件に岡崎さんは絡んでいるのだろうか? 絡んでいるとしたら、岡崎さんと若村沙織との間に何かしら親密な関係があるということになるが……
岡崎さんに確認してみようと、唯香は思った。
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