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第二部
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酔いつぶれたふたりが起きた時、すでに時計の針は正午をまわっていた。
「あっ! ヤバい! 今夜、嫁、コンサートツアーから帰ってくるから、部屋片付けて夜ご飯つくっておかなくちゃ!」
「そうなの? 急いで支度しなよ!」
手早く身支度を整えたタケルをエントランスまで見送りに行った唯香は、これで、タケルと会うのが最後だと思うと、長年生活を共にしたペットと別れなければならないような虚ろな気持ちになった。
「唯香ちゃん、岡崎さんと幸せな家庭を築いてね! 結婚式の招待状待ってる……って、俺が行っちゃまずいか」
そう言いながら、タケルは無邪気に笑った。
「うん……今まで言えなかったけど……」
「なあに? あらたまっちゃって」
「タケル……ありがとう! 私、無神経で、アホで、お調子者で、天真爛漫なアンタにたくさん助けられたの。アンタが居てくれなかったら、私、もっともっと卑屈になってたと思うの……本当に感謝してるの」
「ええっ! 唯香ちゃんが俺のことを褒めてくれるなんて初めてじゃない?」
「そうよ。これが、最初で最後の褒め言葉!」
「ありがとう! 俺、唯香ちゃんの言葉一生忘れない! ていうか、今生の別れじゃないんだから明るくいこう! 唯香ちゃんには俺みたいなちゃらんぽらんじゃなくて、岡崎さんみたいなカッコよくてしっかりした人が似合うし、絶対に幸せになれる! だから、そんな寂しそうな顔しないで笑ってよ、ね!」
「うん、そうだね! 私、アンタに負けないくらい幸せになってやるからっ!」
「うんっ! それでこそ、唯香ちゃんだよっ! じゃ、俺、行くね! Be happy!」
そう言って、タケルは去っていった。この時、唯香とタケルを陰から射抜くような目で見ている人の存在に、ふたりはまったく気付いていなかった。
「あっ! ヤバい! 今夜、嫁、コンサートツアーから帰ってくるから、部屋片付けて夜ご飯つくっておかなくちゃ!」
「そうなの? 急いで支度しなよ!」
手早く身支度を整えたタケルをエントランスまで見送りに行った唯香は、これで、タケルと会うのが最後だと思うと、長年生活を共にしたペットと別れなければならないような虚ろな気持ちになった。
「唯香ちゃん、岡崎さんと幸せな家庭を築いてね! 結婚式の招待状待ってる……って、俺が行っちゃまずいか」
そう言いながら、タケルは無邪気に笑った。
「うん……今まで言えなかったけど……」
「なあに? あらたまっちゃって」
「タケル……ありがとう! 私、無神経で、アホで、お調子者で、天真爛漫なアンタにたくさん助けられたの。アンタが居てくれなかったら、私、もっともっと卑屈になってたと思うの……本当に感謝してるの」
「ええっ! 唯香ちゃんが俺のことを褒めてくれるなんて初めてじゃない?」
「そうよ。これが、最初で最後の褒め言葉!」
「ありがとう! 俺、唯香ちゃんの言葉一生忘れない! ていうか、今生の別れじゃないんだから明るくいこう! 唯香ちゃんには俺みたいなちゃらんぽらんじゃなくて、岡崎さんみたいなカッコよくてしっかりした人が似合うし、絶対に幸せになれる! だから、そんな寂しそうな顔しないで笑ってよ、ね!」
「うん、そうだね! 私、アンタに負けないくらい幸せになってやるからっ!」
「うんっ! それでこそ、唯香ちゃんだよっ! じゃ、俺、行くね! Be happy!」
そう言って、タケルは去っていった。この時、唯香とタケルを陰から射抜くような目で見ている人の存在に、ふたりはまったく気付いていなかった。
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