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第二部
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唯香が、職場の人たちの自分に対する態度に異変を感じるようになったのは、九月の中間決算が終わった頃、丁度、山崎洋子が派遣社員から正社員へと昇格した頃だった。
山崎洋子は入社してからしばらくの間は、昼ご飯は唯香と一緒に社員食堂かカフェテリアに行くか、それ以外は自分の席でコンビニで買ってきたお弁当やカップラーメンを食べていた。課内の既婚女性社員の大半は、空いている会議室で持参してきたお弁当を一緒に食べていたから、皆と親交を深めたいなら、そこで昼食をとることもありだと唯香は山崎洋子に勧めていたが彼女は、
「私は、独身だから、皆さんの話についていけなくて肩身の狭い思いをすると思うし、皆さんに気を遣わせてしまうのも申し訳ないので」
という理由のもとに、頑なにその会に混ざろうとはしなかった。
しかし、山崎洋子が正社員に昇格するのと同時に、彼女は職場のランチタイムを女性社員たちと一緒に空き会議室で過ごすようになった。今までは派遣社員という立場を弁えて遠慮していたのかもしれない。もともと、唯香は職場での貴重な昼休みをひとりで自由に過ごすことが好きだったし、これからは山崎洋子に気を遣わなくても良くなったのだから、別に悪いことではない。しかし、昼休みのチャイムが鳴ると同時にどこかに姿を眩ませていた新卒社員の高部美里愛まで、ランチ女子会に参加するようになったのは驚きだった。確か、彼女は密かにボカロPになることが夢で、昼休みは、人目につかない場所で作曲をしているともっぱらの噂だったからだ。
まあ、この程度のことは、唯香にとって気に病むほどのことではない。ただ、出社時に給湯室などで女性社員たちがひそひそ話をしている場へ唯香が足を踏み入れると、蜘蛛の子を散らすようにいなくなったり、急にわざとらしく話題を変えたりするのは、唯香のストレスとなっていた。
(はあ……女同士のくだらないマウンティングに付き合わされるのも勘弁だけど、こういうあからさまな爪弾きもけっこうメンタルにくるのよねえ)
岡崎さんとの結婚へ向けた準備が順調に進んでいることが唯香の唯一の救いとなり、唯香のメンタルはなんとか保たれていた。
(この会社も岡崎さんと結婚したら、おさらばなんだから! 多少の嫌がらせはなんてことないしっ!)
そう思いながら、昼休み残り十五分を残し持ち場に戻る途中で、唯香は信じられない光景を目の当たりにした。
山崎洋子は入社してからしばらくの間は、昼ご飯は唯香と一緒に社員食堂かカフェテリアに行くか、それ以外は自分の席でコンビニで買ってきたお弁当やカップラーメンを食べていた。課内の既婚女性社員の大半は、空いている会議室で持参してきたお弁当を一緒に食べていたから、皆と親交を深めたいなら、そこで昼食をとることもありだと唯香は山崎洋子に勧めていたが彼女は、
「私は、独身だから、皆さんの話についていけなくて肩身の狭い思いをすると思うし、皆さんに気を遣わせてしまうのも申し訳ないので」
という理由のもとに、頑なにその会に混ざろうとはしなかった。
しかし、山崎洋子が正社員に昇格するのと同時に、彼女は職場のランチタイムを女性社員たちと一緒に空き会議室で過ごすようになった。今までは派遣社員という立場を弁えて遠慮していたのかもしれない。もともと、唯香は職場での貴重な昼休みをひとりで自由に過ごすことが好きだったし、これからは山崎洋子に気を遣わなくても良くなったのだから、別に悪いことではない。しかし、昼休みのチャイムが鳴ると同時にどこかに姿を眩ませていた新卒社員の高部美里愛まで、ランチ女子会に参加するようになったのは驚きだった。確か、彼女は密かにボカロPになることが夢で、昼休みは、人目につかない場所で作曲をしているともっぱらの噂だったからだ。
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(はあ……女同士のくだらないマウンティングに付き合わされるのも勘弁だけど、こういうあからさまな爪弾きもけっこうメンタルにくるのよねえ)
岡崎さんとの結婚へ向けた準備が順調に進んでいることが唯香の唯一の救いとなり、唯香のメンタルはなんとか保たれていた。
(この会社も岡崎さんと結婚したら、おさらばなんだから! 多少の嫌がらせはなんてことないしっ!)
そう思いながら、昼休み残り十五分を残し持ち場に戻る途中で、唯香は信じられない光景を目の当たりにした。
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