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第二部
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午後一の定例ミーティングの連絡事項で、宇野沢が、今週金曜日に中間決算の打ち上げと山崎さんの正社員昇格祝いを第一営業課と第二営業課合同で行うので奮って参加してほしいと皆に呼び掛けた。仲が良かった同期が寿退社して以来数年間、唯香はこのような社内の行事に参加していない。
社内回覧を唯香に渡しに来た高部美里愛が、回覧文書に貼り付けてある付箋を見るよう目で訴えていた。その付箋には、
――今、少しだけお時間をいただけませんか? 6/7F 踊り場。先に私。5分後に落ち合いましょう。
と書いてあった。唯香は、付箋の端に“OK”と書いて、山崎に気付かれないように処分し、“親睦会に欠席”にチェックを入れ押印し山崎へと手渡した。
七階踊り場の隅っこの角の部分にはりつくような態勢で高部が唯香を待っていた。なるべく人目につかないように身を隠したつもりなのだろうが、ただでさえ長身で目立つ風貌の高部は逆に浮いていた。
「お待たせ、高部さん」
唯香が高部の背後から声を掛けると、彼女は、ヒッと声を漏らした。自分で呼び出しておいて「ヒッ!」は勘弁してほしいものだと唯香は内心思った。
「あっ! 成瀬さん、お忙しいところ、こんなところに呼び出してしまって申し訳ありません」
「大丈夫よ。ちょうど総務に用があったから。あなたが私に話があるなんて、よっぽどのことなんでしょう?」
「はい……実は、私、少し前から、山崎さんにお誘い……というか、命令に近い感じなんですけど……ランチ会に参加しているんですよ」
「ええ、知っているわ」
高部は、あたりをキョロキョロと見渡して人が来ないことをチェックしてから、小声で言った。
「成瀬さん、国際営業課の岡崎さんとお付き合いしてるって本当ですか?」
唯香は少し逡巡して、
「ええ、本当よ。国際営業課の一条さんが皆に言ったのかしら?」
と、高部に訊いた。
岡崎さんと付き合っていることは特に秘密にしていることではないが、職場の女性社員たちに爪弾きにされている唯香がそのことを伝える相手はいない。岡崎さんが同僚に打ち明けたのだとしたら、そのことを知っている可能性があるのは同じ課に所属する一条蘭しかいないと思ったからだ。
社内回覧を唯香に渡しに来た高部美里愛が、回覧文書に貼り付けてある付箋を見るよう目で訴えていた。その付箋には、
――今、少しだけお時間をいただけませんか? 6/7F 踊り場。先に私。5分後に落ち合いましょう。
と書いてあった。唯香は、付箋の端に“OK”と書いて、山崎に気付かれないように処分し、“親睦会に欠席”にチェックを入れ押印し山崎へと手渡した。
七階踊り場の隅っこの角の部分にはりつくような態勢で高部が唯香を待っていた。なるべく人目につかないように身を隠したつもりなのだろうが、ただでさえ長身で目立つ風貌の高部は逆に浮いていた。
「お待たせ、高部さん」
唯香が高部の背後から声を掛けると、彼女は、ヒッと声を漏らした。自分で呼び出しておいて「ヒッ!」は勘弁してほしいものだと唯香は内心思った。
「あっ! 成瀬さん、お忙しいところ、こんなところに呼び出してしまって申し訳ありません」
「大丈夫よ。ちょうど総務に用があったから。あなたが私に話があるなんて、よっぽどのことなんでしょう?」
「はい……実は、私、少し前から、山崎さんにお誘い……というか、命令に近い感じなんですけど……ランチ会に参加しているんですよ」
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「成瀬さん、国際営業課の岡崎さんとお付き合いしてるって本当ですか?」
唯香は少し逡巡して、
「ええ、本当よ。国際営業課の一条さんが皆に言ったのかしら?」
と、高部に訊いた。
岡崎さんと付き合っていることは特に秘密にしていることではないが、職場の女性社員たちに爪弾きにされている唯香がそのことを伝える相手はいない。岡崎さんが同僚に打ち明けたのだとしたら、そのことを知っている可能性があるのは同じ課に所属する一条蘭しかいないと思ったからだ。
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