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第二部
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「しかし、アンタは、職場運ないよねえ……あっ! 男運もか!」
二本目のワインを開けながら、栞が唯香に言った。
職場飲みを当たり前のように欠席した唯香は、連中と鉢合わせしないように、下北沢駅近くで彼氏と同棲をしている栞のマンションで家飲みをしていた。
「今度の人……山崎さんだっけ? 彼女はいい人だと思ったんだけどねえ。最初の頃は猫被って様子見して、正社員に昇格した途端、本性出したって感じだよねえ」
「そうなの……私が、あの女に何したっていうんだっ!」
熱燗を呑んでいた唯香は、一週間分の疲労の後押しもあって、いつもより酔いがまわるのが早かった。
「このこと、岡崎さんには話したの?」
「あー、岡崎さんは海外出張で、マレーシア、なう」
「電話して相談してみれば?」
「こんなことで、彼の仕事の邪魔したくないもんっ」
「はあ……唯香は、本当に甘え下手だよなあ……岡崎さん、唯香に頼られたら嬉しいと思うけどねえ」
栞が缶酎ハイのステイオンタブを開けると、炭酸がしゅわしゅわという微音を出して缶から飛び出し、その音が唯香の心をちくちくと刺激した。
「法学部の山崎洋子かあ……私も接点なかったなあ……あっ! 卒アル見てみる? 顔見た方が早いでしょ?」
「卒アル持ってるの?」
「あるある! 私、思い出大切にする系女子だから」
そう言って、栞は、本棚から、朱色布表紙の上に『柊花大学 2010』と金箔が押された卒業アルバムをテーブルの上に持ってきた。まずは、山崎が在籍していたという法学部の卒業生全員を調べてみたが、「山崎洋子」という名前はなかった。その後、すべての学部を調べたが「山崎洋子」は写っていなかった。もしかしたら、苗字が変わっている可能性も考慮して「洋子」という名前の女子学生をチェックしたところ、文学部に「富沢洋子」。経済学部に「中野洋子」と「高田洋子」。計三人が該当したが、どの子の写真にも「山崎洋子」の面影は微塵も見受けられなかった。
「まあ、個人写真の撮影は強制じゃなかったからね」
唯香が言った。
「整形、改名の可能性も無きにしも非ずだよねえ。とりあえず、ゼミと部活、サークルの写真も見てみようか」
ここまで調べたらとことん調べようと言わんばかりの意気込みで栞が言った。
二本目のワインを開けながら、栞が唯香に言った。
職場飲みを当たり前のように欠席した唯香は、連中と鉢合わせしないように、下北沢駅近くで彼氏と同棲をしている栞のマンションで家飲みをしていた。
「今度の人……山崎さんだっけ? 彼女はいい人だと思ったんだけどねえ。最初の頃は猫被って様子見して、正社員に昇格した途端、本性出したって感じだよねえ」
「そうなの……私が、あの女に何したっていうんだっ!」
熱燗を呑んでいた唯香は、一週間分の疲労の後押しもあって、いつもより酔いがまわるのが早かった。
「このこと、岡崎さんには話したの?」
「あー、岡崎さんは海外出張で、マレーシア、なう」
「電話して相談してみれば?」
「こんなことで、彼の仕事の邪魔したくないもんっ」
「はあ……唯香は、本当に甘え下手だよなあ……岡崎さん、唯香に頼られたら嬉しいと思うけどねえ」
栞が缶酎ハイのステイオンタブを開けると、炭酸がしゅわしゅわという微音を出して缶から飛び出し、その音が唯香の心をちくちくと刺激した。
「法学部の山崎洋子かあ……私も接点なかったなあ……あっ! 卒アル見てみる? 顔見た方が早いでしょ?」
「卒アル持ってるの?」
「あるある! 私、思い出大切にする系女子だから」
そう言って、栞は、本棚から、朱色布表紙の上に『柊花大学 2010』と金箔が押された卒業アルバムをテーブルの上に持ってきた。まずは、山崎が在籍していたという法学部の卒業生全員を調べてみたが、「山崎洋子」という名前はなかった。その後、すべての学部を調べたが「山崎洋子」は写っていなかった。もしかしたら、苗字が変わっている可能性も考慮して「洋子」という名前の女子学生をチェックしたところ、文学部に「富沢洋子」。経済学部に「中野洋子」と「高田洋子」。計三人が該当したが、どの子の写真にも「山崎洋子」の面影は微塵も見受けられなかった。
「まあ、個人写真の撮影は強制じゃなかったからね」
唯香が言った。
「整形、改名の可能性も無きにしも非ずだよねえ。とりあえず、ゼミと部活、サークルの写真も見てみようか」
ここまで調べたらとことん調べようと言わんばかりの意気込みで栞が言った。
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