成瀬さんは世渡りが下手すぎる

喜島 塔

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第二部

27

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「あ、うん。そうなんだけど、本当にうまくいくのかなあ」
 
 岡崎さんが出張先のマレーシアから帰国したら、お互いの両親に挨拶に行くという話になっているのだが、この場で惚気は厳禁だと感じた唯香は素っ気ない返事をした。

「大丈夫! 大丈夫! うまくいくって!」
 天然なのか鈍感なのかおおらかなのか、栞の殺気に気付かない和樹くんは、満面の笑顔でこう言い、さらに言葉を繋げた。

「まあ、でも、会社の環境が悪いと辛いよねえ。できることなら、皆に笑顔で送り出してほしいよねえ。俺、太一に連絡とってみるわ。院卒業してから、一度も連絡とってないから、うまくいくかどうかわかんないけど。何か情報入ったら唯香ちゃんに連絡するから!」

「うん。ありがとう」

 泊まって行けば? という栞と和樹くんのお誘いを丁寧にお断りして、唯香は家に帰った。五階建てマンションの三階一番奥の部屋に灯りはともっていない。郵便受けの中から不動産やらデリバリーピザなどのチラシを無造作に取り出していると、背後から刺すような視線を感じた。ハッとして振り返ると、黒づくめの恰好をした人間が慌てて逃げて行った。唯香は、すぐさま後を追ったが、大通りの人いきれの中、姿を見失ってしまった。落胆してマンションに戻った唯香は先ほど、“黒づくめ”が唯香を監視していた場所に「Hakkaku Heavy Industries,Ltd」と印刷された青色のネックストラップが落ちていることに気付いた。唯香は、ネックストラップを拾い上げながら、

「タケルに相談してもいいのかな?」

 と、自問自答するように独り言ちた。
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