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第二部
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―― はあ……唯香は、本当に甘え下手だよなあ……岡崎さん、唯香に頼られたら嬉しいと思うけどねえ
先日の家飲みで、栞に言われた言葉が唯香の脳裏を過った。こんなくだらないことでいちいち彼の仕事の邪魔をしてしまったら、鬱陶しがられるんじゃないか? という不安が唯香の中でむくむくと膨れ上がった。
(5コールまで待って、岡崎さんが電話に出なかったら、帰国するまで待とう)
結局のところ、唯香は、通話ボタンを押すことができなかった。
最寄り駅の改札口を通り抜けた時、誰もいない寒々しい家に帰ることを唯香の本能が拒絶した。気付けば、マンションに向かうのとは真逆の方向に歩を踏み出していた。
(誰でもいい……愚痴をきいてほしい)
高架下に沿って歩みを進める。高架下の駐輪場には色とりどりの自転車が無造作に停められている。狭い道路を挟んで反対側には、お弁当屋や居酒屋、整体院などが軒を連ねるというほどではないが、ところどころに建っていて、鼻歌混じりのおじさんが千鳥足で歩いていた。
どこへ行ったらいいのかわからなかった唯香は、鼻歌おじさんの跡をつけた。おじさんが辿り着いた場所は『黄昏のんべえ横丁』という飲み屋街だった。目がちかちかするような派手な袖看板が所狭しと己の存在をアピールしている。会社帰りのサラリーマンや、カップル、ご年配の老紳士……皆、顔を火照らせ、梯子酒をしている。
先日の家飲みで、栞に言われた言葉が唯香の脳裏を過った。こんなくだらないことでいちいち彼の仕事の邪魔をしてしまったら、鬱陶しがられるんじゃないか? という不安が唯香の中でむくむくと膨れ上がった。
(5コールまで待って、岡崎さんが電話に出なかったら、帰国するまで待とう)
結局のところ、唯香は、通話ボタンを押すことができなかった。
最寄り駅の改札口を通り抜けた時、誰もいない寒々しい家に帰ることを唯香の本能が拒絶した。気付けば、マンションに向かうのとは真逆の方向に歩を踏み出していた。
(誰でもいい……愚痴をきいてほしい)
高架下に沿って歩みを進める。高架下の駐輪場には色とりどりの自転車が無造作に停められている。狭い道路を挟んで反対側には、お弁当屋や居酒屋、整体院などが軒を連ねるというほどではないが、ところどころに建っていて、鼻歌混じりのおじさんが千鳥足で歩いていた。
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