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第二部
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土曜日の柊花大学のキャンパスを行き来している現役学生たちを見て、唯香は月日の流れの速さに愕然とした。彼・彼女たちは、明らかに若い。きっと、自分が歩んでいるレールの先には輝かしい未来が待ち構えているのだろうと信じ切っているような、無垢な表情をしている。唯香自身も少なからず、そう信じていた。
(なぜ、山崎洋子はこんな場所を指定してきたんだろう?)
洋子は、話し合いの場が柊花大学でなければ、唯香との話し合いに応じることはできないと言った。卒業してから十年以上の月日が流れているのに、懐かしい光景を目の当たりにした途端、唯香の脳の奥底に封印されていた記憶が津波のように押し寄せてきた。
栞に誘われて行った軽音部のライブでタケルと出逢った。何度フっても懲りずに猛アタックしてくるタケルに根負けして付き合うことになった。二年の時の文化祭で、当時、雑誌モデルをしていてグランプリ確実と噂されていた一条蘭を破りミスキャンパスのグランプリに輝いた。“ミス・柊花”の唯香と甘いマスクで人気のタケルのカップルは、どこにいても目立つ存在だった。少なからず天狗になっていた唯香に対し、妬んだり恨んだりする者がいても何らおかしくはないのに……“高田洋子”のことは、どうしても思い出すことができない。
(なぜ、山崎洋子はこんな場所を指定してきたんだろう?)
洋子は、話し合いの場が柊花大学でなければ、唯香との話し合いに応じることはできないと言った。卒業してから十年以上の月日が流れているのに、懐かしい光景を目の当たりにした途端、唯香の脳の奥底に封印されていた記憶が津波のように押し寄せてきた。
栞に誘われて行った軽音部のライブでタケルと出逢った。何度フっても懲りずに猛アタックしてくるタケルに根負けして付き合うことになった。二年の時の文化祭で、当時、雑誌モデルをしていてグランプリ確実と噂されていた一条蘭を破りミスキャンパスのグランプリに輝いた。“ミス・柊花”の唯香と甘いマスクで人気のタケルのカップルは、どこにいても目立つ存在だった。少なからず天狗になっていた唯香に対し、妬んだり恨んだりする者がいても何らおかしくはないのに……“高田洋子”のことは、どうしても思い出すことができない。
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