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第三部
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「えっ? 何これ?」
唯香と栞の声がシンクロした。
「今日、せいらちゃんのリサイタルに来てくれた、せいらちゃんのママ友から預かったんだ」
「触ってみても問題ない?」
おしゃれなイタリアンリストランテの個室が、警察署の鼠色の取調室に様変わりしていくような滑稽さに、唯香は不覚にも笑いそうになってしまった。
先に、唯香が、タケルが差し出した薄黄色の封筒を手に取り照明に向けてかざしてみた。封筒の裏面の右下の部分に“R.K”というイニシャルが浮かび上がった。唯香は、そのまま無言で栞に手渡し、栞も、唯香と同じ動作をし確認してから、
「同じ封筒で間違いないわね」
と言った。封筒の透かし文字を確認するためにタケルが抜いておいた中身は“警告状”ではなく写真だった。
「ねえ、タケル。ちょっと、私、思考が追い付かないんだけど……これって、つまり、私にネチネチと気色の悪い“警告状”を毎日飽きもせずに送り付けてくださる女と、アンタの嫁のママ友とやらが同一人物……つまり、犯人ってことになるのかしら?」
「うーん……俺も、今、混乱してる……今日、リサイタルに来てくれた、せいらちゃんのママ友さんは、片山さんっていうんだ」
「“かたやま”“K”?」
唯香と栞の声がシンクロした。
「“かたやま”の下の名前はなによっ?」
栞がテーブル越しに身を乗り出してタケルをけしかけた。
「ごめん……ちょっと、片山さんの下の名前思い出せないんだよ。もう少ししたら、せいらちゃん、打ち上げ抜け出して、ここに顔出すっていうから、せいらちゃんに尋いてみるよ。ごめんね」
(あっ、紀伊せいら、本当にここに来るんだ)
タケルの隣に当たり前のように座る、紀伊せいらを見て、余裕のある女を演じることができるか、唯香は、ふっと不安になった。正直言うと、このまま、三人で気兼ねなく大学時代を振り返ったりして過ごしたいと思った。そう思ったのは、唯香だけではなかったようで、栞は、
「紀伊せいら、来るの? アンタ、やっぱり、デリカシーのない男ね」
と、軽く舌打ちをしながら言った。
唯香と栞の声がシンクロした。
「今日、せいらちゃんのリサイタルに来てくれた、せいらちゃんのママ友から預かったんだ」
「触ってみても問題ない?」
おしゃれなイタリアンリストランテの個室が、警察署の鼠色の取調室に様変わりしていくような滑稽さに、唯香は不覚にも笑いそうになってしまった。
先に、唯香が、タケルが差し出した薄黄色の封筒を手に取り照明に向けてかざしてみた。封筒の裏面の右下の部分に“R.K”というイニシャルが浮かび上がった。唯香は、そのまま無言で栞に手渡し、栞も、唯香と同じ動作をし確認してから、
「同じ封筒で間違いないわね」
と言った。封筒の透かし文字を確認するためにタケルが抜いておいた中身は“警告状”ではなく写真だった。
「ねえ、タケル。ちょっと、私、思考が追い付かないんだけど……これって、つまり、私にネチネチと気色の悪い“警告状”を毎日飽きもせずに送り付けてくださる女と、アンタの嫁のママ友とやらが同一人物……つまり、犯人ってことになるのかしら?」
「うーん……俺も、今、混乱してる……今日、リサイタルに来てくれた、せいらちゃんのママ友さんは、片山さんっていうんだ」
「“かたやま”“K”?」
唯香と栞の声がシンクロした。
「“かたやま”の下の名前はなによっ?」
栞がテーブル越しに身を乗り出してタケルをけしかけた。
「ごめん……ちょっと、片山さんの下の名前思い出せないんだよ。もう少ししたら、せいらちゃん、打ち上げ抜け出して、ここに顔出すっていうから、せいらちゃんに尋いてみるよ。ごめんね」
(あっ、紀伊せいら、本当にここに来るんだ)
タケルの隣に当たり前のように座る、紀伊せいらを見て、余裕のある女を演じることができるか、唯香は、ふっと不安になった。正直言うと、このまま、三人で気兼ねなく大学時代を振り返ったりして過ごしたいと思った。そう思ったのは、唯香だけではなかったようで、栞は、
「紀伊せいら、来るの? アンタ、やっぱり、デリカシーのない男ね」
と、軽く舌打ちをしながら言った。
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