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第三部
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梅雨というには、あまりにもお粗末な梅雨が明け、関東地方は突然の猛暑に見舞われ、まだ七月上旬だというのに、地域によっては四十度を超す危険な暑さを記録する日が連日続いた。
九月の結婚式まで、約二か月。唯香個人としては、結婚式など大々的に行いたくないというのが本音だったが、岡崎家、成瀬家両家のちゃんとした結婚式をしてほしいという強い要望に唯香は逆らうことができなかった。仕事柄、海外出張が多い岡崎と唯香のスケジュールが合う日も限られており、ふたりの予定が合う日は必ず過密スケジュールになったので、唯香は“片山”のことを言い出すタイミングをいつも逸していた。
若村沙織から唯香に連絡があったのは、八月上旬。会社が夏季休暇に入る直前のことだった。
「あの……成瀬さん……ずっと打ち明けるべきかどうか悩んでいたのですが……成瀬さんに会って直接お話ししたいことがあるのですが……可能ですか?」
スマホ越しの若村沙織は今にも消え入りそうな声で言った。
「大丈夫よ。私も、ずっと、心に引っ掛かっているもやもやしたものを取り払いたいの。きっと、若村さんが私に打ち明けたいことは、そのことと無関係ではないのでしょう?」
「はい……たぶん、そうだと思います」
とうとうあの事件の真実を確かめなければならない時がきたのだと、若村の憂いと怒りが入り混じったような声から唯香は察した。
九月の結婚式まで、約二か月。唯香個人としては、結婚式など大々的に行いたくないというのが本音だったが、岡崎家、成瀬家両家のちゃんとした結婚式をしてほしいという強い要望に唯香は逆らうことができなかった。仕事柄、海外出張が多い岡崎と唯香のスケジュールが合う日も限られており、ふたりの予定が合う日は必ず過密スケジュールになったので、唯香は“片山”のことを言い出すタイミングをいつも逸していた。
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「あの……成瀬さん……ずっと打ち明けるべきかどうか悩んでいたのですが……成瀬さんに会って直接お話ししたいことがあるのですが……可能ですか?」
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