1 / 18
1
しおりを挟む
昨夜。掛かり付けの病院で処方されている睡眠薬を十錠ほど、アルコールで流し込んだ。べつに珍しいことじゃあない。何十年も前から精神安定剤だの睡眠薬だの向精神薬だのを飲み続けているから耐性ができてしまって薬の効果が弱まっているだけのこと。昨夜飲んだ睡眠薬の名称は『サイレース』。一般名は『フルニトラゼパム』。どれくらい強い効果がある薬なのか気になって調べてみたら、なあんだ、大したことないじゃん。バルビツール酸系の睡眠薬と比べたら、安全、安心。多分、百錠飲んでも致死量には程遠いんじゃないかしらね。それでも、一錠飲んだだけで効果覿面な人もいるわけだから一概には言えないけどね。昨日はとっても憂鬱で……といっても、一年三百六十五日、二年で七百三十日、十年で三千六百五十日……私がこの糞みたいな世の中に産み堕とされてから、一万八千二百五十と数日、ご機嫌だった日なんて、無知で世間知らずで夢見がちで馬鹿だった幼少期を除けば、両手の十本の指で数えるくらいしか多分ないのだから、私にとっては『憂鬱』が正常でご機嫌が異常。ていうか、憂鬱の反対語って何だっけ? 『爽快』! なんて清々しくて気持ちの良い語感なんだろう。まさに、私とはかけ離れた言葉。憂鬱から逃れようとして、ぜえぜえと息を切らして全力疾走したところで、『爽快』は光速で私を置き去りにしていってしまうから、私は、あっという間に『憂鬱』に捕まって、黒いスライムみたいなどろどろとした底なし沼に引き摺り込まれて、両手をばたばたとさせながら浮上しようと一所懸命に足掻くけれども、口の中には泥が、口、鼻、目に入ってきて、やがて息ができなくなって、足掻く力もなくなって、なされるがままに真っ黒に染まる。私の朝はいつも、こうして始まる。渋々と重い瞼を開くと、元々は純白であったのであろう薄茶けた天井が視界に映し出される。
「嗚呼、今日もまだ生きているのか」
独りごちる。重いため息を吐く。ああ、生きている、生きている。
「嗚呼、今日もまだ生きているのか」
独りごちる。重いため息を吐く。ああ、生きている、生きている。
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる