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ゲームの中に入った日
しおりを挟むあれから一週間。
結論から言うと、俺は引き篭もった。
部屋で朝から晩までオンラインゲームをずっと遊んでいる。
ゲームはいい。いつだって努力は裏切らない。
やった分はしっかりと結果として帰ってくる。幼い頃から英才教育を受けてきてもFランク退魔師という肩書きを背負わされる俺とはまるで違う。
画面の中での俺は助けを呼ばれ、みんなに慕われ、みんなに求められる。
現実なんてゴミだ、努力も何もかも才能には勝てない。
俺の周りがいい例だ。
新海は自分を限界まで追い込んだことはなく、術による気絶など起きたことがないという。
巫山戯るな、俺は何度も死ぬ思いをした。
茜は生身の体で運動などした事がなく、何分間も走ることは出来ない。
巫山戯るな、俺は意識が飛びながら走ったことだってある。
理不尽だ。
何で努力は才能に劣るんだ?
何で頑張ってきたやつが、何もしてこなかったやつに負けるんだ?
何で、何で俺は全てを失ったんだ?
考えても考えても出てくる答えはつまらないものばかり。
──辛いのはお前だけじゃない。
うるせぇよ、何でお前に俺の気持ちがわかるんだよ。
──努力することも才能だ。
ちげぇよ、努力なんてもんはやる気になれば誰だってできる。そんなことを言うやつは努力をしたことが無い怠慢なやつだ。
──諦めなければ次がある。
次なんてねぇよ、諦めってのはどうしようもない状況にたった時に出る最後の言葉なんだよ。
──失敗は成功の糧になる。
ならねぇよ、失敗は失敗にしかならねぇ。成功の糧になるのは成功した時だけだ。
ずっと不満が漏れる。
分かっている、分かっているとも。こんな自問自答を繰り返してもなんの意味もないことくらい。だがな、もう何も出来ないんだ。
退魔師として育てられてきたが、恵まれず実力は小学生以下。一般教養など受けておらず、退魔師以外の道なんてない。かといって退魔師としての道もある訳じゃない。
詰んだ。
人生に詰んだ。
もう打つ手はない。頭が良くても今から普通科に通うなんてとてもじゃないが無理だ。
だから逃げた。
逃げることの何が悪い。
もうダメだ、支えがなくなると人間は駄目になる。
俺がいい例だ、虐めにも今まで耐え抜いてきたさ。だって俺には未来があったのだから。
だが、今はどうだ?
未来を失い、挙句の果てに先のない俺を義妹が養うって?冗談じゃない。とんだ生き地獄だ。
それならいっそ死んだ方が。
考え事をしていると意識が削がれていた。
別に大したことじゃない、そう思っていたが自体はもっと深刻だった。
「は?」
今までいた自室とは違う場所にいる。
そこは外。いや日本では珍しい森だった。
いや違う。そんなことはさほど問題ではないといえば語弊があるが、もっと深刻なものが目の前に映し出されていた。
まるでゲームの通知のように目の前に文字が映し出されていたのだ。
【貴方は『楽園』の世界に転移しました。貴方は12の神器を集めてもらいます。一度でもHPが0になると魂は消滅します。12の神器を集めたなら貴方の願いを3つまで叶えましょう ──親愛なる最高神より──】
まず初めに思ったことは馬鹿げている。
こんな通知を信じるのは頭のおかしい宗教の信者か、黒歴史真っ只中の学生と現実逃避をしているチキン野郎くらいなものだ。
別に信じている訳じゃない。
だが、仮に本当にそんなことが有り得るなら。
現実世界から離れられる。
あの家から遠ざかれる。
不安を感じなくていい。
だってゲームは夢で溢れているのだから。
ここでは俺を求めてくれる。
そう思っていた。
それが偽物だとは知らずに。
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