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第15章『組織』
1話
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4人は町を出て再び西へと歩き始めた。
町を出ると、西側は荒れた跡地が続いている。元々村や町があった場所である。
「説明する前に朝食を食べておこうか。どこか座れる場所を探そう」
町を出てから誰も声を発することなく黙って歩いていたが、最初に口火を切ったのはカイであった。
買っておいた朝食が入った紙袋を掲げ、3人に向かって声を掛ける。
「……そうだな」
ちらりと振り返ったイズミが答える。タクヤとリョウは黙ったままであったが異論はないようだ。
町の跡地のような所を歩きながら、崩れた建物の中に座れそうな場所を見つけた。
「ここでいいかな?」
建物の残骸と思われるコンクリートの塊の上に紙袋を置く。
少し高めだが、物を置くにはちょうど良く平らになっている。
「あぁ」
じっと黙ったままであったタクヤが頷く。
再びカイへの不信感を募らせているのか、険しい表情になっている。
仕方がないとはいえ、深く溜め息を付いた。
「はい、リョウの分」
そして紙袋の中から包み紙と紙でできたカップを取り出し、カイはリョウへと手渡す。
恐怖心はおさまったものの、すっかり大人しくなってしまったリョウに、にこりと笑いかけた。
「……ありがと」
リョウもにこりと笑顔を作るが、どこかぎこちない表情であった。
まだ怖いのか、それとも今のこの空気がいたたまれないのか。
「これは、タクヤとイズミの分ね」
そう言って瓦礫の上に座るふたりに紙袋を手渡した。
「あぁ」
「助かった。あとで金を払う」
受け取りながらタクヤは表情を変えることなくぼそりと答える。
そしてイズミはカイへの礼と共に支払いの話をした。
「いいよ。大した金額じゃないし。それに、サクラに見つかったのは俺のせいかもしれないしね」
瓦礫の上で、先程渡したホットサンドを食べ始めているリョウの横へ座りながら答える。
「はっ? どういうことだよっ」
カイの発言でタクヤが声を上げる。顔を見ただけで怒っているのが分かる。
「……まぁ、俺だけのせいではないとは思うけど。目印にはなった可能性はあるってことだよ。きっと、俺の体の中には発信機のようなものが埋め込まれているだろうからね」
タクヤの問いに表情を変えることなくさらりと答える。
その答えに他の3人はぎょっとして食事の手を止めてしまった。
3人の反応を気にすることなく、カイはカップに入っているコーヒーをゆっくりと飲む。
「発信機っ!?」
意外な答えにタクヤは先程までの怒りや不信感が消えたのか、目を丸くしながら声を上げた。
「あぁ、恐らくね。自覚はないし、どこに埋め込まれているのかも分からないけど、奴らが何もしていない訳はないだろうし。簡単に発見されたのも恐らく……」
表情を変えずに淡々と説明する。
しかし、ふと嫌な記憶を思い出し、心の中に黒い物が渦巻く。
悟られないように敢えて笑顔を作った。
「そんな……カイ兄がどうしてっ?」
ぎゅっとホットサンドを両手で握ったまま、リョウが不安そうな顔でカイを見上げる。
「それも後で説明するよ。話すには時間が掛かるかもしれないから、これを食べたら移動しながら話すね」
にこりと笑ってリョウの頭を撫でる。
「……仮にそうだとしても、奴らは俺たちふたりだけの時から狙ってきていた。俺やタクヤにそんなものが埋め込まれているはずはないし、違うんじゃないのか?」
黙って聞いていたイズミだったが、カイ達に会う前のことを話し反論する。
「そうだね。俺だけのせいではないって言ったのはそういう意味もあるよ。恐らく奴らもイズミを探していただろうから。俺のように」
それだけ言うと、カイは包み紙からホットサンドを出すと、自分もがぶりと一口かぶりつく。
「なんで皆してイズミを探してるんだ? しかもなんで今?」
ひとりホットサンドを食べ終わったタクヤは、納得いかないような顔で問い掛ける。
「……それは俺にも分からない。俺は頼まれてイズミを探しに来ただけだからね。でも、3ヶ月くらい前だと思うけど、奴らの動きが急に変わったような気がしてね」
口の中の物を飲み込むと再び淡々と問いに答える。
「っ!」
その話を聞いて、イズミが何かに気が付いたようにハッとした顔をした。
「イズミ? どうかしたのか?」
何か考え事をしているようなイズミを、タクヤが不思議そうに覗き込む。
「……いや、俺の気のせいかもしれないが、ここ最近、何かが起こったと言われる時期が、だいたい3ヶ月くらい前なんだ。まるで、何かその頃にあったみたいな……」
顎に手を当て、イズミは難しい顔をしながら答えた。
「3ヶ月前か……そういえば、確かに何か聞く度に、『3ヶ月前』っていうのが出てきてたような気もする。なんかのキーワードみたいに」
うーんとタクヤも腕を組み、思い出すように話す。
「なるほど……どうやらそれらも偶然じゃないかもしれないね。君らが今までどんなことに遭ったのかは分からないけど、もしかしたら既に裏で何かが動いていたのかもしれない」
イズミとタクヤの話を聞いて、すっかりホットサンドを食べ終わったカイが頷く。
「えっ? カイ兄食べるの早っ!」
食べ終わってしまったカイを見て、リョウが慌てて口の中にホットサンドを詰め込む。
「リョウ、急いで食べなくて大丈夫だよ。ゆっくり食べて」
にこりと笑いながらリョウの頭を撫でる。
子供っぽいのはいつもだが、見ているだけで可愛くて仕方がない。
サクラのことがあってから落ち込んでいたリョウが心配だったが、元気になったようで安心した。
「んむ……」
口いっぱいにホットサンドを入れてしまったリョウは、頬をリスのように膨らませながら頷いた。
「ゆっくり噛んで、喉に詰まらせないようにね。ココア飲むか?」
自分とタクヤとイズミにはコーヒーを買っていたが、リョウは苦いのが苦手な為、ココアを買っていた。
リョウには激甘だ。もちろん自覚はある。
それはリョウが生まれた時から変わらない。まるで本当の兄弟のようにずっとリョウを可愛がっていた。
「なんか、母さんみたいだな」
ふたりの様子を見ながらタクヤがぼそりと呟いた。
「んんーっ!」
口の中のホットサンドがなかなか減らないリョウは口を開けられず、もぐもぐしながら何か文句を言っているようだった。
「リョウ、危ないよ。ほら、ゆっくり噛んで」
先程までのピンと張りつめていた空気が一気に緩んだ瞬間であった。
タクヤが笑い、イズミが大きく溜め息を付いている。
そしてカイは相変わらずリョウの頭を撫で、リョウはその手を払い除けながら怒っている。
和やかな空気が流れていた。
町を出ると、西側は荒れた跡地が続いている。元々村や町があった場所である。
「説明する前に朝食を食べておこうか。どこか座れる場所を探そう」
町を出てから誰も声を発することなく黙って歩いていたが、最初に口火を切ったのはカイであった。
買っておいた朝食が入った紙袋を掲げ、3人に向かって声を掛ける。
「……そうだな」
ちらりと振り返ったイズミが答える。タクヤとリョウは黙ったままであったが異論はないようだ。
町の跡地のような所を歩きながら、崩れた建物の中に座れそうな場所を見つけた。
「ここでいいかな?」
建物の残骸と思われるコンクリートの塊の上に紙袋を置く。
少し高めだが、物を置くにはちょうど良く平らになっている。
「あぁ」
じっと黙ったままであったタクヤが頷く。
再びカイへの不信感を募らせているのか、険しい表情になっている。
仕方がないとはいえ、深く溜め息を付いた。
「はい、リョウの分」
そして紙袋の中から包み紙と紙でできたカップを取り出し、カイはリョウへと手渡す。
恐怖心はおさまったものの、すっかり大人しくなってしまったリョウに、にこりと笑いかけた。
「……ありがと」
リョウもにこりと笑顔を作るが、どこかぎこちない表情であった。
まだ怖いのか、それとも今のこの空気がいたたまれないのか。
「これは、タクヤとイズミの分ね」
そう言って瓦礫の上に座るふたりに紙袋を手渡した。
「あぁ」
「助かった。あとで金を払う」
受け取りながらタクヤは表情を変えることなくぼそりと答える。
そしてイズミはカイへの礼と共に支払いの話をした。
「いいよ。大した金額じゃないし。それに、サクラに見つかったのは俺のせいかもしれないしね」
瓦礫の上で、先程渡したホットサンドを食べ始めているリョウの横へ座りながら答える。
「はっ? どういうことだよっ」
カイの発言でタクヤが声を上げる。顔を見ただけで怒っているのが分かる。
「……まぁ、俺だけのせいではないとは思うけど。目印にはなった可能性はあるってことだよ。きっと、俺の体の中には発信機のようなものが埋め込まれているだろうからね」
タクヤの問いに表情を変えることなくさらりと答える。
その答えに他の3人はぎょっとして食事の手を止めてしまった。
3人の反応を気にすることなく、カイはカップに入っているコーヒーをゆっくりと飲む。
「発信機っ!?」
意外な答えにタクヤは先程までの怒りや不信感が消えたのか、目を丸くしながら声を上げた。
「あぁ、恐らくね。自覚はないし、どこに埋め込まれているのかも分からないけど、奴らが何もしていない訳はないだろうし。簡単に発見されたのも恐らく……」
表情を変えずに淡々と説明する。
しかし、ふと嫌な記憶を思い出し、心の中に黒い物が渦巻く。
悟られないように敢えて笑顔を作った。
「そんな……カイ兄がどうしてっ?」
ぎゅっとホットサンドを両手で握ったまま、リョウが不安そうな顔でカイを見上げる。
「それも後で説明するよ。話すには時間が掛かるかもしれないから、これを食べたら移動しながら話すね」
にこりと笑ってリョウの頭を撫でる。
「……仮にそうだとしても、奴らは俺たちふたりだけの時から狙ってきていた。俺やタクヤにそんなものが埋め込まれているはずはないし、違うんじゃないのか?」
黙って聞いていたイズミだったが、カイ達に会う前のことを話し反論する。
「そうだね。俺だけのせいではないって言ったのはそういう意味もあるよ。恐らく奴らもイズミを探していただろうから。俺のように」
それだけ言うと、カイは包み紙からホットサンドを出すと、自分もがぶりと一口かぶりつく。
「なんで皆してイズミを探してるんだ? しかもなんで今?」
ひとりホットサンドを食べ終わったタクヤは、納得いかないような顔で問い掛ける。
「……それは俺にも分からない。俺は頼まれてイズミを探しに来ただけだからね。でも、3ヶ月くらい前だと思うけど、奴らの動きが急に変わったような気がしてね」
口の中の物を飲み込むと再び淡々と問いに答える。
「っ!」
その話を聞いて、イズミが何かに気が付いたようにハッとした顔をした。
「イズミ? どうかしたのか?」
何か考え事をしているようなイズミを、タクヤが不思議そうに覗き込む。
「……いや、俺の気のせいかもしれないが、ここ最近、何かが起こったと言われる時期が、だいたい3ヶ月くらい前なんだ。まるで、何かその頃にあったみたいな……」
顎に手を当て、イズミは難しい顔をしながら答えた。
「3ヶ月前か……そういえば、確かに何か聞く度に、『3ヶ月前』っていうのが出てきてたような気もする。なんかのキーワードみたいに」
うーんとタクヤも腕を組み、思い出すように話す。
「なるほど……どうやらそれらも偶然じゃないかもしれないね。君らが今までどんなことに遭ったのかは分からないけど、もしかしたら既に裏で何かが動いていたのかもしれない」
イズミとタクヤの話を聞いて、すっかりホットサンドを食べ終わったカイが頷く。
「えっ? カイ兄食べるの早っ!」
食べ終わってしまったカイを見て、リョウが慌てて口の中にホットサンドを詰め込む。
「リョウ、急いで食べなくて大丈夫だよ。ゆっくり食べて」
にこりと笑いながらリョウの頭を撫でる。
子供っぽいのはいつもだが、見ているだけで可愛くて仕方がない。
サクラのことがあってから落ち込んでいたリョウが心配だったが、元気になったようで安心した。
「んむ……」
口いっぱいにホットサンドを入れてしまったリョウは、頬をリスのように膨らませながら頷いた。
「ゆっくり噛んで、喉に詰まらせないようにね。ココア飲むか?」
自分とタクヤとイズミにはコーヒーを買っていたが、リョウは苦いのが苦手な為、ココアを買っていた。
リョウには激甘だ。もちろん自覚はある。
それはリョウが生まれた時から変わらない。まるで本当の兄弟のようにずっとリョウを可愛がっていた。
「なんか、母さんみたいだな」
ふたりの様子を見ながらタクヤがぼそりと呟いた。
「んんーっ!」
口の中のホットサンドがなかなか減らないリョウは口を開けられず、もぐもぐしながら何か文句を言っているようだった。
「リョウ、危ないよ。ほら、ゆっくり噛んで」
先程までのピンと張りつめていた空気が一気に緩んだ瞬間であった。
タクヤが笑い、イズミが大きく溜め息を付いている。
そしてカイは相変わらずリョウの頭を撫で、リョウはその手を払い除けながら怒っている。
和やかな空気が流れていた。
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