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第16章『再会』
4話
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1時間程歩いたところで大きな湖が見えてきた。
「あれって、もしかして……」
ぼそりとタクヤが呟いた。
以前カオルが師匠がいる場所として話していた言葉を思い出した。
「あぁ、湖の近くって言ったろ?」
にやりとカオルが口の端を上げて笑う。
「っていうか、『見た』んじゃなくて『知ってた』んじゃねぇか。嘘つきかよ。てか、338キロってのはどうなったんだよ。そんなに歩いてねぇぞ?」
ふと気が付いた事実に苛ついたタクヤはじろりとカオルを睨み付けた。
「ハハハッ、あれは冗談だ。でも、お前の師匠のことは知っていたが、それ以外のことは本当に『見た』んだぞ? 嘘は言ってないんだから、そう怒るなよ」
にやにやとしながらカオルが答える。
場所も知ってたくせに何を言ってんだと更に睨み付けたが、カオルには全く効かないようで楽しそうに笑っている。
「ほんっと信用ならねぇ」
ぼそりと呟くと、頬を膨らませながら再び前を向く。
すると、黙って歩いていたアキラが突然立ち止まり、タクヤもハッとして立ち止まった。
「…………」
少し先に誰かが立っているのが見える。
緊張しながらじっとその人物を目を凝らして見つめる。
まだ遠くて顔は分からない。しかし――。
「……師匠……」
ぼそりと呟いた。
顔は見えなくても分かる。あの姿。あの気配。間違いない。
じわじわとタクヤの中で何かが沸き起こっていた。
目頭が、熱い。
一緒に立ち止まっていたカオルもにやりとしてタクヤを見ていた。
すると、ひとり前で立ち止まっていたアキラが声を上げる。
「ハヤトさんっ!」
そしてそのまま駆け出した。
遠くに見える人影が手を振っているのが見える。
「お前は行かなくていいのか?」
じっとその場を動かないタクヤに向かってカオルが声を掛ける。
「っ!」
分かっている。しかし体が動かない。
ふるふると拳を震わせ、顔を赤くさせる。
「タクヤ?」
リョウが心配そうにタクヤを見上げている。
その間にも、先に走って行ったアキラがその人物と話している姿が見えた。
「…………」
自分も走って行きたいのに足が棒になったかのように動かない。
体が熱くて堪らない。
そう思ったらいつの間にか目に涙が溜まっていた。
あんなに会いたかった人が今、目の前にいる。
それだけでタクヤの胸がいっぱいになっていた。
「ほら、何してんだ? アキラに先越されてる場合じゃないだろ?」
もう一度カオルがタクヤに声を掛ける。
その瞬間、動かなかった足が無意識に動き出していた。
最初はゆっくり歩くように、徐々に走り始める。
「タクヤっ!」
リョウも慌ててタクヤの後を追った。
ふたりが走って行く姿をカオルはにやりと笑いながら見つめ、ゆっくりと歩き始めた。
(師匠っ!)
心の中で叫ぶ。本当に師匠なのか? ずっと探していた師匠なのか?
頭がぐちゃぐちゃになりながら走り続けた。
漸く会いたかった人に会えるのだ。
そして――。
「師匠っ!」
思わず叫んでいた。
走りながらはっきりと顔が見えてきた。
目が潤んでぼんやりとしているが、間違いない。
涙を拭うことなく走り続ける。
こちらを見て笑っている姿を見てまた涙が溢れる。
「タクヤっ」
あと数十メートルといったところでハヤトがタクヤの名前を呼んだ。
その瞬間、タクヤの胸がぎゅっと締め付けられる。
6年振りに聞く師匠の声だ。
本当に生きてた。
ただそれだけで、タクヤは幸せな気持ちでいっぱいになっていた。
夢じゃない。幻でもない。本物の師匠だ。
数メートル手前で立ち止まる。「はぁ、はぁ」と息が上がっている。
走ったせいなのか、緊張からなのか、心臓が飛び出てしまいそうな程に激しく動いていた。
「タクヤ……でかくなったな」
すぐ目の前の師匠が優しく微笑んでいる。
思わず自分の頬をぎゅっと抓った。
「いて……」
泣きながらぼそりと呟く。夢じゃない。
「何やってんだよ」
6年前に見た笑顔と何も変わらない。
あの時のままのハヤトの姿を見て更に涙が溢れる。
「師匠……」
「泣くなよ。男だろ?」
涙を拭うことなくじっと見つめるタクヤを呆れたようにハヤトが見つめている。
そして再び笑顔になると、両手を広げた。
「師匠っ!」
思わずそのまま駆け出し思い切りハヤトに抱きついた。
大きくて見上げる程だった師匠が、今では自分と変わらないくらいになっていた。
いや、ハヤトが小さくなったわけではなく、タクヤが成長したのだ。
「タクヤ……ごめんな。ひとりにして」
ぎゅっと抱き締め返し、ハヤトがぼそりとタクヤに話した。
しかしタクヤは黙って首を横に振る。
寂しかった。怖かった。色んな思いがあったが、文句なんてひとつもなかった。
ただ、師匠が生きていてくれただけで、それで良かった。
黙って泣き続けているタクヤの頭をそっとハヤトが優しく撫でる。
ふたりをじっと見つめていたリョウの横に、漸くカオルが追いついた。
「泣けるねぇ……」
ぼそりと呟いた。カオル自身は泣いてはいなかったのだが。
「タクヤ……良かった……」
しかし、隣でじっと見つめていたリョウはふたりの姿を見て号泣していたのだった。
感動の再会である。
リョウは自分とカイの姿を重ねていた。
会いたい人に会える喜びは十分に理解していた。
暫くの間、静かに時間が流れていた。タクヤが泣き止むまでの間。
「あれって、もしかして……」
ぼそりとタクヤが呟いた。
以前カオルが師匠がいる場所として話していた言葉を思い出した。
「あぁ、湖の近くって言ったろ?」
にやりとカオルが口の端を上げて笑う。
「っていうか、『見た』んじゃなくて『知ってた』んじゃねぇか。嘘つきかよ。てか、338キロってのはどうなったんだよ。そんなに歩いてねぇぞ?」
ふと気が付いた事実に苛ついたタクヤはじろりとカオルを睨み付けた。
「ハハハッ、あれは冗談だ。でも、お前の師匠のことは知っていたが、それ以外のことは本当に『見た』んだぞ? 嘘は言ってないんだから、そう怒るなよ」
にやにやとしながらカオルが答える。
場所も知ってたくせに何を言ってんだと更に睨み付けたが、カオルには全く効かないようで楽しそうに笑っている。
「ほんっと信用ならねぇ」
ぼそりと呟くと、頬を膨らませながら再び前を向く。
すると、黙って歩いていたアキラが突然立ち止まり、タクヤもハッとして立ち止まった。
「…………」
少し先に誰かが立っているのが見える。
緊張しながらじっとその人物を目を凝らして見つめる。
まだ遠くて顔は分からない。しかし――。
「……師匠……」
ぼそりと呟いた。
顔は見えなくても分かる。あの姿。あの気配。間違いない。
じわじわとタクヤの中で何かが沸き起こっていた。
目頭が、熱い。
一緒に立ち止まっていたカオルもにやりとしてタクヤを見ていた。
すると、ひとり前で立ち止まっていたアキラが声を上げる。
「ハヤトさんっ!」
そしてそのまま駆け出した。
遠くに見える人影が手を振っているのが見える。
「お前は行かなくていいのか?」
じっとその場を動かないタクヤに向かってカオルが声を掛ける。
「っ!」
分かっている。しかし体が動かない。
ふるふると拳を震わせ、顔を赤くさせる。
「タクヤ?」
リョウが心配そうにタクヤを見上げている。
その間にも、先に走って行ったアキラがその人物と話している姿が見えた。
「…………」
自分も走って行きたいのに足が棒になったかのように動かない。
体が熱くて堪らない。
そう思ったらいつの間にか目に涙が溜まっていた。
あんなに会いたかった人が今、目の前にいる。
それだけでタクヤの胸がいっぱいになっていた。
「ほら、何してんだ? アキラに先越されてる場合じゃないだろ?」
もう一度カオルがタクヤに声を掛ける。
その瞬間、動かなかった足が無意識に動き出していた。
最初はゆっくり歩くように、徐々に走り始める。
「タクヤっ!」
リョウも慌ててタクヤの後を追った。
ふたりが走って行く姿をカオルはにやりと笑いながら見つめ、ゆっくりと歩き始めた。
(師匠っ!)
心の中で叫ぶ。本当に師匠なのか? ずっと探していた師匠なのか?
頭がぐちゃぐちゃになりながら走り続けた。
漸く会いたかった人に会えるのだ。
そして――。
「師匠っ!」
思わず叫んでいた。
走りながらはっきりと顔が見えてきた。
目が潤んでぼんやりとしているが、間違いない。
涙を拭うことなく走り続ける。
こちらを見て笑っている姿を見てまた涙が溢れる。
「タクヤっ」
あと数十メートルといったところでハヤトがタクヤの名前を呼んだ。
その瞬間、タクヤの胸がぎゅっと締め付けられる。
6年振りに聞く師匠の声だ。
本当に生きてた。
ただそれだけで、タクヤは幸せな気持ちでいっぱいになっていた。
夢じゃない。幻でもない。本物の師匠だ。
数メートル手前で立ち止まる。「はぁ、はぁ」と息が上がっている。
走ったせいなのか、緊張からなのか、心臓が飛び出てしまいそうな程に激しく動いていた。
「タクヤ……でかくなったな」
すぐ目の前の師匠が優しく微笑んでいる。
思わず自分の頬をぎゅっと抓った。
「いて……」
泣きながらぼそりと呟く。夢じゃない。
「何やってんだよ」
6年前に見た笑顔と何も変わらない。
あの時のままのハヤトの姿を見て更に涙が溢れる。
「師匠……」
「泣くなよ。男だろ?」
涙を拭うことなくじっと見つめるタクヤを呆れたようにハヤトが見つめている。
そして再び笑顔になると、両手を広げた。
「師匠っ!」
思わずそのまま駆け出し思い切りハヤトに抱きついた。
大きくて見上げる程だった師匠が、今では自分と変わらないくらいになっていた。
いや、ハヤトが小さくなったわけではなく、タクヤが成長したのだ。
「タクヤ……ごめんな。ひとりにして」
ぎゅっと抱き締め返し、ハヤトがぼそりとタクヤに話した。
しかしタクヤは黙って首を横に振る。
寂しかった。怖かった。色んな思いがあったが、文句なんてひとつもなかった。
ただ、師匠が生きていてくれただけで、それで良かった。
黙って泣き続けているタクヤの頭をそっとハヤトが優しく撫でる。
ふたりをじっと見つめていたリョウの横に、漸くカオルが追いついた。
「泣けるねぇ……」
ぼそりと呟いた。カオル自身は泣いてはいなかったのだが。
「タクヤ……良かった……」
しかし、隣でじっと見つめていたリョウはふたりの姿を見て号泣していたのだった。
感動の再会である。
リョウは自分とカイの姿を重ねていた。
会いたい人に会える喜びは十分に理解していた。
暫くの間、静かに時間が流れていた。タクヤが泣き止むまでの間。
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