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第16章『再会』
5話
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組織の研究所へと向かっていたふたりは、特に会話もなく黙って歩いていた。
すると突然、カイが顎に手を当てながらぼそりと呟いた。
「ふむ……このまま歩いて行くのは時間がかかりそうだな……」
「遠いのか?」
隣を歩くイズミはちらりとカイを見上げて問い掛ける。
「そうだね。遠いっていう程じゃないけど、1日くらいはかかるかな」
「……1日……」
淡々と答えるカイの言葉を聞いて、『それを遠いって言うんだろ』と心の中で突っ込みを入れながらぼそりと呟いた。
「もう少し早く着きたいよね……っということで」
ぴたりと足を止めると、カイはぱちんと指を鳴らした。
すると、ぶわっと風が舞ったかと思った瞬間、目の前に1台のバイクが現れた。
「はっ?」
ぎょっとしながら目を大きく見開き驚愕する。
今一体何をした?
「自分が思う以上の力を手に入れたって言ったろ?」
にこりとカイが笑っている。
(いや、想像以上どころか飛躍しすぎだろ)
固まったまま、再び心の中で突っ込みを入れる。
「もちろんこのバイクは組織の物だから、使ったらすぐにバレるんだけど。でも、バレずに行こうなんてそもそも無理な話だからね。だったら活用させてもらおうかと」
バイクのシートに置いてあるヘルメットを取り、それをイズミに手渡しながらカイが説明する。
「そんなことはどうでもいい。なんなんだこれは。魔法なのか?」
ヘルメットを受け取りつつ、イズミは呆れ返った顔で問い掛ける。
自分が移動することはできても、何かを瞬間移動させる術など持っていない。というか、聞いたこともなかった。
これも組織の技術なのだろうか。だとすると末恐ろしい。こんなことができる相手に勝てるわけがない。
考えながらイズミはぞっとしていた。
「バイクは乗ったことある?」
イズミの質問に答えることなく、カイはヘルメットを右手に持つとそのままバイクへと跨る。
そして足で支えつつ、片手でハンドルを掴むとイズミをちらりと見た。
「いや……ない」
受け取ったヘルメットを両手で持ったまま、『まさか後ろに乗るのか?』と疑問に思いながら上目遣いにじっとカイを見つめる。
「そっか。俺も数回しかないんだけど」
そう言ってカイはヘルメットを被り、両手でハンドルを掴んだ。
「はっ? 数回? 本当に大丈夫なのか?」
ぎょっとして声を上げる。
そして「まさかそれで二人乗りをしようとしているのか?」とぼそりと呟くように続けた。
「どうだろう? 大丈夫じゃないかな」
ヘルメットを被っていて表情は分からないが、相変わらず淡々と話している。
この男の考えていることは全く分からないと半ば諦め、溜め息を付くとイズミもヘルメットを被る。
そしてカイの後ろへと跨った。
「じゃあ、行こうか。このヘルメットはお互いの声が聞こえるように機械が内蔵されてる。何かあれば呼び掛けて」
そう言ってカイはバイクのエンジンをかける。ブォンッと音をさせながらエンジンがかかった。
これだけうるさくて本当に声が聞こえるのだろうか? と、イズミは初めてのバイクに不安しかなかった。
「イズミ、しっかり掴まって。落とされないようにね」
エンジン音は騒音のごとく響いていたが、不思議とカイの言葉がはっきりと聞こえてきたことに驚いた。
返事をする代わりに、言われた通りカイの腰をぎゅっと掴む。
まさかバイクの二人乗りをすることになるとは思っていなかったが、タクヤが知ったらまた大騒ぎをするのだろうな、と考えながら。
イズミがしっかりと掴まったことを確認すると、カイはそのままバイクを走らせる。
スムーズに、そして勢いよくバイクが走り出した。
☆☆☆
平坦な道ではなく、砂利のような物が散らばっている道をバイクで進んでいく。
滑ることはなかったが、ガタガタと体に響くように揺れを感じる。
すると突然ガタンッと大きく車体が揺れ、体が少し浮くように跳ねた。
「おっと……ごめん。イズミ、大丈夫?」
先程言ったようにヘルメットにスピーカーのような物でも付いているのか、走行中にも関わらずカイの声が聞こえてきた。
「……あぁ」
正直少し怖かったが、平静を装い一言だけ返事をする。
「道も悪いけど、もっと困ったことになりそうだよ」
バイクを走らせながら、とても『困った』とは思えない程、淡々とした声が聞こえてきた。
一体何が困ったことなのか?
「何がだ?」
意味が分からずイズミも冷静に聞き返す。
すると、再び淡々とした声が返ってきた。
「どうやら簡単には行かせてもらえないみたいだね」
「は?」
ますます意味が分からない。一体何を言っているのか。
「うん、敵襲だね」
「はっ?」
今度は強く聞き返す。
いや、そんな淡々と話すことか?
思わず『バカなのか?』と突っ込みそうになってしまった。
「俺はタクヤみたいに攻撃はできないから、とりあえずしっかり掴まってて。なんとかしてみるよ」
相変わらずカイの声は淡々としている。
本当に困っているのかこの男はと思いながらも、もしかしたら不安にならないようにしてくれているのかもしれないと考える。
溜め息を付き、イズミは言われた通りカイに掴まる手に力を入れる。
その瞬間バイクのエンジンの音が「ブォンッ!」と大きく鳴った。
すると突然、カイが顎に手を当てながらぼそりと呟いた。
「ふむ……このまま歩いて行くのは時間がかかりそうだな……」
「遠いのか?」
隣を歩くイズミはちらりとカイを見上げて問い掛ける。
「そうだね。遠いっていう程じゃないけど、1日くらいはかかるかな」
「……1日……」
淡々と答えるカイの言葉を聞いて、『それを遠いって言うんだろ』と心の中で突っ込みを入れながらぼそりと呟いた。
「もう少し早く着きたいよね……っということで」
ぴたりと足を止めると、カイはぱちんと指を鳴らした。
すると、ぶわっと風が舞ったかと思った瞬間、目の前に1台のバイクが現れた。
「はっ?」
ぎょっとしながら目を大きく見開き驚愕する。
今一体何をした?
「自分が思う以上の力を手に入れたって言ったろ?」
にこりとカイが笑っている。
(いや、想像以上どころか飛躍しすぎだろ)
固まったまま、再び心の中で突っ込みを入れる。
「もちろんこのバイクは組織の物だから、使ったらすぐにバレるんだけど。でも、バレずに行こうなんてそもそも無理な話だからね。だったら活用させてもらおうかと」
バイクのシートに置いてあるヘルメットを取り、それをイズミに手渡しながらカイが説明する。
「そんなことはどうでもいい。なんなんだこれは。魔法なのか?」
ヘルメットを受け取りつつ、イズミは呆れ返った顔で問い掛ける。
自分が移動することはできても、何かを瞬間移動させる術など持っていない。というか、聞いたこともなかった。
これも組織の技術なのだろうか。だとすると末恐ろしい。こんなことができる相手に勝てるわけがない。
考えながらイズミはぞっとしていた。
「バイクは乗ったことある?」
イズミの質問に答えることなく、カイはヘルメットを右手に持つとそのままバイクへと跨る。
そして足で支えつつ、片手でハンドルを掴むとイズミをちらりと見た。
「いや……ない」
受け取ったヘルメットを両手で持ったまま、『まさか後ろに乗るのか?』と疑問に思いながら上目遣いにじっとカイを見つめる。
「そっか。俺も数回しかないんだけど」
そう言ってカイはヘルメットを被り、両手でハンドルを掴んだ。
「はっ? 数回? 本当に大丈夫なのか?」
ぎょっとして声を上げる。
そして「まさかそれで二人乗りをしようとしているのか?」とぼそりと呟くように続けた。
「どうだろう? 大丈夫じゃないかな」
ヘルメットを被っていて表情は分からないが、相変わらず淡々と話している。
この男の考えていることは全く分からないと半ば諦め、溜め息を付くとイズミもヘルメットを被る。
そしてカイの後ろへと跨った。
「じゃあ、行こうか。このヘルメットはお互いの声が聞こえるように機械が内蔵されてる。何かあれば呼び掛けて」
そう言ってカイはバイクのエンジンをかける。ブォンッと音をさせながらエンジンがかかった。
これだけうるさくて本当に声が聞こえるのだろうか? と、イズミは初めてのバイクに不安しかなかった。
「イズミ、しっかり掴まって。落とされないようにね」
エンジン音は騒音のごとく響いていたが、不思議とカイの言葉がはっきりと聞こえてきたことに驚いた。
返事をする代わりに、言われた通りカイの腰をぎゅっと掴む。
まさかバイクの二人乗りをすることになるとは思っていなかったが、タクヤが知ったらまた大騒ぎをするのだろうな、と考えながら。
イズミがしっかりと掴まったことを確認すると、カイはそのままバイクを走らせる。
スムーズに、そして勢いよくバイクが走り出した。
☆☆☆
平坦な道ではなく、砂利のような物が散らばっている道をバイクで進んでいく。
滑ることはなかったが、ガタガタと体に響くように揺れを感じる。
すると突然ガタンッと大きく車体が揺れ、体が少し浮くように跳ねた。
「おっと……ごめん。イズミ、大丈夫?」
先程言ったようにヘルメットにスピーカーのような物でも付いているのか、走行中にも関わらずカイの声が聞こえてきた。
「……あぁ」
正直少し怖かったが、平静を装い一言だけ返事をする。
「道も悪いけど、もっと困ったことになりそうだよ」
バイクを走らせながら、とても『困った』とは思えない程、淡々とした声が聞こえてきた。
一体何が困ったことなのか?
「何がだ?」
意味が分からずイズミも冷静に聞き返す。
すると、再び淡々とした声が返ってきた。
「どうやら簡単には行かせてもらえないみたいだね」
「は?」
ますます意味が分からない。一体何を言っているのか。
「うん、敵襲だね」
「はっ?」
今度は強く聞き返す。
いや、そんな淡々と話すことか?
思わず『バカなのか?』と突っ込みそうになってしまった。
「俺はタクヤみたいに攻撃はできないから、とりあえずしっかり掴まってて。なんとかしてみるよ」
相変わらずカイの声は淡々としている。
本当に困っているのかこの男はと思いながらも、もしかしたら不安にならないようにしてくれているのかもしれないと考える。
溜め息を付き、イズミは言われた通りカイに掴まる手に力を入れる。
その瞬間バイクのエンジンの音が「ブォンッ!」と大きく鳴った。
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