184 / 198
第19章『運命の子』
6話
しおりを挟む
ハヤトの家は思った通り部屋数もあり、タクヤとイズミ、カイとリョウ、そしてレナとルカがそれぞれゲストルームへと案内されていた。
カオルだけは「明日の朝また戻る」と言って、ふらりとどこかへいなくなってしまった。
普段カオルは一体どこにいるのだろうかとタクヤは不思議に思っていた。
どこかに家があるのか、それとも昔イズミと一緒に住んでいたという家に今も住んでいるのだろうか。
風呂に入っているイズミを待つ間、ドア側にあるベッドに腰掛けながらそんなことを考えていた。
するとそこへガチャッと音をさせて部屋のドアが開いた。
「あ、イズミお帰り」
「……あぁ」
風呂上がりの温かい空気とシャンプーの良い香りを漂わせながら、イズミは不愛想にタクヤに答えた。
「師匠の家の風呂、すっげぇ広くてシャンプーもいい匂いだよなー」
にっと歯を出しながらタクヤが笑うと、それを聞いたイズミはなんとも嫌そうな顔をする。
「何?」
久しぶりに見るイズミのその表情に怪訝な顔で首を傾げた。
特に変なことは言っていないはずである。
「気持ち悪いことを言うな」
そう言ってイズミはさっさと窓側のベッドへと移動する。
「なんだよっ、気持ち悪いことって」
むすっと口を尖らせてイズミの言葉に反論する。
「いい匂いとかって、変態みたいだろ。ったく」
ベッドに腰掛けながらイズミは溜め息を付いた。
「なっ! べ、別に変な意味で言ったわけじゃないからなっ! 自分がシャンプーしてる時に思っただけで、イズミがいい匂いって言ったわけじゃ……まぁいい匂いするけど」
「だから、気持ちわりぃんだよっ。やめろ」
慌てて言い訳をするタクヤに向かって、本気で嫌そうな顔でイズミが声を上げた。
「なんだよぉ」
再びむすっと口を尖らせ、上目遣いにじっとイズミを見る。
「ったく、うぜぇな。寝るぞ」
さっと顔を逸らすとイズミはそのまま布団の中へと入ってしまった。
「えっ? あ、待ってっ」
イズミの言葉に慌てて声を上げる。
「何を待つんだ。意味分かんねぇこと言ってんな」
じろりと顔だけ向けてこちらを睨み付けると、イズミは面倒臭そうに話す。
「ね、一緒に寝てもいい?」
「は? いいわけねぇだろ」
じっと請うように見つめてみたが、再び嫌そうな顔で拒否されてしまった。
そしてイズミはそのまま窓の方に体を向けてしまう。
「ねぇ、いいじゃん。俺、イズミに会えない間すっげぇ寂しかったんだからさぁ」
口を尖らせながらなんとか許しを請おうと必死になる。
「嘘つくな。どうせお前、師匠に会えて喜んで、俺のことなんて忘れてたんだろうが」
「そ、そんなことないよっ」
再びこちらを向いたイズミに睨まれて慌てて否定するものの、実際少しの間ではあるが、イズミのことを忘れてしまっていたのは図星であった。
「顔に出てんだよ、お前」
「うっ……」
じっと呆れた顔で見られて、タクヤは何も返す言葉がなかった。
「なぁ、ダメ?」
しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
お願いと両手を合わせながらじっとイズミを見つめる。
「何を甘えた声出してんだよ、いい年して」
「だってさぁ」
「はぁ……ったく、横に寝るだけなら許してやるが、絶対に俺に触るなよ」
むぅっと口を尖らせるタクヤにイズミは大きく溜め息を付くと、そう言ってくるりと窓側の方を向いてしまった。
しかし、一緒に寝ることを許可してもらえてタクヤは満面の笑みになる。
「やったねっ」
嬉しそうに布団を捲るとイズミの後ろに入り込んだ。
本当はこのまま抱き締めたいところだが、触るなと言われたからには守らないと蹴り落されるのは目に見えている。
ぐっと耐えながらも、窓側を向くイズミに向かって後ろから声を掛けた。
「なぁイズミ、大丈夫か?」
「何が」
こちらを振り返ることなく声が返ってきた。
「いや、その……」
なんて言えばいいかが分からなかった。
色々ありすぎて、自分自身も混乱している。
アスカの魂がまだこの世にいるというだけで、もしかしたら喜ばしいことなのかもしれないが、『別人』と言っていたイズミも、そしてカイの反応を見ても恐らく全く違うアスカになっているのだろうと想像する。
そして、カオルの話も……。
「……別に、お前が気にする必要はない」
「でもさ」
「心配するな。……でも、お前がいて良かった」
ぼそりとイズミの言葉が聞こえて胸が熱くなる。
自分を必要としてくれていると思えて嬉しかった。
「へへっ、どういたしまして」
先程我慢しようと決めたばかりだというのに、嬉しくてタクヤは思わずイズミを後ろからぎゅっと抱き締めた。
「っ!」
びくっとイズミが驚いたことは分かったが、特に怒られたり文句を言われることなく、そのままじっとしている。
許されたわけではないとは思うが、少しだけこのままいたいと考えて、タクヤはイズミを抱き締めたまま目を閉じた。
「イズミのことは俺が守るからさ」
そして背中に顔を埋めながらぼそりと呟く。
「別に、お前に守ってもらわなくても大丈夫だ」
そう言ってイズミは自分の体を抱き締めているタクヤの腕をぎゅっと指で抓る。
「いってっ!」
抓られて思わず声を上げる。
涙目になりながらも、『こうなったら絶対離さねぇ』と心に決めると、タクヤは更に強くイズミを抱き締めた。
「ちょっ、苦しいわっ!」
やはり怒られてしまった。
「ごめんて。イズミが抓るから……痛かったんだからな」
ちぇっとこぼしながらもイズミに謝り、抱き締めていた手を緩める。
「ったく……」
そう言いながらもイズミはそれ以上何も言わず嫌がることもなく、そのまま静かになった。
今度こそ許してもらえたかなと、タクヤもゆっくりと目を閉じた。
カオルだけは「明日の朝また戻る」と言って、ふらりとどこかへいなくなってしまった。
普段カオルは一体どこにいるのだろうかとタクヤは不思議に思っていた。
どこかに家があるのか、それとも昔イズミと一緒に住んでいたという家に今も住んでいるのだろうか。
風呂に入っているイズミを待つ間、ドア側にあるベッドに腰掛けながらそんなことを考えていた。
するとそこへガチャッと音をさせて部屋のドアが開いた。
「あ、イズミお帰り」
「……あぁ」
風呂上がりの温かい空気とシャンプーの良い香りを漂わせながら、イズミは不愛想にタクヤに答えた。
「師匠の家の風呂、すっげぇ広くてシャンプーもいい匂いだよなー」
にっと歯を出しながらタクヤが笑うと、それを聞いたイズミはなんとも嫌そうな顔をする。
「何?」
久しぶりに見るイズミのその表情に怪訝な顔で首を傾げた。
特に変なことは言っていないはずである。
「気持ち悪いことを言うな」
そう言ってイズミはさっさと窓側のベッドへと移動する。
「なんだよっ、気持ち悪いことって」
むすっと口を尖らせてイズミの言葉に反論する。
「いい匂いとかって、変態みたいだろ。ったく」
ベッドに腰掛けながらイズミは溜め息を付いた。
「なっ! べ、別に変な意味で言ったわけじゃないからなっ! 自分がシャンプーしてる時に思っただけで、イズミがいい匂いって言ったわけじゃ……まぁいい匂いするけど」
「だから、気持ちわりぃんだよっ。やめろ」
慌てて言い訳をするタクヤに向かって、本気で嫌そうな顔でイズミが声を上げた。
「なんだよぉ」
再びむすっと口を尖らせ、上目遣いにじっとイズミを見る。
「ったく、うぜぇな。寝るぞ」
さっと顔を逸らすとイズミはそのまま布団の中へと入ってしまった。
「えっ? あ、待ってっ」
イズミの言葉に慌てて声を上げる。
「何を待つんだ。意味分かんねぇこと言ってんな」
じろりと顔だけ向けてこちらを睨み付けると、イズミは面倒臭そうに話す。
「ね、一緒に寝てもいい?」
「は? いいわけねぇだろ」
じっと請うように見つめてみたが、再び嫌そうな顔で拒否されてしまった。
そしてイズミはそのまま窓の方に体を向けてしまう。
「ねぇ、いいじゃん。俺、イズミに会えない間すっげぇ寂しかったんだからさぁ」
口を尖らせながらなんとか許しを請おうと必死になる。
「嘘つくな。どうせお前、師匠に会えて喜んで、俺のことなんて忘れてたんだろうが」
「そ、そんなことないよっ」
再びこちらを向いたイズミに睨まれて慌てて否定するものの、実際少しの間ではあるが、イズミのことを忘れてしまっていたのは図星であった。
「顔に出てんだよ、お前」
「うっ……」
じっと呆れた顔で見られて、タクヤは何も返す言葉がなかった。
「なぁ、ダメ?」
しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
お願いと両手を合わせながらじっとイズミを見つめる。
「何を甘えた声出してんだよ、いい年して」
「だってさぁ」
「はぁ……ったく、横に寝るだけなら許してやるが、絶対に俺に触るなよ」
むぅっと口を尖らせるタクヤにイズミは大きく溜め息を付くと、そう言ってくるりと窓側の方を向いてしまった。
しかし、一緒に寝ることを許可してもらえてタクヤは満面の笑みになる。
「やったねっ」
嬉しそうに布団を捲るとイズミの後ろに入り込んだ。
本当はこのまま抱き締めたいところだが、触るなと言われたからには守らないと蹴り落されるのは目に見えている。
ぐっと耐えながらも、窓側を向くイズミに向かって後ろから声を掛けた。
「なぁイズミ、大丈夫か?」
「何が」
こちらを振り返ることなく声が返ってきた。
「いや、その……」
なんて言えばいいかが分からなかった。
色々ありすぎて、自分自身も混乱している。
アスカの魂がまだこの世にいるというだけで、もしかしたら喜ばしいことなのかもしれないが、『別人』と言っていたイズミも、そしてカイの反応を見ても恐らく全く違うアスカになっているのだろうと想像する。
そして、カオルの話も……。
「……別に、お前が気にする必要はない」
「でもさ」
「心配するな。……でも、お前がいて良かった」
ぼそりとイズミの言葉が聞こえて胸が熱くなる。
自分を必要としてくれていると思えて嬉しかった。
「へへっ、どういたしまして」
先程我慢しようと決めたばかりだというのに、嬉しくてタクヤは思わずイズミを後ろからぎゅっと抱き締めた。
「っ!」
びくっとイズミが驚いたことは分かったが、特に怒られたり文句を言われることなく、そのままじっとしている。
許されたわけではないとは思うが、少しだけこのままいたいと考えて、タクヤはイズミを抱き締めたまま目を閉じた。
「イズミのことは俺が守るからさ」
そして背中に顔を埋めながらぼそりと呟く。
「別に、お前に守ってもらわなくても大丈夫だ」
そう言ってイズミは自分の体を抱き締めているタクヤの腕をぎゅっと指で抓る。
「いってっ!」
抓られて思わず声を上げる。
涙目になりながらも、『こうなったら絶対離さねぇ』と心に決めると、タクヤは更に強くイズミを抱き締めた。
「ちょっ、苦しいわっ!」
やはり怒られてしまった。
「ごめんて。イズミが抓るから……痛かったんだからな」
ちぇっとこぼしながらもイズミに謝り、抱き締めていた手を緩める。
「ったく……」
そう言いながらもイズミはそれ以上何も言わず嫌がることもなく、そのまま静かになった。
今度こそ許してもらえたかなと、タクヤもゆっくりと目を閉じた。
51
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる