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しおりを挟む「教えられないことがあるのはわかった。
では違う質問をしよう。
まずあなたのことをなんと呼べばいい?
それとナティシアの状況を教えてほしい」
聞きたいこと、わからないことは山ほどあるが、きっとこれ以上聞いたところで答えは期待できないだろうと感じたジョシュアは今解決せねばならない事に目を向けることにした。
「私はアーネイス。好きに呼んでくれていいわ。
ナティシアについてはさっき言った通り公爵に部屋に閉じ込められていて部屋から出ることさえできなくなってしまっている。
そしてもうじき離れが完成し、ナティシアはそこに連れて行かれてしまう。ナティシアは領地で療養しているというていで、今後どこにも出さないつもりなの。
離れが完成するのが1月後。それまでにはナティシアを連れ出さないと」
現状ナティシアは体調不良の名目で王家からの呼び出しにも応じていない。
もしアーネイスのいうことが事実で、療養の名目で領地に行ったと言われれば、今以上に呼び出しにくくなり、病気の娘を無理やり王太子の婚約者にするとなればさらに問題は大きくなるだろう。
だがなぜ公爵は自分の娘にそんなことをするのか。
ジョシュアには理解ができなかった。
ジョシュアは王と王妃を親に持ち、通常の貴族家庭よりも親とのふれあいは少なかったかもしれない。
両親ともに忙しい事、自身もさまざまな勉強の時間が必要な事があり、兄弟の中でも親とのふれあいは少なかった。弟や妹を羨ましいと思わなかったかと問われれば否であるが、それでも自分の立場を理解していたジョシュアは仕方がないと思っていた。
何より触れ合う時間は少ないながらも両親は精一杯に愛の言葉を囁き、態度で示してくれていた。
そんな家庭で育ったジョシュアだからこそ、公爵の気持ちなど塵ほども理解できそうになかったのだ。
そのことを問えばアーネイスからは信じられない言葉が返ってきた。
公爵とナティシアの母メルティシアは政略結婚だった。
ナティシアとよく似た容姿のメルティシアに同世代の男性は熱いまなざしを向けた。
そんなメルティシアの相手として選ばれた公爵。
彼はメルティシアを愛した。
買い物に出かけては花を贈り、会うたびに愛を囁いた。
そうして仲睦まじい夫婦となり、過ごしてきた。
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