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6.冒険が始まる
「私はね、まぁあんまり人に好かれる性質じゃないんだよ。それに加えて変な事に興味があってね、友達なんて呼べる人は誰もいなかった。でもねこんな私にでも声をかけてくる奴がいたんだよ。おかしな奴でさぁ、私が薬を作っていたら見せてくれと言ってね自分も一緒に作りたいと言うんだ。それからは暇を見つけては顔を見せるようになった。お腹がすいたと言うから食事を作ってやるとね、今まで食べたどんなものよりも優しい味がすると笑うんだ。ほんとに変なやつだったよ。
そんな奴が結婚して子を授かったと嬉しそうに話しててね、ここにも何度か連れてきたよ。でも旦那が私のことをよく思ってなくてね、結婚後は顔を見せることが少なかったよ。
そして最後にここに来てから1年半後、亡くなったと風の噂で聞いた。
そしてあれから13年経った今、あんたがここにやってきた。それでようやくわかったよ。
あんたこれから時間はあるのかい?」
昔話をしていた女性の話がいつの間にか私につながっていた。その変な人とは誰なのか、もしかして私の母…でもそんなことがあるんだろうか?
そんなことを考えていたら急にぶつけられた質問。
時間があるも何も、私は家を飛び出してきた身。
この後どうするかだなんて決めてもいない。でも… 1つ望んでも良いのなら自分の部屋に閉じ込められたまま死ぬのではなく、自分の好きなところに行ってみたい。
でも私1人ではどこに行ってもいいのかわからない。それならば母との思い出の中にあるこの女性に身を委ねても良いのではないか。
そんな思いが頭を占めた私は思わず答えていた。
「はい。時間ならあります」
「そうかいそうかい。じゃあ私に付き合いな」
そう言って女性は少し大きめのカバンを1つ持って来たと思うと、そこの中にいくつかの瓶といろいろな種類の葉っぱを詰めていく。そしてそれが終わったかと思うと、行くよと言ってドアを出て行った。
私は慌ててその後ろ姿を追う。母が亡くなってからずっとずっと楽しくない人生だった。なんにも楽しくなかった。
それが最後の最後でまるで冒険が始まるみたいだった。どこへ行くかもわからない冒険がこれから始まる。そう考えるとわくわくが止まらない。
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2021/06/17