選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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46.母のたった一人の娘としての生き方

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私たちはこの1ヵ月間、いろいろな準備をしてきた。彼らがどのようなことをしてきたのか把握することもできたし、今日どのような流れになるのかいろいろなことを想定して計画してきた。だから心の準備はできていた。

でもこの2人は違う。
孫に会えたのが12年ぶりなら息子たちがやってきた罪を知らされたのもつい先ほどなのだ。本来冷静でいられるはずがない。

それでも今まで冷静に振る舞ってくれていた。
証言を求められた際も身内の恥のはずなのに躊躇いもなく正直に話してくれた。

それだけでも二人の人間性がわかるし、何より随所で私に会いたいと願っていてくれたのだとわかった。それだけでも私にとってはありがたいこと。

それなのにこの2人は責められるはずなんてない。

「お祖父様、お祖母様、どうか頭を上げてください。

あの男たちがやっていたことを把握できていた人たちなんて彼らの仲間以外にはいなかったんだと思います。

内容はずさんでも外に漏らさないと言うことに関しては徹底していたんだと思います。


私は正直母がいなくなって誰からも必要とされていないんだと思っていました。だけどここにいる皆さんが私のことを心配し思っていてくれてたのだとわかった。その時から私は生きていいんだと、生きていていいんだと思いました。皆さんがいてくれるから私がここにいてもいいと思える。

イサベル祖母様、フランク祖父様もその1人です。会えなかった間でも2人が私のことを気にかけていてくれたことを知りました。あの家族ともう一度やり直したいとは思わないけれど、でもお祖父様とお祖母様の孫で良かったとは心の底から思います。

だからこれからもどうか私の祖父母でいてくれませんか」

私のその言葉に祖父母の体はさらに震えていた。涙を流しながら何度も何度もごめんなさい…本当に、本当に、、、ごめんなさい…マリアさん本当に申し訳ない…

どんな言葉をかけようと、どれだけ涙を流そうと母はもう戻ってこない。

そばにいない母が今何を思っているのかはわからない。

5歳までしか一緒に生きられなかった母が何を思うのか知るすべはない。

けど優しかった母ならきっと同じ選択肢をとったと思う。

私は母の1人の娘として、母に恥じない生き方をしていきたい…

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