選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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83.侯爵令嬢のイライラ

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今回このお茶を持ち込んだのがストム家だった事。

確認のため、ストム家にこのお茶を普段から飲んでいるか、その入手経路の確認を行った。すると、侯爵はそんなお茶飲んだこともないと話し、侯爵家にはそんなお茶はないと言った。夫人に確認しても同様に飲んだことはないと。

しかし、このお茶がストム家から提供されたお茶ということはポレード公爵家の執事がはっきりと記憶していた。

そこで持参した令嬢に確認した。

『私は以前どこかでそのお茶が美味しいと聞いたことがあったから取り寄せただけ。悪い事はしていない』

それだけしか言わないのだそう。

だが、このままでは侯爵家が公爵家のお茶会でわざと問題を引き起こしたと思われても仕方がない。つまりわざと公爵家の顔に泥を塗ったと。

侯爵は娘の周りを徹底的に調べ、入手経路などを確認した。
そして、入手したのは娘の専属護衛の一人だったことを調べ上げた。

「お嬢様の将来の夫であるダスカート侯爵令息の周りにまとわりつく令嬢に、少し痛い目をみせてやろうと思った」

そういったそうだ。
はじめ、お嬢様は何も知らないと言っていたらしいが、根気よく話を聞いていくとその詳細は明らかになっていった。

「お嬢様は令息と結ばれたかっただけ。だが何度誘っても令息は誘いに応じてくれない。
それどころか最近は婚約間近だという噂まででてきて。

そのせいでお嬢様は最近ずっとイライラしていた。
そして私に言いました。

『どうしてエミリオ様はあの女と一緒にいるわけ?ただの毒を盛られた悲劇の子なだけじゃない。エミリオ様が構う必要なんてないはずなのに!!
私と結ばれるはずなのにあんな女が出てきてしまってエミリオ様は放っておけないだけ。
それなのにそれを利用してあんな女が図々しくもそばから離れないのがいけないのよ!

………そうよ………そばにいられなくなればいいのよ。
カータス、誰にもばれない毒はないの?どうせ一度は毒に侵された女よ。もう一度毒に侵されたところであの時の後遺症とでも思わせられたら、罪にも問われないわ。そんな毒はないの?』  と。

私は元々田舎に住んでいました。
そこではアルジラと共にダルリエもよく見かける植物でした。
この二つは毒を持つ植物だから飲んではいけないと知っていました。それに………アルジラを飲んだことがあるものがダルリエを飲むと身体の中で反応し、体調を崩すということも。

………だからお嬢様にそのことをお伝えしました。
そしてお嬢様は公爵家のお茶会でそのお茶を出すことに決めたのです。
公爵家のお茶会で問題を起こすものなどいない。
もし問題が起こってもきっと事故として処理されるだろうからと。

まして侯爵令嬢である自分が持っていったお茶ならば、故意でそのようなことをするはずがないから絶対に事故と判断されると」
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