選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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84.突然の訪問者

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マドレーヌ様の読みは正しいと思う。
実際、リッタさんが原因はダルリエのお茶だと伝えたところ、調査団からは今回のことは不慮の事故だったと話があったそう。

しかし、それで終わらせずに調査をしてくれたのがマクレド家であり、ダスカート侯爵家であり、そしてポレード公爵家だった。
特にダスカート家と懇意にしているポレード公爵家は、自分たちの家のお茶会でこのような事態になったのだからと私兵を使って徹底的に調べてくれたらしい。

それによってストム侯爵家も調べることになり、結果この言葉を聞き出すことができた。

ストム侯爵はこの事実をもって即座にポレード家に謝罪に訪れた。
そしてその場で令嬢を平民街の修道院へ送ると宣言したそうだ。
マドレーヌ様は泣いて謝罪し、赦しを求めたが、その声を聞き入れられることなく、修道院に送られることになった。

そして、お茶会の主催であるポレード家と被害者である私はストム侯爵家から多額の慰謝料が支払われることになったそうだ。

こうして一連の詳細が判明してもなお、私が意識を戻さず皆が心配していたのだと時間をかけて教えてもらった。

目が覚めても3日間は頭がボーっとして身体を動かすことができなかった。けれど4日目、朝早くに目が覚めた。身体を動かしてみたくて、外の空気が吸いたくて、私は庭に出てみることにした。

まだ朝が早いため、誰も動いていない邸の中。空気が澄んでいてとても気持ちがいい。この間までは咲いていなかった花が咲いている……

2度も殺されかけ、幸運にも今も生かされている。
本当に幸運としか言いようがない。

でも………


カサッ…

なにかの音が聞こえて振り返ると、花束を持ったエミリオ様が歩いてくるのが見えた。
こんな朝早くにエミリオ様がどうして?

「ナタリー?おはよう。
こんな朝早くに、しかも起きていていいの?」

「エミリオ様、おはようございます。
はい。今日は早くに目が覚めてしまって、外の空気を吸いたかったので。
エミリオ様はこんな朝早くどうされたのですか?」

私のその言葉にエミリオ様は小さく微笑んだ。

「本当はナタリーが目を覚ましたと聞いてすぐにでも駆けつけたかったんだ。でもまだ目が覚めたばかりだと言うこともあるし、女性の寝室に見舞いに行くのは控えておいたほうがいいと言われ待っていたんだけど、花だけでも届けたいと思ってきたんだ。
本当はもっと遅い時間に来るつもりだったんだけど、朝早くに目が覚めてしまって。

パレドス家の近くで待とうと思って馬を走らせたんだ。

そしたらナタリーの姿が見えた気がして、思わず来てしまった。迷惑だった?」

エミリオ様のその言葉に私は顔を横に振る。
自分を心配してきてくれたと言う人に迷惑などと言う人がいるんだろうか。
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